古民家カフェで紡ぐ恋〜歳上部下は犬系男子?〜
暦海
第1話 ……どうして、私にまで――
(……ほんと、ウザいよねあいつ)
(マジそれ。コネで店長になったくせに、マジ偉そう)
(……だな。顔は可愛いけど、あのきつい性格はちょっと無理だわ)
ある休日の夕さり頃。
休憩室の扉の前で、
まあ、だからと言っていちいち気に病むほどヤワな神経はしていない。そもそも、この程度なら全然――少なくとも、私にとっては全然マシな類なわけだし。
ともあれ、さてどうしようか。別に、休憩をしたいわけじゃない。ただ、この休憩室は事務室と兼用で、私は
尤も、別に誰にどう思われていようと構わない。構わないのだけど、職場の
さて、本題に戻ると……さて、どうしようか。まあ、急を要する用でもないので、別に今でなくても――
「――あれ、どうかしたんすか?
回れ右して引き返そうとした直前、ふと後方から届く柔らかな声。……いや、危なかった。回れ右してるとこ見られてたら、流石にちょっと恥ずかしいし。
ともあれ、威厳(?)を保ちつつ振り返ると、そこには声音に違わぬ柔らかな微笑を浮かべる男性。まあ、流石に分かってたけど。
さて、彼は
――まあ、そんな自虐はともあれ。
「……ええ、戸波くん。ちょっと、先週の発注書を確認しようと」
「ああ、なるほど。それで、入んないんすか?」
「…………ええ、そうね」
そう言うと、少し不思議そうに尋ねる戸波くん。……ええ、分かってます。彼に悪気のないことは。今ここに来たばかりの彼に、先ほどの会話など聞こえているはずないだろうし。……さて、どうしたものか――
「……あっ、ひょっとして人がいるから入りづらかったんすか?」
「……へっ? ……ええ、まあ」
すると、合点のいった様子でそう問い掛ける戸波くん。扉の近くまで来たことで、
「そういうことでしたら、俺が取ってきますよ先輩!」
「……へっ?」
すると、にこやかな笑顔で告げる戸波くん。それから、ゆっくり扉を開け中へ入っていく。……まあ、驚くことでもないけど。むしろ、彼ならそう言ってくれることくらいは、1年以上の関わりでわかってるつもりだし。
「――お待たせしました、高月先輩! これで合ってます?」
「……ええ、間違いないわ。ありがとう戸波くん」
「いえ、お安いご用です!」
ともあれ、少し遠くで待つこと数分。戻ってくるやいなや、ニコッと笑いお目当ての物を差し出してくれる戸波くん。……ほんと、不思議よね。別に、彼にだけ甘いとか優しいとか、そんなことは全くないのに……どうして、私にまでそんな
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます