9話 はじめての武器制作

 初めて農具を修繕してからさらに1ヶ月ほど経過した頃。僕はようやく村全体の農具の修繕を完了することができた。


 ということで現在僕は修繕の依頼を受けておらず、基本的には隔日で狩りに参加する日々を続けている。


 ではその間の日、空き時間に何をしているのかといえば以前のように他の畑を手伝いにいったり、そのついでに家庭用調理器具等を特訓がてら修繕させてもらったり、あとは幼馴染のルヴィアちゃんと遊んだりして過ごしている。


 そんな充実した日々の中で、僕は一つ思うことがあった。


 修繕を繰り返したことで魔力もだいぶ増えたし、スキルの練度も上がった。これなら次の段階──武器制作に進めるのではないかということだ。


 これまでは形あるものをより高い品質になるよう調整を加える作業を行なっていた。


 しかし武器制作は違う。魔力の関係上、今の所材料が必要ではあるが、それを自らの構想通りの形に変形させる必要がある。


 つまり求められる作業の難度が1段階上がるというわけだ。


「でもきっと今の僕ならやれるはず」


 先ほども言ったように今は材料がなくては作れない。


 ちなみにその材料は必ずしも金属である必要はなさそうで、例えば魔物の素材なんかも武器制作の材料として扱うことはできそうである。


 しかしこれは検証の中でわかったことなのだが、どうやら金属、それも鉄などのありふれたもの以外では魔力の消費量が桁違いに多いようなのだ。


 だからこそ金属、中でも鉄など一部しか扱うことができないというのが現状だ。


 おそらくこれらは魔力量が増加したり、『鍛冶』の練度が上がっていけば解決するはずである。


 ……まぁ、それはその時のお楽しみということで。


 というわけで僕は今の自分ができる範囲で武器制作をするべく、家のものや他の家から貰い集めた鉄屑を目前へと用意した。


「まずはこれを綺麗な鉄の塊にして……」


 わざわざそう口にしつつ、僕は目の前の鉄屑に魔力を流すと、召喚したハンマーで叩いていく。こうすることで錆等をなくしつつ、一つの鉄塊へと鉄屑の形を変えていく。


 この作業についてはこれまで幾度となく修繕を繰り返してきたこともあり、ものの数分で完了することができた。


「よし完了。それじゃ次はっと……」


 続いて僕は鉄塊を剣の形へと変えていく作業へと移る。ただしやることは修繕と変わらない。ただ鉄塊に魔力を流しながらハンマーで叩くだけだ。


 しかし今までと違うのは、完成イメージをより鮮明に意識しながらハンマーを振るう必要があるということだ。


 これが想像以上に難しい。


 なんせこれまでは例えば剣であればその形や大きさ長さ等の情報が目の前のボロボロになった剣から得ることができた。


 しかし今僕の目の前にあるのは鉄塊であり、当然作成したい剣の形とは明らかに違う。


 だからこそ中々その形状をイメージするのに苦戦してしまうのである。


「うーん、むずかしいな」


 結果僕はああでもないこうでもないと何度もハンマーを振るい続け、1時間ほどでようやく求めていた長さ、大きさ、形の剣、その原型を作ることができた。


「よし、ここまでくればあとは修繕と同じだ」


 僕は目前にある剣の形をした鉄塊をさらにハンマーで叩き、刃をつけたりと細部を整えていく。こうしてほぼほぼ剣としての様相を窺えるようになったところで、僕はハンマーを砥石へと変え、その刃をより鋭くする作業へと移った。


 そして研磨を繰り返すこと10分。僕はついに一から僕専用の剣を作り出すことに成功した。

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