第39話 魔王アルシオラス

 アルシオラスは剣を抜いて飛んできた。ミリィが氷の魔法で氷塊の雨を降らせる。しかし、アルシオラスは剣を振るいその全てを一瞬で砕いた。


「なんて力なの!」

「セラにまかせて!」


 セラは戦斧を召喚して思い切りたたきつけた。しかし、アルシオラスは剣を振るいセラを軽々と吹き飛ばしていった。


「セラよりも強いの?」

「二人はやらせない!」


 俺は聖剣をアルシオラスに振るった。しかし、アルシオラスはそのまま受け止めてそのまま空に投げ飛ばした。俺は背中に生えた翼で空を飛び、そのままアルシオラスに向かって剣を振るう。


「弱い、弱すぎるぞ! 千年前はもっと骨のある人間がいたはずだ!」

「クソ! 俺は負けるわけにはいかないんだ!」


 俺は分身してアルシオラスに向かって攻撃を図る。聖剣を構えながら左手で魔法を詠唱する。


「ファイア・ボール」

「付け焼刃が過ぎるぞ?」


 俺はそのまま攻撃をして聖剣を振るう。アルシオラスは剣で弾きながら分身した俺たちの攻撃をさばききっている。

 俺は聖剣に祈りを込める。聖剣は光刃を纏い、巨大な刃となり、アルシオラスに向かって斬り裂いた。

 それでもアルシオラスはびくともせずに剣で弾いた。


「今度はこちらの番かな?」


 アルシオラスは剣に魔力を込めると刀身を伸ばし始めた。


「ミリィ! セラ! 集まって」


 俺はバリアを展開してミリィが土属性魔法で土壁をさらに展開する。

 土壁がバターを切るように溶かしていき、バリアにぶつかる。

 バリアがひび割れていくと俺は聖剣を構えて攻撃に備える。


「ぐっ!」

「「リオス!」」


 ミリィとセラが俺の背中を支える。俺たちはそのまま押し飛ばされてしまった。

 ざらついた地面に手をついて身体を起こす。


「ミリィ? セラ? 大丈夫か?」

「何とか……」

「まだ戦える……もん……」


 ミリィとセラが後ろの方で転がっている。彼女たちを何としても守らないといけない。俺は聖剣を構えてすべてのレガリアの力を解放する。

 【分身】で四人に分裂して【加速】でアルシオラスのもとに突っ込み、アルシオラスの攻撃を【バリア】で防御しながら聖剣で攻撃を続ける。

 アルシオラスはその場から一歩も動かずに攻撃を受け流している。まるで本気を出す必要すらないと言われているようだった。


「リオス!」


 俺は分身を解除して、ミリィの合図に合わせて後方へ跳躍してそのまま飛翔する。

 ミリィは雷を落とした。アルシオラスは一歩よろめいた。

 俺は空中から聖剣に祈りを込めて光刃を纏い、聖剣を振るった。


「ちっ! 思っていたよりはやるようだな!」

「ラウラを返してもらう!」

「それは無理な話だな!」

「どうしてだ?」

「此方はすでに諦めてしまっておる」

「ラウラ! 戻ってきてくれ! 諦めるな!」

「無駄だ! 此方の身体は既に我がものとしている!」

「ラウラ! やることがあるんじゃないのか? 俺も手伝うから!」


 俺が声をかけ続けた時、一瞬だけラウラの表情が変わった気がした。


「此方。まだ諦めたはずではないのか?」

「ラウラ!」

「……けて。……たすけて!」

「ラウラ!」

「驚いた。まだ意思を出せるとは……」


 俺は目を見開いたアルシオラスに聖剣を放つ。アルシオラスは後方に退きながら俺の攻撃を受けていく。


「セラもいるんだからね!」


 セラは俺の攻撃に合わせるように攻撃を重ねていく。


「必ずラウラを取り戻す!」

「彼女にもやることがあります」

「ラウラ、悪い人じゃなかったもん」


 俺たちは三位一体になってアルシオラスに攻撃を続けていく。


「くそ、身体の支配権が揺らいでいる。此方、抗っているというのか?」

「俺は絶対にラウラを取り戻して見せる!」

「ラウラさんは優しい人でした! こんな最後なんてあっていいわけないです!」

「ラウラはセラに優しくしてくれたもん! 今度はセラが優しくする番だもん!」


 俺は分身を六人に増やす。とにかく相手の隙を見出すことだけを考えて攻撃を続けていく。ミリィは俺の隙間を縫うように魔法を放ち、セラは俺に合わせるように攻撃を挿しこんでいる。


「クソ、黙れ! 黙れ! 我は千年の恨みがあるのだ。此方如きの願いなど我が恨みの前に比べるまでもない!」

「ラウラの願いは俺が叶えてやるから! 戻ってくるんだ!」


 声をかければかけるほどにアルシオラスの動きが鈍っていく。俺は攻撃を続けてラウラに呼びかけを続けていく。


「ラウラさん! 私たちが何とかしますから! だから戻ってきて!」

「セラ怒ってないから! 戻ってきてよ!」

「ラウラ! 帰ろう!」

「黙れ! 黙れ! 黙れ! 其方らの声は頭に響く!」


 アルシオラスの攻撃がさらに鈍り始めている。俺の攻撃がようやくアルシオラスの身体を傷付けていく。

 ミリィが地面を凍らせて足元を凍り付けて身動きを封じ、セラの一撃が剣を弾き飛ばした。

 俺は聖剣に祈りを込めて一撃を振るう。


 (ラウラを助けたい! 俺に力を貸してくれ!)


 俺は、アルシオラスが顔を庇おうと出した左手を聖剣で切り落とした。


「なに!」

「お前の核は左手にあることを忘れてないか?」

「おのれえええええええ!」


 アルシオラスの意識が消えていく。そして崩れ落ちるようにラウラが倒れていく。俺は彼女を抱き寄せてミリィを見遣る。


「ミリィ、回復魔法で何とかならないか?」

「傷はふさげますが、片腕は戻せないです。回復魔法は万能ではないので……」

「ラウラが戻ってきたならそれでいいじゃん」

「そうか、そうだな」


 ミリィが回復魔法をかけて傷口をふさいだ。

 ラウラは目を開いて俺を見る。


「ごめんなさい……。私、こうするしか選択肢がなかったの……」

「俺も謝らないといけない。君の左腕を奪ってしまった」

「これはきっと私への罰です。命まで取られなかったのは幸運でした」


 俺はラウラを強く抱きしめた。彼女は大粒の涙を流している。


「どうして許してくれるのですか?」

「だって君は俺に良くしてくれたよね? 一度の過ちで全てを失うのは間違えている」

「ラウラさん。何があったのか話してくれますか?」

「わかりました」


 ラウラが話し出そうとした時だった。嫌な感じがした。


「ちょっと待ってくれ」


 みんなが身構えた。ラウラの左手が禍々しくうごめいている。

 そして、肥大化してその形を変えていく。五歳児程度の大きさの人型の悪魔が出来上がった。

 羊のような巻角をした悪魔のような男、黒いローブを巻いて長い髪をなびかせている。目は赤く。あらゆるものを憎むようにこちらを見ている。


「うかつだった。だが、一応受肉は果たせた」

「お前はまさかアルシオラスなのか?」

「如何にも我はアルシオラス。よくも邪魔をしたな」


 俺は【バリア】のレガリアをラウラの右手につけた。


「リオスさん?」

「【バリア】のレガリア。使い方は分かるよね? それで自分の身を守ってほしい」

「わかりました。絶対に死なないでくださいね」

「そのつもりだよ」


 ラウラは距離を取り離れた。

 アルシオラスは指を鳴らして仲間を呼んだ。

 現れたのは犬の頭をした人型の魔族と翼を生やしフクロウの頭をした人型の魔族。


「アルシオラス様! まさか受肉なさるとは!」

「待ちましたぞ! この機会を!」

「この人間どもを殺せ」

「「御意」」


 俺はミリィとセラを見遣る。彼女たちは二つ返事でうなずいた。


「俺がアルシオラスを相手する。あの二人はミリィとセラに任せたよ」

「はい、安心してください!」

「セラに任せて!」


 俺はアルシオラスに向かって聖剣を構えた。

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