【長篇】婚約者が王子に加担してザマァ婚約破棄したので父親の騎士団長様に責任をとって結婚してもらうことにしました

山田ジギタリス

第1話 どうしてこう婚約破棄をこんな大勢の前で宣言するのでしょうか?

 目の前の茶番を見ながら私は溜息をついた。

「公爵令嬢イザベラ、そなたとの婚約を破棄する!」

「リチャード殿下こんな場所でそのようなお話をならる理由をお聞かせいただけますか?」

 

 王太子殿下リチャード様と婚約者様である公爵令嬢イザベラ様の婚約破棄騒動から始まった糾弾合戦。殿下の横には不安そうにしている可憐な少女。彼女がこの騒ぎの発端となったナルキッソス男爵家の養女メッサリナ。その可憐な容姿に騙される男性は多くその筆頭が王太子殿下。そして後ろには殿下の御友人たち。皆で揃って殿下の婚約者様を糾弾しようとしているが、殿下側の放つひょろひょろの言葉の矢は婚約者様にばさばさと切り落とされていく。


まぁ、イザベラ様、の圧勝でしょうね。


 問題なのは王子殿下側にカルサイト子爵家子息のマックスもいること。彼は私の婚約者で姉弟のように育った仲だ。しかし甘っちょろい奴だとは思っていたけれどあんな毒婦にころりと堕とされていたなんて。鍛え方が足りなかったかな。


「もうよい、そこまでだ。双方退場せよ。せっかくの祝いの席が台無しだ」


 ようやく陛下が止めに入った。さてはあんた面白がっていたでしょ。いやいやいやそれは不敬だ。声にでてなかったよね。こっそりと周りを見回すが誰もが壇上を見ている。

 陛下の両隣には渋い顔をしている宰相閣下と騎士団長。団長ったら渋い顔も素敵。いかんいかん、私の婚約者のことを考えねば。


◆◆◆


 結局その日はその場で解散となり、時間が余った私は騎士団演習場に来て一人で剣を振っている。私も当事者のはずだが私がいると血の雨が降るからと母上から言われて退席させられた。解せぬ。マックスは悪いことをしたんだ、多少痛い目にあっても仕方あるまい。

 

 私の雰囲気に恐れをなした団員たちは近寄ってこない。あぁ、王国一とうたわれる騎士団団員なんだからもっとシャキッとしろ、なさけない。そういえば、マックスも形だけは勇ましかったけれどどうも性根がやわだったな。


 演習場を何周かして体を温め、次に一心に剣を振る。相手をしてくれる人は……いないか。二刻ほど剣を振ったところでやめる。そろそろ帰るとするか。


「お前、なんでここにいる!」


 後ろから声を掛けられた。振り返ると団長がいた。私より頭一つ大きい背丈。他の団員の追従を許さない筋肉、短く刈り上げた髪。強面だけど笑うと可愛い顔。今日も目の保養をありがとうございます。


「暇になったので!」

「今日ぐらい休んだらどうだ、と言うか先輩から帰るように言われてなかったか?」

 先輩と言うのは私の母上のこと。母上が現役時代に指導した後輩が団長だ。

 

「自分はこうやって剣を振るのが休みであります」

「はぁ……」

 

 大きなため息が聞こえた。


 「よし、俺も少しむしゃくしゃしてる、みんなに稽古をつけてやろう」


 周りの団員が声にならない悲鳴をあげている気配がする。ご愁傷様。私にはご褒美だけど。


 くたくたになり剣を持ち上げるのがやっとの頃、ようやく稽古が終わった。水を飲み、更に頭から水を被る。服がびしょびしょで体にべったりくっついてるから着替えないとな。年かさの当番メイドから手ぬぐいを受け取り顔や髪を拭いていると団長が近寄ってきた。


「今後のことで話がある。団長室に来い。あぁ、着替えてから来いよ、そんな恰好じゃ風邪をひく」


 団長の顔がこころなし赤い気がする。団長の方こそ熱があるんじゃないですか? まぁ今日、あんなことあったからなぁ、体調も悪くなるでしょう。


◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆


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