第27話 いくぜぇ! 怖くないんだああ

 放課後。旧校舎へ向かおうとしていると、ロジャーとワッツが声をかけてきた。


「おいステラ、旧校舎へ行くのか? あ、危ないだろ」

「ロジャーさん、ワッツさん。でも、どうしても確かめたいことがあるのです」

「なんだよそれ……。危ないから、お、俺も一緒にいってやるよ」

「ありがとうございます。ミミィを誘ったら、興味がないと返されてしまいました」


 ステラは嬉しそうに微笑んだが、ロジャーはガクガクと震えていた。大丈夫なのか、ロジャーよ。


 バラの庭園を抜けると、旧校舎が目の前に広がった。古めかしいゴシック調の建物は、どうみても学園には見えなかった。神殿か何かのような、お城のようにも見える。


 不意に草を踏む音が聞こえ、ブルーとロジャーは慌てて振り返った。


「せ、セレーネ⁉」

「あら、ぞろぞろとどうしたのです?」

「こ、こんばんは……」


 そこには、同じクラスのセレーネと、セレーネの使役している召喚獣で妖精型のランがいた。ランは心配そうにブルーとロジャーを交互にみつめた。


「どうしたじゃねーよ。お前らも、幽霊を見に来たのか?」

「え? 幽霊?」

「知らないのか? 旧校舎に出るっていう、幽霊の話だよ」

「あんた、そんなもの信じているの? バカバカしい」

「んなっ‼ なんだよ、見たってやつがいるんだよ。ふわふわと光が浮かんでいるのが見えたり、呪文みたいなのが聞こえたりって……」


 セレーネはステラを見つめた。びびっているブルーとロジャーはそっちのけだ。ステラは特に怖がっている様子もなければ、面白がっている様子もない。


「ステラさんも幽霊を見に?」

「うーん、困りごとがあれば、聞いたほうがいいかなと思いまして」

「あなた、お人よしすぎるわ」

「そうでしょうか……」


 ワタワタするランが間に入った。


「まあまあ……。ステラさんは、幽霊が怖くないのですね」

「そうですね。本当にいるかどうかはわかりませんけれど」

「そうね、それについては同感よ。じゃ、私たちはこれで……」


 そういうと、二人はバラの庭園に入っていった。残された四人は旧校舎を見上げた。夕日がかげっており、もうすぐ夜になろうとしている。


 そのとき、さっと何か黒い影が横切るのを、ブルーとロジャーは目撃した。


「ギャー!」

「うるせーな、ブルー! びびらせるな!」

「え、どこですか?」


 キョロキョロするステラとワッツだったが、それらしき影など見えない。


「かかかかかかかか帰ろう、ステラ!」


 涙目でうろたえるブルーに対し、ステラはゆっくりと頷いた。


「そうしましょうか。ご飯の時間ですし」

「おいおい、ご飯の心配かよ」

「ロジャーさんとワッツさんも、ご飯に行きませんか?」

「え。そ、そうだな。お前がどうしてもっていうなら……」


 ロジャーはステラへ手を差し出した。


「ほら。もうだいぶ暗いし」

「ありがとうございます、ロジャーさん」


 手をつなぐ二人の後ろを、ワッツにしがみついたブルーが歩いていく。


「ブルーさん、ちょっと苦しいです」

「怖くない、怖くない、怖くない……」

「ブルーさん、大丈夫ですよ! 何もいませんでしたから!」


 ワッツは必死でブルーをなだめていた。


 ◇◇◇



 次の日も、ステラとブルーは旧校舎へ向かった。バラの庭園の出口に差し掛かると、そこにはランが一人でたたずんでいた。


「ランさん、どうしたのです?」

「あ、ステラさん。いえ、別に何も……」


 ランは旧校舎を一度だけ見つめると、トボトボと庭園を後にしていった。


「どうしたのでしょう。ランさん……」

「そういえば、今日の授業でも居眠りしてたって、先生に怒られてたな」

「珍しいですね、真面目で責任感の強いランさんが……」

「お化けに怖がって、眠れなかったんじゃないか?」

「ふふ。ブルーと同じでね」

「ステラ、ひどい……」


 笑いながら旧校舎へたどり着いた。周囲には誰もいない。旧校舎は白い材質で出来ており、不気味に聳え立っていた。


「何もないですね」

「そうだな。やっぱり幽霊なんていなかったんだ」

「残念です」

「ステラだけな……」

「じゃあ、ご飯に行きましょうか。ロジャーさんも呼んでいましたし」

「そうだな! 飯飯!」


 二人はそう言うと、仲良く旧校舎を後にした。バラの庭園を抜けるたびに、ブルーは周囲への警戒を怠らなかった!


― びびりまくりのブルー。幽霊なんて本当にいるのかな? つづく! ―

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