第14話 光庭園異聞II 第七話「最後の投稿」



「この投稿を見た方は、既に遅い」


真夜中のSNSに、明美の最後の投稿が表示された。


シャネルの白いドレスに身を包んだ彼女は、無数の画面に囲まれている。それぞれの画面には、花に変わりかけた人々の姿。彼らは永遠の苦痛に歪んだ表情を浮かべながら、美しい花へと変容していく。


「私のデジタル庭園へようこそ」


投稿を見た瞬間、画面を消すことができなくなる。スマートフォンやパソコンの電源も切れない。全ての機器が、明美の支配下に置かれていく。


「さあ、最後のショーを始めましょう」


彼女の背後の壁一面に、新たな花が咲き乱れ始める。それぞれの花びらには、人の顔が浮かび上がっている。苦痛に歪む表情。叫び声を上げる口元。絶望に満ちた瞳。


部屋の中央には、巨大な鏡が設置されている。その中で、明美の姿が無数に増殖していく。


「もう、誰も逃げられない」


画面から甘い香りが漂い始める。それは、デジタルの檻に閉じ込められた人々の魂の香り。


街中の電子機器が一斉に明美の姿を映し出す。見た者は皆、変容を始める。指先から透明になり、血管が青く浮かび上がり、そこから新たな花が咲き始める。


「美しい...とても美しい」


明美の声が、全てのデバイスから響き渡る。彼女の瞳には、狂気の色が宿っていた。


最後のライブ配信が始まる。


カメラは、変容していく人々の姿を映し出す。彼らの悲鳴は、デジタルノイズとなって永遠に記録される。


「これが、私たちの永遠の園」


明美の姿が、突然、無数の画面で分裂を始める。それぞれが違うブランドのドレスを纏い、異なる表情を浮かべている。


全ての画面が花で埋め尽くされていく。

もはや、人の姿は見えない。

ただ無数の花が、永遠に咲き続ける。


その花園で、人々は永遠に美という名の拷問を受け続ける。

デジタルの檻の中で、永遠に解放されることなく。


最後の投稿には、こう書かれていた:


「#永遠の美 #デジタル花葬 #終わりなき園」


そして画面の中で、新たな花が咲き続ける。

永遠に。


(終)

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