第33話:ラティフは性的に挑発される

奥ゆかしい・・・・・ねぇ」


 ラティフが疑問めいたつぶやきをすれば、ラティフを締め付ける腕が強くなる。ラティフは肉屋のひき肉のような自分を想像した。


「さあ、どうですか。股間のイチモツはいかがですか? 興奮の限りとなっていますか」


「全くだ。この膝での抱っこも僕を興奮させようとしたのかい」


「さっきのは、おばあちゃま直伝の方法でした。奥の手はなくなりました。もうお手上げです。こういう風にすれば後は男性の方が適当にしてくれるとうかがっていたのに。おばあちゃまはもうろくしてしまってたのかも」


 ラティフにはよくわからない感覚だった。年頃の男女は気がついたら子どもができているようなものだと思っていた。そしてその段に彼女が臨もうとしていることはわかった。


「アミーナのおばあ様の技は少し忘れてくれたら助かる。僕はさっきからヒヤヒヤしてる」


「興奮してるんですか?」


「いや、死ぬかもしれないので恐怖している」


 正直に言う。これが大事だとは思う。思うが、それも時と場合による。

 

 ラティフが顎を使って、割れた火鉢に注意を示した。


「ああ。そうですよね。心配しないで。ラティフ様は火鉢じゃないから。大丈夫ですよ。あたしに子どもを授けてくれる大事な旦那様です――」


 アミーナはラティフの返事を期待している。

 

 正直に物を申したら、ラティフは火鉢のように粉砕されるのだろうか。


「――ラティフ様はでしゃばりな女が好き? だったら、変える。あなた好みに変えるから……お願い。あたしは子どもが欲しいの。多くの女達のようにあたしも当たり前のように子どもが欲しいの」


 アミーナの声に湿り気がある。

 ラティフは思った。

 アミーナの方を振り向き、慰めを申し上げる。それが大事なのだ。妻に必要なのは事実ではない。

 彼女の思いに寄り添うことが必要なのだ。


 だけど、振り向くことができない。アミーナがそれを許さなかった。

 

「僕の妻はいま泣いている。その涙を拭うか止めるか。僕は何か行動をしたいんだけど。アミーナは顔を見られたくない?」


「本当に悲しい涙は見せてはいけないとおばあちゃまに教えられているからです」


 雨のように降る涙をラティフは頭で受け止めた。涙と鼻水でいっぱいになっていそうだから。後から頭を洗おうと決めた。


「アミーナのおばあちゃまは魔術に詳しく、賢い方だ」


 アミーナは鳴き声で返事をした。

 

 長く長く泣くので、そのまま二人は疲れて眠った。

 

 ラティフはアミーナを捨てる決意を一層固めた。アミーナに子どもを持たせるためには、この婚姻は問題が多すぎる。

 

 眠りに落ちる中、師匠の目であり、耳でもある白いねずみの使い魔の鳴き声が聞こえた。


 そんなはずはないのに。師匠の声が届いたような気がした。

 

「二人が子を為す方法をわたしは与えることができる。早くわたしにあいにこい愛に恋


 もっと強力な召喚要請だった。

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