女勇者との婚約を破棄したら、追われることになりました。

第1話

最近、不思議な夢を見ることが増えた。

真っ黒に塗りつぶされた世界で、知らない誰かが俺に手を伸ばす。

その人の顔は、闇に覆われて...それだけしかなかった。


これが一度だけなら、印象にも残らず記憶からすぐに消えるのだろうが。

もういつからか...それすら記憶にないぐらい、ずっと同じ夢を見ている。



──────────────────

俺は、ケメリカ剣術学院に通う一年生。

レオンハルトだ。友人からはレオン、なんて呼ばれたりしている。


「よ、レオン! おはよう!」

「お、おう...セドリック、おはよう」


朝から元気すぎるこいつは、友人のセドリック。

なんだかんだ、剣術学院では同じクラスだし入学式の翌日ぐらいからは仲良くなっていた。

まぁ、こいつが元気なのは...もう一つ理由があるが。


「なぁ、レオンも剣術大会出てくれよー!」

「...えぇ?」

そう、これ。


実は、剣術学院があるケメリカ王国では年に一度、国中の剣士を集めた大規模な剣術大会が行われるのだ。

そして、セドリックは大会に出るのだが...俺が出場に渋っているのを見ては、こうして誘ってくる。こいつは余程、剣で闘うのが好きらしい。


「ま、出場するための書類提出の期限まではまだあるし、この話は置いておいて。」


セドリックは、急に顔色を変えて話し始める。

俺は一瞬、真面目な話か...と少し緊張してしまったが...


「今回の男子の部の優勝者はなんと...勇者との結婚が待ってるんだぜ!!」

「はぁ...また、その話か。緊張して損した。」

「え? 他の奴らから聞いたのか?」

「...というか、みんな大声で話してるからな。そりゃ嫌でも耳に入ってくる。」


昼食の時間なんて酷いもんだからな。

どこに行っても、みんなその話ばかり。 

しかも、男子だけがそういう話題に食いつくわけでは決してなく、男女関係なく騒ぎまくっている。


「で、レオン。出場するか?」

さっき、あんな風に言ってたのに。

一分も持たず持ち上げ直したな。


「...そうだなぁ」


結局のところ、俺たち学生よりも経験を積んだ剣士たちが多く出るわけだ。

優勝なんて目指しても届かないだろう。

それでも、今後につながるものにはなるか。

それに、今の自分の立ち位置を知れるいい機会だもんな。


「わかった、参加する」

「え? 急に素直になった...まさか!」

「いや、断じて違うからなっ!」


セドリック、絶対勇者目当てだと勘違いしてるよな!


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