ダンジョン配信者を救って世を湧かせた、スキル『ウザい広告に出てくるゲーム』持ちの俺、これを機に無事バズる

朧月アーク

第1話 同接0人

「同接0人……うん……いつも通りだな」


ダンジョンの中でみなとは頭を抱えていた。


もう一度配信画面を確認するも、そこには【Live中】の文字と同接0人の文字。


これは、自分の配信を誰も見ていないということだ。


数分前に『1、2…』と増えていたのだが、挨拶をしてもコメントをしてくれず、戦闘が始まって終わったら「どうせヤラセとCGだろ」と書かれて消えてしまった。


「CGじゃないんだけどな……というかそんな技術ないし」


確かに俺のスキルは良いのか悪いのか、唯一無二の俺だけが持ってる固有スキルらしい。


だから、俺のスキルを配信中に使っても、実際に見たことがない人が配信を見てるせいか、CGと勘違いされ中々常連さんを作れずにいた。


他のダンジョン配信者のライブもよく見るが、違いがあまり分からない。


・素早く多くの魔物を倒して魅せる闘いをする。


・雑談が面白い。


………雑談かぁ、同接0人だから何を話せば良いのか分からないんだよな……

何か気まずいし……


そんな事を考えていると、ピロリンッと軽快な音が聞こえた。


同接1名。


おっ……! 誰か来てくれたな


配信している端末に向かって声をかける。


「こんばんは!」


俺が明るい声を上げると、どこからか別の声が響いた。


「ブモモッ……!」


ここはダンジョンの第2区域。

1→2→3と、下へ潜れば潜るほど強力な魔物がいる。


「あっちを見てください! ハイオークです! 戦いますから見ててくださいね!」


いつもはこんな口調じゃないが、配信時は何故か敬語になってしまう。


多分、自分を下に見ているのだ。

上の人達に少しでも自分の配信を見てもらおうと腰をペコペコし、へりくだった態度でいる。


そんな自分を好きにはなれなかった。

 

200cmほどある、手に重そうな金棒を持った筋骨粒々のハイオークが、俺の方にドタドタと襲いかかって来た。


フゥゥゥゥ、と俺は息を吐いて、口を開ける。


「『ゾゾサバイバー』ッ!」


そう言った瞬間、目の前に色々なキャラが描かれたホログラムが表れる。


「【キャラクター―コモン】」


その中から一番スタンダードなやつを選ぶと、短剣が2本、俺の手の中に入った。


そして絵が描かれた3枚のパネルが浮かび上がる。

俺はその内の1つを選択する。


「【補助スキル―スニーカー】ッ」


移動スピード+10%。


そして俺は地面を蹴った。


「ブヒヒッ!?」


俺はの為にハイオークの周りを駆ける。


「よし、1分経ったな【補助スキル―筋肉増強材】ッ」


そしてハイオークの正面に立ち、力を込めて、横凪ぎを放つ。


「ブヒィィ……」


そして成すすべなく倒されたハイオークはダンジョン内部に吸収された。


今使ったのは、俺の固有スキル『ウザい広告に出てくるゲーム』の中にある【ゾゾサバイバー】というものだ。


【ゾゾサバイバー】とは、ゾンビに襲われた街を救うアクションRPGで、プレイヤーは街を守る戦士となり四方八方から襲ってくるゾンビを次々と倒していく。


時間経過と共に、プレイヤーは新たなスキルを身につけ、どんどんと強くなっていく仕様だ。


ふぅ、今日もしっかり動けてるな!

そして倒した瞬間も画面に映したから、CGじゃないと信じてくれると良いけど……


「ど、どうでしたか!?」


”………”


返事はない。


あ、アレ……? 壊れたか……?

これももうお古だしなぁ……変え時か?


するとピロリンっ、と通知が届く。


”合成かよw冷めたわ”


「えっ………合成じゃないんですが」


”言い訳乙 見苦しいって(笑)”


そして再び同接0人に戻った。


「はぁ、また信じてもらえなかったな……」


―――――――――――――――


自宅に帰った俺は、枕に顔を埋める。


「はぁ、どうしたら信じてもらえるんだろうか……」


そう悩みながら、スマホを取り出してお馴染みの配信アプリを起動する。


「あっ、獅子音ししおとリオンが配信してる……」


俺と同じダンジョン配信者で、登録者数100万人越え。その外見は染めているのか派手な金髪とムキムキの身体だ。


髪色だけでなく、彼の闘い方は拳1つ。スキルによる肉体強化と固有スキル『灼焔しゃくえん』によるハデハデな配信によって瞬く間にファンが多くついた。


更に、持ち前の明るさと雑談の面白さも兼ね備えていた。


高校生であることも勢いをつける要素としては大きかったらしく、現存する配信者の中でもトップクラスの再生回数と同接を誇っている。


俺も一応、高校生なんだけどなぁ……


「同接8万人……マジか」


はぁ……何が違うんだろ…


「俺って才能無いのかなぁ……」


薄々感じてはいたがあまり口に出したくなかった。 


「はぁ……」


柊木ひいらぎ みなとはため息を漏らしながらも、明日のダンジョン配信の為に準備をする。


みなとの手元にあるスマホから、声が漏れた。


「『明日は、15時くらいから第3区域に行くから応援よろしくな!!』」


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る