2話 遭遇
歩いていた中で見つけた初めての生き物は、ウサギによく似た…なにかだ。
”なにか”というのも凡その形はウサギなのだが明らかに違う部分があるのだ。
「頭に角が生えてる…それになんか食べて…ウッ」
胴体と同じくらいの渦巻き状の角が額から生えており、またその先が血のようなもので赤く染まっていることから明らかに攻撃性があるものだと伺える。
ウサギの角は、まるで鋼のように硬そうな印象で、血のように赤く染まっているその角は凶暴な本能がそのまま現れたようだ。
更にそのウサギは今まさに食事中であり、なにかの人の形をしたようなものを貪っている最中だった。
その死体は胴体部分に突き刺されたような傷跡があり、まさしくその角で貫かれて絶命したのだと推測できた。
「初めての出会いが殺人ウサギなんて…ついてない…。とりあえずまだ気づかれていないようだし、このまま逃げよう…!」
丸腰で子供であるため戦闘力は皆無。あんな鋭い角で一撃でも喰らえば致命傷になりかねないと判断しその場からゆっくりと後ずさりをして慎重に動いていく。
ドンッ…
その時背中になにかがぶつかった。
後ろを振り返り、木かと思われたそれは、緑色の肌をした人型の青年くらいの身長の生物であった。
その目は濁っており、獲物を見つけたことによる喜びからか涎を垂らしている。
髪は生えておらず、右手には大き目のこん棒を握っており、こちらも血が付着していて何体も屠ってきたのかこびりついている血の量が尋常ではなく、一目で力の差を感じる相手であった。
目の前に立つ緑色の生物を見た瞬間、少年の心臓は激しく跳ね上がった。冷たい汗が背中を伝い、喉の奥が急激に渇いていく。
「ひっ…う、うわああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」
悲鳴をあげるも目の前のこちらを狩る者の威圧感で腰が抜けてしまい、後ずさることしかできなかった。
しかもその叫び声でこちらに気づいたのか、先ほどの角ウサギがこちらに駆けてくる音も背後から聞こえてくる。
「やばいって…詰んでない…?」
こちらが怯えている様子をみてニタニタと喜色をあらわにする気色が悪い生物。
ウサギをちらっとみるとその角をこちらに向けて明らかに刺突しようとしている。
ウサギの角がこちらに迫ってくる。その刃が胸に突き刺さるイメージが頭をよぎり、恐怖で心が締めつけられる。
でも…逃げられない。足が動かない。背後の緑色の生物も、僕を狩ろうとしている。どうする、どうすれば…?
緑色の生物とウサギに挟み込まれるようにして腰が抜けている少年は逃げ出すこともできず、できることといえば縮こまることだけ。
右から振り抜かれるこん棒と、後ろから勢いよく急所に突き刺さんとして跳躍したウサギの音を聞きながら、少年は必死に目の前の衝撃に備え、膝を抱え込みながら身を縮めた。その瞬間、前と背後から一撃が襲う音が聞こえた…
骨が砕かれるような鈍い音と、肉に突き刺さる音が静かな森に響いた。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
「グアアアアア!!!」
「ピギュッ…」
頭を守りながらその場で蹲った少年は来るはずだった衝撃が訪れず、代わりに二つの悲鳴が響いた。
「な、なんだ…?」
そこには太ももに大きく穴を空けた緑色の生物と、首が変な方向に曲がったウサギの姿だった。
「まさか僕が頭を下げて蹲ったおかげで…?」
とっさの行動でウサギと緑(仮名)は最初に標的にしていた少年を攻撃し損ね、相打ちという形になっていた。
その凄惨な光景を目の前にしてもなぜか動揺も気持ち悪さも感じなかった。
それよりも今は危機的状況を脱するほうが先決だ。
「い、いま僕にできることは…どうしたらいい…!生きるためにどうすればいいか、考えろ!」
状況を確認すると、大動脈を傷つけたのか大量に太ももから血を流しながら呻いている緑と、ヨロヨロと見るからに瀕死状態のウサギ。両者が傷を負って呻いている今がチャンスだ。
ちらりと緑の生物が持っていた武器を見ると、痛みに耐えかねて地面に落とし、転がっている。が、しかし緑の生物は右利きなのか少年とは反対側に落ちているために拾いに行くほうがリスキーだと考えた。
そう考えた少年は、なにか武器になるものを探すと、先ほどポケットに入っていた鍵を見つけた。
どう考えても用途は違うし頭痛は起きるが今はそんなことを言ってられない。
恐怖を振り切って血を流している緑の太ももを全力で持っている鍵を突っ込んだ。
「アギガアアアアアアアアア!!!!!」
傷が広がるあまりの痛みに立っていられなくなり、出血を抑えようと手で押さえながら倒れこむ緑の生物。
そいつが呻いているその隙に首が折れ曲がっているウサギの頭を、もともと折れていたからか捻るといとも簡単に絶命させることができた。
その鋭い角がついたウサギの頭を、こちらに頭を向けているそいつに向かって力の限り振り下ろす。
「僕を獲物としてみてたんだ!お前も獲物になる覚悟はできてるだろ!」
勢いよく振り下ろした鋭利なその角は緑の生物の皮膚をやすやすと貫き、ほどなくして力をなくして地面に倒れこみ、 辺りはもとの静寂を取り戻した。
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