15 楽しい会話
夢の中で世間話に花を咲かせる蒼正と純菜であったが、お勧めの本やアニメの話ばかりで個人情報は少無い。どちらも相手の詳しい情報は知りたいとは思っているが、質問してしまうと自分も言わなくてはいけなくなるから聞け無いのだ。
だが、お互い予想はある。
それでも久し振りの無駄話は楽しい。この時間を壊したく無い。言葉にした訳では無いが利害の一致はお互い理解して喋り続けていたら、ようやく蒼正から夢の中の話が出て来た。
「そういえば、異世界ハーレム物以外はどんな夢を見てるの?」
「よく見るのは、ざ…悪役令嬢物かな?」
純菜は惨殺物と言い掛けて変更。流石に血みどろの夢はサイコパスと受け取られそうだから言い難かったみたいだ。蒼正は「THE悪役令嬢」という作品があるのかと思っているから、セーフだ。
「悪役令嬢物か~……それってヒロインはイジメられるからストレス溜まら無い?」
「逆逆。私が悪役令嬢。ヒロインをイジメ倒してハッピーエンドも潰すの。王子様と悪役令嬢が結婚してめでたしめでたしよ」
「うん。ざまぁ物かと思ったけどけっこう病んでるね……」
「あ……」
いや、悪役令嬢物でもヒロインでは無かったからアウトだ。
「そ、そっちは! どんな夢見てるの!?」
言葉巧みに誘導されたと思った純菜は逆ギレでサイコパスを払拭したい。
「僕は……侍物?」
「え? ヤンキー物じゃないの? ボコボコにして楽しんでるんでしょ??」
「まぁそれも良くやるけど、侍物は斬り殺せて楽しいよ」
ちょっと聞き過ぎたと、ここは蒼正もサイコパス的な物を出したけど、ヤンキー物の方が純菜としては
「侍物か~……その発想は私には無かったな」
「女子だもんね。チャンバラは男子の特権みたいな? 体を真っ二つにしたり首を斬ると、これがまたスッキリするんだ」
「君もそんな夢を見るんだ……本当は、私も惨殺物は大好きだよ。ナイフで滅多刺しの」
蒼正がぶっちゃける事で、純菜も同じくらいの話を出さ無いと割に合わ無いとぶっちゃけた。
「なるほどね。男と女では、こんなに夢が違うんだね」
「だね……侍物って事は時代劇みたいな物よね? 姫が活躍するような話とかもあるの?」
「姫では無いけど、女暗殺者みたいな漫画はあったと思う。古い漫画だから、いまいち読む気が起き無いんだよね~」
お互い踏み込み過ぎたので、しばらくは和物の漫画の話。純菜はあまりネタが無いから、源氏物語まで
「源氏物語って、けっこうドロドロしてるんだね。初めて知った……」
「今も昔も、不倫は恰好の話のネタみたいね」
「日本人のDNAに刻まれてるから、テレビとかであんなにやるのか」
「そう言われると怖いね」
なんだかゴシップネタの話になってしまったけど、二人はそこまで興味が無いので夢の話に戻って、各々が想像しやすい本や映画のネタを交換していた。
「まぁ結局の所、夢で想像した物を見せた方が早いかな?」
「うん。ジャンケンする?」
「こないだ僕からしたんだから、そっちからで良くない?」
話は纏まったけど、またしても蒼正が負けたので崩れ落ちる。しかしそれと同時にタイムアップになったので蒼正は嘆きながら目を覚まし、母親にその声を聞かれてしまったから、朝から多大な力を使って疲れるのであった。
「ゾンビ物って聞いてたけど、そんなに怖く無いね」
翌日の夢は、純菜の希望というより蒼正のストレス発散。無限に湧くゾンビをピストルで撃ち殺す夢だ。
「ゾンビは動きが遅いから、狙い易いんだよね~」
「うん。夢の中だから私でも百発百中ね。でも、一匹ずつってのは物足り無いかも?」
「んじゃ、ちょっと増やそうか」
「多過ぎない??」
蒼正が人差し指をクイッと上げるだけで、数百体のゾンビが現れたのだから、純菜も気持ち悪そうにしている。
「武器を変えたらいいだけだよ! ズガガガガガ~!!」
「わあ~」
ここで蒼正は、ピストルから両手マシンガンに変更して弾丸乱射。バッタバッタと倒れるゾンビの姿に、純菜は目を輝かせる。
軽く薙ぎ払うように乱射したら、純菜もやりたいだろうとマシンガンを渡して二人で乱射。背中を合わせて四方八方から迫るゾンビを撃ちまくる。
ゾンビが全て倒れると、蒼正のマシンガン講座。ネットである程度の内部構造も分かっているけど、夢の中ならそこまで
プラス、弾丸は無限に出るイメージを持った方が楽が出来るとアドバイスしていた。
「そうだ。これだけ敵が多いなら、魔法で倒しても面白そう」
「いいね。魔法無双はやった事無かったな」
「んじゃ、服装もチェ~ンジ!」
「僕は何でいこっかな~?」
ノリノリの純菜はとんがり帽子の魔女コスプレとなったので、蒼正も合わせて長くて白い髭の大魔法使いコスプレに変身。
巨大な炎の球、広範囲に現れる逆氷柱、地割れ、雷の雨。二人は思い付く限りの派手な魔法を見せ合ってゾンビを吹き飛ばし、笑い合うのであった。
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