第3話
魔導書探しを始めて、小一時間程度が経っただろうか。
今日は、めぼしい魔導書がほとんど見つからなかった。
かろうじて見つかった魔導書も、今まで読んだことのあるものと似たようなものばかり。
「...仕方ない、あとは実戦で使えるように練習でもするか。」
立ち上がって窓から外を覗くと、夕日が沈みかけていた。
先生はかなり門限に厳しいが、その門限は意外と遅かったりする。
まだ、授業が終わって二時間弱。
門限まではさらに二時間程度はある。
魔導書が見つからなくて残念だったが、まだ出来ることはあるから。
と気持ちを切り替え、図書館の外へ出る。
図書館の外
ここら辺は、本当に人通りがほとんどない。
だから、ここで魔法の練習をしていても先生の方へ連絡が行く心配もない。
本当にありがたいもんだな。
とは言っても学校の敷地内で炎魔法の練習は出来ないけどな。
何かの間違いで暴発でもしたら...想像するだけでもぞっとする。
だから、練習の際は水魔法や風魔法なんかを使っている。
そんで、仕方がないから炎魔法の練習は...たまにある王国の外へ出向く授業の時なんかにコッソリやっている。
というわけで、入学して以来...
ここでは、魔力を思いのままに操るための訓練をしている。
まぁ、瞑想をして集中力を高めて...
さらに、使いたい魔法のイメージを膨らませて魔力を具現化する。
こうやって図書館の近くでやるときは、魔力を水に変化させたり、風に変化させて強風を吹かせたりなどなど。
工程はそれほど難しいものじゃない。
身につけるのは大変だが。 実際、半年強訓練をしてきたが自分の思うとおりには魔法が使えていないしな。 呪文を唱えれば簡単にはなるが、それだと実戦向きではない。
というのも通常だったら、魔法を使う際にはその魔法に関連した呪文なんかをあらかじめ作っておいて魔力の具現化を補助したりするが...
練習通りにいつも魔法を使えるようになれば、無詠唱で...つまり、早い装填時間で魔法を放つことが出来る。
これも父に教わったものだ。
訓練の方法は、自分なりに改良したりはしたけど...それでもやっているうちに確実に力がついているのは実感出来る。
さ、今日も気合い入れてやっていこう。
──────────
レオンが鍛錬をしているとき、学院の校舎にて。
「今回は、ケメリカ剣術学院に来ていただいてありがとうございます───勇者アイリーン様。」
白髪を伸ばした、ケメリカ剣術学院の校長が向く方には...
茶髪を肩ほどまで伸ばした、薄く灰色がかった目をもつ、スラッとした女性が立っていた。
腰には、金色の柄から銀色の剣身まで何やら模様が描かれた立派な剣を差している。
「いや、気にすることじゃない。勇者としていつかは魔王討伐へ赴かねばならない。未来の仲間にふさわしい剣士がいるか様子を見に来ただけだ。」
勇者と、そう呼ばれた女性は堂々と言い放つ。
そして、校長の案内のもと、稽古場やその他...様々な場所を見て回っていたのだが...
(...っ!?なんだ、この異様なほどの魔力)
図書館近くを通りがかったところ、勇者アイリーンは空気に何か違和感を覚えた。
ここだけ、他の場所とは異なり空気が激しく揺れている。
(違う、空気が揺れているんじゃない。空気中の魔力が大量に使われて───)
答えが出たような、そんな感覚に陥りかけたが、それでも何やら胸騒ぎは収まらない。
(そうだ、おかしい。空気中の魔力を使うような魔道士がここにいるはずがない。
ここは剣術学院だぞ! そんな卓越した技量があるのなら、魔導学院に入学しているはず...)
しかも、魔導学院全体で考えても一人いるかの天才...
そんなあまりにも異様すぎる存在に、勇者アイリーンは恐怖と吐き気すらも覚える。
そして、慌てて
「今回はこのぐらいにしておこう。 すまない、ケメリカ王との謁見が控えているのでな。」
と、校長に告げる。
「あぁ、そうでしたか。それでしたら校門まで送りましょう。」
「い、いや、その必要はない。 もう戻ってくれ。」
「そうですか...では、失礼します。」
校長は、少し残念そうに肩を落としながら校舎の方へと戻っていく。
そして、校長が角を曲がって姿が見えなくなった直後...
もうその場に勇者の姿はなかった。
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