貴方のスマッシュは雑魚い

白河黒江

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「い、石川鏡花さん! ずっと前から好きでした! 俺と付き合ってください!」

 靴箱の陰からいきなり飛び出してきた男子生徒は、そう言って姿勢を直角にして、こちらに右手を差し出してきた。

 男子生徒、としか言いようがない。見たことある気もするが、クラスメイトの名前も半分くらいしか覚えていないので、どこの誰だかレコグナイズすることは到底無理だった。

 沈黙していると、男子生徒は『どうですか』という表情で恐る恐る顔を上げ始めた。


 んー、まあ、何にせよフる以外ないな。


「まあ、やめとくわ」

 そう告げて立ち去ろうとする私を、男子生徒が呼び止める。

「え、そ、それってダメってことですか?」

「ああ、やめとく」

 まだ飲み込めないのか、飲み込みたくないのか。男子生徒はもう2歩寄って、悲壮な眉根で聞いてくる。

「あの、俺の何がいけないか……どうしてダメかだけでも、教えてください」

 うーん、よくわからない。何か認識がズレている気がする。まあ、付き合わない理由を強いて言うなら——

「メリットとか特に無さそうだから」

「えっ、それは、」

 部活の朝練に来てるんだから、もうこれ以上の余計な時間は割きたくない。手短に説明して去ることにする。

「だから。私にメリットが無さそうだから、やめとく」

 すると男子生徒は地面とキスでもするつもりなのか、がくっと玄関の床に膝をついていた。

 私は別にそれを見届ける義務もないので、さっさと体育館へと向かった。

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