第33話 破滅の呪い、運命を切り開く者

闇が支配する空間で、俺は膝をつき、息を整えていた。目の前に立つ魔王、そしてその圧倒的な力。俺の体力はすでに限界を迎えていて、エクリプスの力を解放したことで、なんとか魔王に対抗することができたが、その代償はあまりにも大きかった。呪いの力がますます強くなり、俺の体を侵し始めているのを感じる。それでも、俺は立ち上がるしかなかった。


「ルシエル、大丈夫?」


アリシアが駆け寄ってくる。その顔には心配と怒りが入り混じっていたが、俺にとってはそれがどこか温かく感じられた。


「大丈夫だ……まだ戦える」


力なく笑って答えるが、その裏には不安が隠れているのを自分でも感じていた。エクリプスの力を使う度に、呪いが強くなり、まるで俺が魔王の道具になっていくような恐怖を感じる。だが、それを口にすることはできなかった。


「無理しないで! あなたが壊れてしまったら、私たちはどうするの?」


アリシアが俺の肩を支えながら、必死で叫ぶ。俺の中には彼女への感謝の気持ちと、同時にこの戦いを終わらせたいという気持ちが交錯していた。


「ありがとう、アリシア。でも、俺は……俺のためだけに戦っているわけじゃない」


ゆっくりと立ち上がり、魔王を見据える。そいつは、未だに圧倒的な存在感を放ち、闇の力に包まれて立っている。まるで宇宙の中心に存在するかのように、その姿はどこまでも巨大で、どこまでも冷徹だった。


「俺たちは仲間だろ?」


グラントの声が背後から響く。彼はしっかりとした足取りで、俺の隣に立ち、その瞳には迷いがない。彼の力強い言葉が、俺の心に響いた。


「そして、あいつを倒さない限り、この世界は終わる。それを思えば、どんな力だって振り絞らなければならない」


「そうだな」


頷きながら、俺は心の中で決意を固める。確かに、俺一人では勝てない。だが、仲間たちと共に戦えば、きっと道は開ける。俺はそのことを信じるしかなかった。


「さて、俺もいい加減に決着をつけようか」


魔王が低い声で言った。その声には、終わりを告げるような冷徹さが込められていた。恐ろしい存在であることは分かっているが、それでも俺はその目を見据えて言う。


「お前が目覚めたその時から、俺の計画は始まった」


魔王はゆっくりと歩み寄りながら続ける。


「そして、俺は一つの真実に辿り着いた。お前、ルシエル。お前の力こそが、この世界を終わらせる鍵だ」


「何を……言っているんだ?」


警戒心を抱きながら、俺は問いかける。だが、その答えはすぐに返ってきた。


「お前の中に眠るその呪い……それはただの力ではない」


魔王は冷笑を浮かべ、手を広げる。


「それは、我が力を宿すために選ばれたもの。お前は、俺の意志で生まれたのだ」


その言葉を聞いた瞬間、俺の心臓が止まったかのように感じた。呪いの力、それが魔王の力と繋がっているというのか? もしそれが本当なら、俺が生まれた意味は、魔王の道具として使われるためだけだったのか?


「ふざけるな!」


俺はその場で拳を握りしめ、怒りと共に立ち上がった。「俺は、俺の意志で生きる! 魔王の道具になるつもりなんか、絶対にない!」


魔王は静かに笑うだけだった。


「だが、運命はお前にそうさせる」


その冷たい声が、俺の心を締め付けた。呪いが反応しているのを感じる。魔王の言葉が、俺の中に眠る闇を引き出そうとしているかのようだった。


「ルシエル、耐えて!」


アリシアが叫ぶが、その声も魔王の圧倒的な存在感にはかき消される。


「その力を持って、我が元に戻れ。そうすれば、お前は力を完全に得ることができる」


魔王が再び語りかける。その目は、俺の中にある闇を引き出そうとしているかのようだった。


だが、俺はその言葉を無視して、足を踏み出した。エクリプスをしっかりと握りしめ、魔王に向かって言う。


「俺は……俺の力で、この世界を救う!」


その瞬間、エクリプスの刃が再び光を放ち、俺の体から強烈な魔力が放出される。だが、それは呪いの力と接触したことによるものだった。俺の体が支配され、意識が徐々に飲み込まれていく。


「このままでは、俺が魔王になる……?」


体が異常をきたしていくのを感じ、俺は必死に抗おうとする。しかし、その力は強大で、俺を蝕んでいく。


「いや、俺は……!」


その時、アリシアが駆け寄り、俺の手を握った。


「ルシエル、あなたは一人じゃない。私たちがいる」


アリシアの声には、揺るぎない決意が込められていた。


「俺もいる!」


グラントが力強く言った。迷いのないその声は、仲間として俺を守る覚悟を伝えてくれた。


その言葉に、俺は再び心を奮い立たせた。魔王の力に抗い、呪いに屈しない。それは、俺一人ではできないことだが、仲間たちと一緒なら乗り越えられる。


「ありがとう……」


俺は力強く呟き、エクリプスを再び魔王に向けて突き出した。


「俺の運命を決めるのは、俺だ!」


その瞬間、エクリプスが再び光を放ち、魔王に向かって突進した。魔王の力に抗いながら、俺は仲間たちと共に、この戦いを終わらせるために戦い抜く決意を固めていた。


闇の中で、俺の力が試される時が来た。魔王との決戦はまだ始まったばかりだが、俺がその未来を切り開く。

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