第一話 異世界への扉
――状況が理解できない。
いつもとなんら変わりない朝。
朝食をとって、いつも通り学校に行こうと玄関へと向かった。
その時点で違和感はなかった。
ただドアを開けるといつもと景色が違う。
家と道路しかなかったドアの先は、舗装されていない道へと変貌し、少年は今、その舗装されていない道の中心に立たされている。
「朝だから頭回らねぇ……とりあえず日本では、無さそうだが」
少年はまだ、驚きより眠気が勝っている。
そんな少年の名前は
見た目は代わり映えのない普通の高校生だが、部活をしていたこともあってか筋肉質な体をしている。
趣味も、特にある訳では無い。
強いて言えば、ラノベやらアニメやらを少し齧っている程度で、マイナーな作品はほとんど知らない。
何かとどっちつかずの優柔不断で、それが自分の悪い癖だと自覚もしている。
輝空は目を擦り、眠気を無理やり覚まそうと努力した。
霞んだ視界で、周りを見渡すとそこは木々に囲まれており、それも日本とは別物であることは分かった。
「北欧とかその辺の国なのか……さすがに片言英語ならできるが、ノルウェー語とかになってくるとさすがにやばいぞ」
ノルウェーに限った話でなくとも、とにかく言語が通じないのはまずい。
そう思いつつも、足は勝手に動き出した。
周りを見渡しながら同時に人を探すが、一向に見つかる気配がない。
――しばらく歩いた後に畑らしきものが出てきた。
米以外の何かを育てていることはわかるが、作物の知識はゼロに等しいのでこれが何なのかはさっぱりである。
そして相変わらず、人がいる気配はない。
近くに人がいることは判明したものの、家の一つも見つかりやしない。
――また、五分ほど歩き回りようやく村らしきものが姿を現した。
もちろん人もいる。特別賑わっている訳では無い村だ。
とにかく今は、ここがどこなのかそれだけが知りたい。
「通りかかった人に話しかけるか……ここは何語で話しかけるべきなんだ」
日本語は通じる気がしない。それでも、日本人だという証明はできる。
そう考えていた矢先に、輝空の耳に入る言語は外国語などではない、ただの『日本語』であった。
「嘘だろ、これ完全に日本語じゃねぇか」
明らか日本ではない国から慣れ親しんだ言語が使われている。
日本大好きの国なのか、それともただの夢なのか。
どちらにせよ、輝空にとって好都合であるのには間違いない。
そうして輝空は、自分の隣を横切った人に話しかけてみる。
「あのぉ、突然で申し訳ないんですが、ここってなんという村なんでしょうか」
「ここはリーデル村だが、それにしてもアンタ、変な格好だな」
「はい、まぁ、遠くから来ているものでして」
制服姿に重い荷物が背負ってある輝空は、紛れもなく場違いである。
それもそうだが、輝空にとって村人の容姿にも気になる点がいくつかある。
まず服装については、特に違和感を感じるようなものはない。至って普通である。
それ以外が明らかにおかしい。
おかしな点として、髪色だ。当然ながら、金髪は存在するが、それ以外にも青色、緑色、紫色など色とりどりである。
それに加えて、目の色も様々である。
輝空が話しかけているこの男性も、灰色の髪にオレンジ色の瞳をもつ男だ。
「それでもうひとつ、質問したいことがあるんですが……」
「俺でよければなんでも聞いてくれ」
輝空の聞きたいこと。
この村に来た時点で薄々気づいていた。
あまりに遅い文明開化。村とはいえ、スマホの1つくらい持っている人がいるはずだ。
だが、そんな人はこれっぽっちもいない。そもそも、機械類を今この場で見かけたことがない。
西洋の地域でない何か。そんなの、輝空にとって一つしかなかった。
「この世界ってもしや、魔法や剣とかってあったりします?」
「もちろん。そんなこと、村のガキでも知ってんぞ」
「あぁ、やっぱり」
この世界は――。
「異世界だ」
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