第三章 2-2 喫茶

          *


 どうにか買い物を終えた俺たちは、そろそろ夕方も迫るこの時間、小腹が空いたということで、冬弥がお勧めする古びた感じの喫茶店に入ることにした。


 ミコトの姿を見て疲れはすっかり吹き飛んでいたけど、ひと息吐きたいのも確かだ。

 菊理の買い物につき合うのは金輪際勘弁してほしいと思っていたこともあったが、今回ばかりは褒めて上げたいくらいの気分だった。


「写真がNGなのが惜しいくらいだね」

「まぁ、な」

「ファンクラブの会員が増えちゃうだろうから、それでいいのかも知れないけど」


 全員でケーキセットを頼んで、そういうところは優柔不断な菊理が最後まで悩んでいくつもあるケーキのひとつを選び終え、席に着く。飲み物と生クリームなんかでトッピングされたケーキが運ばれてきて、やっとひと息吐くことができた。

 買った服などの使い方や合わせ肩について菊理と話してるミコトの横で、テーブルに乗り出すような格好で俺と冬弥はひそひそと話をする。


「でも本当、綺麗な人だね、ミコトちゃんって。武にはもったいないくらいだよ」

「いや、そういう関係じゃないんだけどな……」

「ふぅん」


 意地悪な笑みを浮かべる冬弥に、どう言葉を返していいのかわからなくなって、コーヒーをひと口すすった。


 すぐ横で笑ってるミコトのことが、普通の女の子にしか見えなかった。

 戦女艦艇だというのは嘘で、本当はただ家出をしてきただけなんじゃないかと思えてくる。


 これまでミコトと過ごしてきて、彼女が戦女艦艇であるという確かな証拠は何もない。洗濯や料理の仕方を知らず、社会常識もいまひとつだったりするという状況証拠は多少なりともあるが、空を飛んだり、戦う姿になったりといった決定的なものは見ていない。


 でもたまたま停電のタイミングで俺の家の前にいたからというのが嘘で、冬弥の言った噂通りファーストセブンを造ったのが爺さんだったのだとしたら、ミコトが俺のところに来たのはそれに関係しているのかも知れない、とも思う。


 彼女の素性や、最初に言っていた確かめたいことについては、いまもまだ詳しく訊いていなかった。


 ――訊くのが怖いな。


 ミコトと一緒にこのまま過ごすのも悪くない。

 そんなことを考えてるのと同時に、彼女の正体についてわだかまりが消えることもなかった。


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