第13話 大ピンチ?
(…………あの、
(…………ええ、言いたいことはおおかた察せられるけど……何かしら?)
(……ありがとうございます、それで……俺ら、隠れる必要ありました)
(……うん、それは言わないで?)
それから、ほどなくして。
そう、声を潜め会話を交わす。そんな怪しい私達がいるのは、キッチン下の収納ラック。そして――
――コン、コン、コン。
施錠の音の後、ゆっくりと響く靴の音。どうやら、閉店後の当カフェに誰かが入ってきたようで。ピッキングに手練れた泥棒……という可能性もなくはないかもしれないが、それにしても流石に施錠が速すぎると思う。なので、普通に鍵を使って入ってきたのだろう。と言うことは、当店のスタッフであり、なおかつ私達以外に鍵を管理している人物ということになるので該当する人は非常に限られてくるのだけど……いや、誰でもいいか。誰であろうと、今はどうにかバレずにこの場を乗り切ることだけが肝要なのだし。
ところで……今、彼が言ったように隠れる必要などそもそもなくて。そもそも、私達は当店の新メニューに取り組んでいただけ……まあ、個人的思惑もまるでなかったわけではないけれど……それでも、作業そのものは店主と副店主が2人でしていても何ら怪訝に思われることではない。なので、先ほど来た誰かに普通に事情を説明し、なんだったら巻き込んでケーキの感想を聞いてもよかった。
……まあ、それも今更。流石に、今から出ていくなど怪しいことこの上ない。なので――
(……申し訳ないけれど、貴方にもしばらくじっとしておいてもらうわ、
(ガッテンです、
(誰が姉さんよ)
――それから、しばらく経て。
(……そう言えば、だいぶ今更っすけど……置いたままじゃまずくないっすか? あのケーキ)
そう、声を潜め尋ねる戸波くん。まあ、その懸念はご尤も。誰もいないはずの空間に、何故か食べかけのケーキが放置されていたら怪しいどころの騒ぎじゃない。なので、
(――いえ、そこに関しては心配無用よ。隠れる前にささっと回収してきたから、今はここに)
(……忍者みたいっすね、先輩)
そう伝えると、どこか呆れたような感心したような声が届く。収納ラックはほぼ閉めているので見えないのだけど、それでもどんな
その後も、しばし息を潜める私達。今は足音は聴こえなくなっているので、恐らくは休憩室の方に行ったのだろう。忘れ物、とかかな? ともあれ、いつ戻ってくるか分からないので油断は禁物。引き続き、この暗く狭い空間にて彼と2人で息を潜め――
(……ところで、どうしてかしら? なんだか、徐々に気持ちが昂揚している自分がいるのだけれど)
(意外と余裕あるっすね、先輩)
「いやー何とか乗り切れましたね、先輩!」
「ええ、そうね。ただ、次回からはもっと俊敏に隠れられるよう精進をしなくては」
「いや精進の方向がおかしいですよ。なんで隠れること前提なんすか」
その後、ほどなくして。
そっとラックから出てきた後、和やかにそんなやり取りを交わす私達。見る限り、扉は既に閉まっていてこの空間には私達以外の誰もいない。先ほど鍵の音もしたし、もう帰ったとみて間違いないだろう。……ふぅ、良かった。
「……さて、そろそろ帰ろうかしら。遅くまでありがとう、戸波くん」
「いえ、お安い御用です! と言うか、俺の方こそありがとうございます。先輩とケーキ作るの、めっちゃ楽しかったんで!」
「……そう、それなら良いのだけど」
それから、20分ほど経て。
2人でケーキを食し軽く片付けを終えた後、事務室に戻りつつそんな応酬を交わす私達。それにしても……まあ、相変わらずね、彼は。そんな台詞をそんな笑顔で言わないでよ。やっと落ち着いてきた鼓動が、またドクリと跳ねて――
ともあれ、ほどなく事務室に到着。そして、部屋の電気を…………あれ?
「……どうかしましたか、先輩?」
「……いえ、ただ、電気が消えていたので……」
「……ああ、そう言えばつけっぱでしたもんね。でも、それはさっき来た人が消してくれたんじゃないっすか? 俺らが消し忘れたと思っ……あっ」
すると、自身の言葉の
「………………え」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます