聖女様はお腐れあそばしている

白生荼汰

第1話

 わわ、白目なんてまだ青みがかってるじゃない。これが澄んだ目ってやつ?

 赤ちゃん?

 サヴァランてばまだ赤ちゃんだったの?

 たぶんもう5歳くらいだよね。

 5歳でもまだ赤ちゃんなんて妖精さんかな。

 ほわっほわのお耳を触らせてとまでは言わないから、せめていい子いい子しちゃだめかしら。

 こんなかわい子ちゃん、存在しているだけで花丸ぴっぴだよぉ〜!


 わたしは荒れ狂う内心を押し隠しながら、唇の端だけにあえかな微笑みを浮かべた。


「ほはぁ〜聖女さまだぁ〜……聖女様は聖女様って感じ……可愛いねぇ〜……」


 わたしを見上げるサヴァランのお口からは溜息と同時に言葉が漏れている。

 語彙力……!

 語彙の乏しさまで可愛いなんて、なんという小悪魔ちゃんなの……!

 そんなあなたの方が可愛いわ!


 こんな天使ちゃん、わたしは見ているだけで昇天しそうなくらいよ。

 これ以上近寄ったりしたら浄化されてしまうわ。

 聖女が浄化されて消滅した日には大騒ぎ間違いなしよ。


 だから、そんなに睨まないでちょうだいな、ガトー・デフロワ!


 わたしはあなたたちを見守ることができればそれで満足なんだから。

 むしろあなたたちに挟まるつもりはなくってよ。

 あぁ、神様。

 わたしをこの世界に転生させてくださったこと、そして、この天使ちゃんたちを見守ることができる聖女という配置につけてくださったこと、心より感謝致します。


 あわよくば、本来の登場シーン以外でも彼らを見守ることが出来るよう、お力添えくだされば幸いです。


 だってだって、こんなにもかわいいんですもの!


 わたし、一分一秒たりとも見逃したくなんてありませんわ!


 決めました。

 わたし、このふたりを見守るために、これまで以上に修行に励み、これまで以上に魔力を鍛えていきたいと思います。


 今なら溢れる聖女パワーで、結界どころかスタンピートの一つや二つ潰せそう。

 矢でも鉄砲でももってこいや、ってこういう気持ちを指すのね。


 今、わたしきっと無敵です。


「ガトー兄様、僕、ちゃんと聖女様にご挨拶できました! 聖女様は本当にお可愛らしいですね」


「「可愛いのはお前だ!」ん?」


 はわわ、思わずガトーとハモってしまいましたわ。

 ガトーの方はガーネットみたいに赤い目を細めてギュッとサヴァランを抱きしめているけど、サヴァランの方はまたまんまるく金色のおめめを見開いてぽかんと首をかしげている。


 生サヴァランのキョトン顔いただきましたわ!


 これで勝つる!

 何に勝つかわからないけど!


 今のわたしを倒せるものは目の前のデフロワ末っ子兄弟だけですわ!


 あぁ、神様。

 わたしを『愛溢れる異世界で』の世界に転生させてくださってありがとうございます!


 わたくし、今この時より、いっそう布教に励みますわ!


 ちょっぴり神様の布教よりもガトサヴァの布教に熱が入ってしまうかもしれませんけれど、それは神様の広大無辺で寛大なお心で温かくお許しくださいな。


 だって生で見る白虎のサヴァランがこんなにもかわいいなんて、想像の遥か彼方を突き抜けていきましたもの。そして同じくいまだに幼少期の黒猫ガトーもなんて美少年なの!


 ありがとう神様!

 ありがとう神様!


 わたくし、一生あなたについていきますわ!

 しっかり8時間労働で祈りを捧げますわ。

 週休2日に年間有給プラス10日くらいで!

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