第2話 帰るの街。

「ここが、新人冒険者にお勧めの。

 冒険者がクエストから無事に帰れると言われているカエレルの街——。

 私の冒険も、ここから始まるのね」


 そう意気込むエルフの少女は——名前を【エリアル】と言い。

 今日から——彼女の冒険者としての新たな生活がスタートする。


「治安も良さそうな平和な街で、安心したわ」


 そう独り言を語った矢先……


「冒険者様——助けて下さい。火事です!     

 しかも、家の中に子供が1人取り残されています——ッ!」


「それは、一大事ね。案内してちょうだい——私が助けるわ」


 そして、エリアルは子供を助け出す為に燃え盛る建物へと飛び込んで行った。



「……ゲホッ……ゲホッ……子供は……子供は、何処?」


「…………だれか……たすけて……」


 エリアルが声の方に目線を向けると——そこには、燃えて崩れた瓦礫の下敷きになった少女の姿が——ッ!


「待ってて、今助けるから!!!」


 エリアルは、急いで少女の上の瓦礫をどかすと傷と火傷を負った少女を抱き抱えた。

 しかし、助け出した。少女の息は、酷く弱く……


「急いで、この場から助け出さない脱出しないと助からない……」


 しかし、エリアルが入って来た時より炎は強くなり——水魔法でも使わない限り。脱出する事は困難だと思うほど、炎は激しさを増していた。


「私……雷魔法しか使えない。どうしよう……」


(水魔法が使えれば、消化しながら——この炎の中を駆け抜けて行けるのに……こんな時は、どうすれば!?)


 そんな事を考えていると、炎の中から人影が近づいてくるのが分かった。


「助けて——私、水魔法が使えないの!」


「大丈夫か!? 俺は、水魔法が使える。心配するな——すぐに助けに行くゲコ」


(私が入って来た時より——炎の勢いは強くなっている。

 その中を助けに来るなんて、なんて勇敢な人……きっと、王子様みたいに素敵な人よ)


 エリアルは、少女の夢であるピンチに現れる王子様を想像する。


 しかし、炎の中から姿を現したのは……全身、緑色のカエルのモンスターだった。


「えっ……!? カエル? こんなにピンチにモンスター……が現れた……最悪!」


「助けに来た。君達、もう大丈夫だ! 早くここから脱出をしよう」


 エリアルは、とっさに剣を構えた。


「いやッ……ちょっと待て——助けに来たんだ!

 僕は、悪いカエルじゃないゲコよ」


「そのセリフを言って良いのは、スライムだけな」


「いや、本当に助けに来たんだって……

 だから、俺を信じて剣を下ろしてくれゲコ」

 

 エリアルは、カエルのモンスターの目をジッと直視する。

 沈黙する二人……そして——


「モンスターなんか、信用出来ない」


「ちょっと、待ってくれ。時間が無い——本当に時間が無いから……

(今は、彼女を説得する事だけを考えろ。考えるんだ……話しながらでいい。思考を止めるな!)

 なら、このバッチを見てくれ——ッ! 

 このバッチは、ギルドが俺だけの為に発行してくれた。

特別な冒険者認定バッチだ。これで、俺が悪いモンスターじゃないと分かっただろ!」


「私、今日、初めて——この街に来たから知らない……」


なにぃぃゲコぉぉー……」


 すると、煙が強くなり。助けた少女が苦しそうに咳をし出した。


「大丈夫……お姉さんが今助けるから……ゲホッ……ゲホ……」


「大丈夫……君達は、俺が助けるから……ゲコッ……ゲコ……ッ」


「ふざけてるの? 斬るわよ!」


「すまん…すまん……ゲコ。

 和ませようと思って……」


「邪魔だから何処かに行って、モンスターなんかの相手をしている場合じゃないの——」


「でも、君——水魔法が使えないんだろ……?

 俺は、君の使えない。水魔法が使えるゲコよ!」


 そう言って、少し微笑むカエルを見てエリアルは……


「……なに……? マウント? 切るわよ」


「違う違う。君達をここから脱出させたいだけだ。ここから君達を助け出せるのは、俺だけゲコー! だから、信じろゲコー!」


「ふざけているのか……真剣なのか分からない頼み方ね……

 でも、分かったは——これだけ必死に頼まれたら、少しくらい信じてあげないと可哀想だものね。

 でも、変な事をしたら——すぐに叩き斬るから覚えておきなさい!」


「分かっているゲコ! では、これを……」


「えっ!? 何これ……」


 ドロドロドロドロ……


 そう言って、カエルは口から体液を分泌すると少女とエリアルにぶっかけた。


「オェえぇぇえー……気持ち悪いぃぃ

臭いーー!!! めちゃくちゃ臭い……

 あんた何してんのよ!?」


「俺の体液を分泌して、お前らをコーティングしたゲコ!」


「何で、そんな事をしてんのよ——気持ち悪いッ!!!

 変な事をしたら、叩き斬るって言ったわよねーー!!! 覚悟しなさい」


「いやッ……待て待て——俺の分泌液は、炎を通さない。

 だから、そのまま外に脱出をするぞ!!!」


「ふざけんじゃないわよ! 

 女の子を——こんなにヌルヌルして、この変態ガエル——ただじゃ置かないわ!」


 そして、エルフの少女は剣を振り上げるとカエルに襲いかかった。

 カエルは、その行動を見るや一目散に退散して行った。


「待ちなさい——ッ! この変態モンスター!!!」


 すると、少女を抱えたエルフは炎に巻かれてしまった。


「キャッァ……熱……くない……。

 アイツの粘液が炎を通さないって、本当だったの。しかも、炎の中なのに息も出来るし……苦しくもない……」


「それは、俺の分泌液の中に大量の酸素が含まれていて皮膚から酸素を吸収しているから苦しくないのさ。

 いわゆる皮膚呼吸ってやつだゲコ」


「気持ち悪いッ! 殺す!!!」


「うわぁ〜……」


 エリアルが怒ると、カエルは説明をやめて一目散に逃げ出す。

 しかし、エリアルは——カエルのモンスターを追いかける事で、無事に外に出る事が出来た。

 そして、外に出た三人は——外で待っていた人達に讃えられた。


「女の子を抱えて冒険者様が出て来たぞーーー!!!」


「おお〜!!! ありがとう。ありがとうございます。冒険者様——ッ」


「貴方は、女性なのに本当に勇気があるわ。

 さぞランクの高い冒険者様なのでしょう」


「いえ、私は——この街に来たばかりで……

 実は、まだ冒険者ではないのです」


「これは、なんと……まだ冒険者でも無いのに、あの炎の中から女の子を無傷で救出するとは……

 君は、きっと素晴らしい冒険者になれるよ。私達が保証する」


「無傷……? 

 この子、ひどい火傷を負っていたはずだけど……」


「俺の分泌液には、火傷に効くアロエ成分が配合されているゲコ。

 だから、火傷の傷なんて一瞬で治してしまう。

 そんな俺は、カエル勇者!

 あの火事の中から3人無事に帰るカエル

カエルだけに——」


 すると、街の人達が……


「また、お前か……

 邪魔だから、あっちに行け——ッ! この嫌われモンスター!!!」


 カエル勇者は、この街の人に嫌われていた。


「なんだか——彼女達が、濡れていると思ったら。また、お前の仕業か!?」


「気持ち悪いんだよ。カエル野郎——!」


 カエルに対して怒号が飛び交う中、エリアルがカエルに話しかける。


「あなたって、カエルって名前なの?」


「ふッ……君達に、名乗る名前など持ち合わせて居ないぜゲコ!

 ヒーローは、名前を告げづに立ち去るものさ……」


 そう言って、カエルはその場を立ち去った。



「いや〜本当に、ありがとう。エルフの冒険者様——」


「いや、彼も一緒に助けに来てくれたのですけど……」


「アイツは、良いんだよ。

 いつも、しゃしゃり出て来て——余計な事をするんだ。

 本当に気持ち悪い! カエルだよ」


「本当に、気持ち悪い……」


「ギルドも何で、あんな奴を野放しにしておくのか……気がしれないよ」


「いや、でも……

 この子の傷も彼の粘液で、治ったんですよ。確かに、見た目は気持ちは悪いけど……

 案外、悪い奴では無いのかも」


「いや、あんな奴——庇わなくても良いんだよ」


「君は、本当に寛大な人格者のようだね」


「いや、そんな事は……」


(街の人達は、カエルの彼を放っておけと言ったけど…….

 でも、この女の子が無事に助かったのは——紛れもなく、彼のお陰……ちゃんとお礼を言わなくては)


「その子は、こっちで預かるよ」


「君は、冒険者になるんだろ。

 だったら急いで冒険者ギルドに行った方がいい。

 この街に、君みたいな冒険者が来てくれた事に感謝するよ!」


「いえ……私は……」


 エリアルは、街の人達に——そう言って急かされたので……お辞儀をすると、冒険者ギルドを探す前に——さっきのカエルを探しに向かった。



「本当に……あのカエル——何処に行ったのかしら……。

 こっちも冒険者ギルドに行くしかないから、忙しいのよ。

 でも、あのカエル——冒険者って、言ってたし。

 せっかくだから、一緒にギルドに来て貰って紹介してもらえば、手間が省けるんだけど……」


 そんな事を思いながら、エリアルが歩いていると——さっきのカエルを見つける事が出来た。

 エリアルが見つけた。彼は、今……

 テラスのあるレストランでフランスパンにレタスとハムを挟んだサンドイッチで優雅に朝食をとっていた。


「あのヤロ〜……。

 こっちが必死で探していたのに、優雅にサンドイッチなんか食べやがって——ッ!」


 そして、エリアルが話しかけようと近づくと……

 カエルのサンドイッチには、ハエがたかってしまった。

 すると、カエルの顔からは笑みが消えて

真剣な顔になった。


「何!? ハエに、怒っているの???

それとも……」


 すると、カエルは舌を目にも留まらぬ速さで動かすとハエを食べてしまった。


「うわッ! 虫食べた! キィぃもぉ!!!」


 そして、虫を食べたカエルは何とも言えぬ幸福そうな顔をしていた。


「ちょっと、あんた——ッ! 気持ち悪いのよ」


「えっ!? 何? さっきのエルフか……なんか用か?」


「何で、サンドイッチがあるのにハエなんか食べているのよ。本当に気持ち悪いわねッ!」


「別に人の勝手だろ。

 本能には、逆らえないって事だゲコ……

 そんな事より。さっきのお礼なら気にするなゲコ。別に、たいした事じゃないゲコよ。

 それとも、ただ文句を言いに来たのか?」


「いやッ、確かに、そうなのよね……。

 実は、さっきのお礼を言おうと思って——あんたを探してたら。あんたがハエを食べる所に出会して——気持ち悪くて、つい……」


「なぁ〜……エルフの女」


「私は、エルフの女じゃないわよ。

 エリアルって、名前があるの。ちゃんと、覚えておきなさい!」


「そうか、それは——すまなかった。

エリアル……」


「何よ?」


「このサンドイッチ半分食べてくれない?

 お腹いっぱいに、なっちゃった……」


「なっちゃった……。じゃないわよ!

 ハエなんか食べてるからお腹いっぱいに、なっちゃうんでしょ。

 そんな事より。ハエを食べた口がついた物を食べるなんて——ぜぇぇぇぇったいにぃ、嫌よ! 気持ち悪い——ッ!!!」


「ええ〜……でも、もったいないから……」


「知らないわよ! 残しなさい——」


「実は、残すと怒るんだよ。

 ここの店の人が……」


「なら、貸して! あそこの野良犬にでもあげてくるわ……」


 そうして、エリアルがガリガリの野良犬にサンドイッチを与えると

 カエルの分泌液が付いていたせいか……

 お腹をすかしたガリガリの野良犬でも、食べなかった。


「…………」


 そして、エリアルは——カエルの元へ戻ると


「ダメね。食べなかったわ!」


「ええ〜……じゃー責任持って食べてよ」


「…………何で、あんなにガリガリの野良犬が食べなかった物を私が食べるしかないのよ——ッ!!!」


 そして、エリアルは手に持っていたサンドイッチをカエルの口へと突っ込んだ!!!


「テメーで食え死ね!!!」


 そして、カエルの唾液でベタベタになった手を拭きながらエリアルは、カエルの前の席に座ると……


「あなたって、冒険者なのよね?」


「君に、エリアルと言う名前がある様に

俺にだって……『分かったッ! 名前を教えて——』」


「俺の名は——

フロックレングス・ロイドフォージャーダークネスアイシングサンダーボルト・ロッキングダイナミックバースト……」


「フロックね。分かったわ!

 それで、フロック——あなた冒険者よね?」


「いかにも、俺は魔物でありながら特別な権利を与えられた。冒険者! その名も……『分かったから……』」


「ふんッ……エリアル——お前が言うように、俺様は冒険者だが、それが何だって言うんだ?

 もしかして、お前……俺の仲間になりたいのか!? 

 ならば、断る。お前みたいなチンチクリン仲間にする気は無いケロ」


「私だって、あんたみたいなチンチクリンの仲間には死んでもなりたく無いわよ。

 もう、余計な事は良いから冒険者ギルドを紹介してちょうだい」


「俺様が、チンチクリンだと——ッ!

 そして、それが人に物を頼む態度かーーッ!   

 エリアルよ!!!」


「そうね……でも、あんたこそ。

 テーブルに、足を乗せるのをやめなさい。行儀が悪いし、店の人に怒られるわよ」


「ふッ——黙れ! 小娘が——ッ」


 すると、店の人が掃除の為——現れると、フロックはモップで殴られた。


「このカエルが、次やったら出禁にするわよ——!」


「すいません……ゲコ」


 フロックは、何故か素直に謝った。

 すると、店の人がエリアルに声をかけて来た。


「エルフのお嬢さんは、こんなカエルに何か用でもあるのかい?」


「実は、私——冒険者になる為に、この街に来たばかりで……だから、このカエルに冒険者ギルドを紹介して貰おうと思いまして、話をしていただけです」


「あんた冒険者になるのかい? 女の子なのに凄いね。

 カエル——だったら早く案内してやりな。

 さもないと、この店を出禁にするよ!」


「はい——ッ。ただいま、お連れしようと思っていた所です!」


「なんか、私の時と態度違うわね……」


 そうして、お店の人の好意により。2人で冒険者ギルドに向かう事になった。

 しかし、冒険者ギルドに着くまでの間……フロックは、ずっと文句をブツブツと言っていた。


「……何で、俺様がペーペーのお嬢ちゃんを冒険者ギルドまで案内しないと行けないんだ。

 これでも、俺はBランク+の冒険者だぞ……気安く命令するんじゃねぇ……」


「ねぇ〜、フロック。あんたってBランクの冒険者だったの? それって、結構凄いじゃないの?」


「うるせ〜黙ってついて来い!」


 そんな事を話しながら歩いていると、冒険者ギルドについた。


「ここが、冒険者ギルドだ! さっさと入れ——ッ!」


 そう言われて冒険者ギルドの中に入った。エリアルの目に飛び込んで来たものは、沢山のテーブルと椅子と混雑する人達に——それに、圧倒されるエリアル……


「冒険者ギルドって、凄い人の数ね……

 今日は、何か特別な日なの?」


「あっ? いつも、こんな感じだぞ」


「そう……。

 冒険者登録は、何処ですればいいの?」


「正面の受付に、話せば登録してくれる。

 勝手に行って来いゲコ。

 エリアル——一つ言っておくが、そう簡単に冒険者になれると思うなよ!」


「……どう言う意味……? 冒険者になる為の試練でもあるの?」


「そんな生優しい物ではない。覚悟しておけ……」


 そんな話されたので、少しビビりながら進むと……エリアルとフロックが、カウンターに着くまでに沢山の冒険者達がフロックに話しかけて来た。


「おいッ! カエル——テーブルが汚れてるから拭いておけ!」


「ただいま、ふかせて頂きます……」


「カエル——ッ。こっちに酒を運んで来い!」


「ただいま、お持ちいたします……」


「ねぇ〜……何してんのよ!?

 フロック、早く案内してよ」


「うるせ〜ッ! 見て分からねーのか!? バカ女。俺は、今——忙しいんだ。

 自分で、勝手に行って登録して来い!」


「突然、何なのあんた……?」


 そう言われて、エリアルは1人でカウンターの受付へと向かった。

 そして、エリアルが近づくと……中にいる綺麗な女性が話をかけて来た。


「私は、冒険者ギルドで受付をさせて頂いております! リサと言います。

 本日は、どうなさいましたか?」


「あの、冒険者登録をしたいのですが……」


「冒険者登録ですね。かしこまりました!」


 そして、エリアルの冒険者登録がテキパキと勧められて行った。


「種族は、エルフで……雷魔法が使えると……これで、登録は完了です。

 このギルドカードが身分証となりますから、無くさないでください。

 初めは、Fランクからスタートですね。

 クエストをクリアすると、ランクが上がって行きます。

 他に、聞きたい事などはありますか?」


「えっ……もう、登録完了したんですか?」


「ええ……ギルドカードを発行するだけですから、そんなに時間は掛かりませんよ」


「そうなのですね……」


 なら、なんで……? あのカエルは、あんな意味深な事を言ったのだろう……

 すると、エリアルは気になったので一つ質問をしてみる事にした。


「あの〜……フロック、いや——ッ!

 あのカエルは、冒険者ギルドでは——どういった立場になるのですか?」


「ああ、フロックさんですね。

 彼は、色々と特別です!」


「色々とは?」


「凄腕の冒険者って事は、間違い無いのですが……なんせモンスターですから苦労なされているのですよ。

 まぁ、彼の使い道は——そこではないので」


「はぁ〜…………」


「でも、悪いモンスターではないですよ。

 私が保証します!」


「もう一つ聞いて良いですか?

 何故、彼はギルドの方達にペコペコしているのですか?

 私といる時は、かなり横柄な態度を取るのですが……」


「ああ……それは、ギルドの人と言うよりは

人間にですね。

何でも、オタマジャクシの時に人間の子供に虐められたとかで、人間恐怖症で人間が苦手と聞いております」


 それで、性格があんなに捻じ曲がったのね……納得したわ。


「噂をすれば、来ましたよ。フロックさんが……」


「……どうも、いつもお世話になっております——ッ!」


「こんにちは、フロックさん。

 無事に、エリアルさんの冒険者登録——完了しましたよ」


「それは、それは、忙しい中……誠に大変ありがとうございます!」


「それで、今日のクエストは何になされますか?」


「いつも通り、余ったクエストをお願い致します——ッ」


「……ならば、エリアルさんの教育係なんてクエストはどうでしょう?」


「えっ!? この女の教育係……嫌です!」


「新人冒険者には、親切にしないと行けませんよ。フロックさん……」


「はい。喜んで、やらせて頂きます!」


「わぁ〜ありがとうございます!」


「あの〜勝手に、話進めてますけど……私の意見は聞かないのですか?」


「ああ、フロックさんに新人冒険者の初クエストの護衛を頼むのは、いつもの事なのです。

 もし、お邪魔でしたら影ならが護衛をさせますが……どうなさいますか?」


「どうせくるなら、一緒でいいです……」


 そうして、2人でエリアルの初クエストに向かう事になった。


「最初のクエストは、森の中の薬草採取ね。

 こんな簡単なクエストに護衛なんて必要ないのに……」


「バカだなチンチクリンのエルフの女よ。

 この俺様が教えてやる。この森は、危険な魔物が沢山生息しているんだ! 

 薬草採取だからって、舐めてかかると——お前みたいなチンチクリン女は怪我をするぞ!」


「そうなのね。分かったわ! だから、護衛を……ね……。

 所で、フロック––––あんた、人間は怖いのに、エルフの私は——怖くないの?」


「何言ってんだ? お前……

 何で、人間が苦手だからってエルフも苦手になるんだ?」


「いやッ! だって、見た目だって——そんなに変わらないでしょ!? 私達……」


「いや、変わるだろ。耳とか長いし……」


「いやいや、耳くらいでしょ?

 人間とそんなに変わらないと思うんだけどなぁ〜……」


「いや、俺の恐怖は体の奥底から湧き上がってくるものだ! この感覚は、説明出来ない。

 それに、勘違いするな! 俺は人間が苦手だが本当に恐怖しているのは、リサ……いや、人間子供だ……」


「……ああ、だから火事の時の女の子を私に抱かせていたのね。なるほどね〜……」


 すると、森の奥から悲鳴が聞こえて来た。


「きゃーー〜!!! 誰か助けてー!!!」


 それを聞いたフロックの顔が、一瞬鋭くなると……


「行くぞ! エリアル——ッ」


 一瞬で、加速をして悲鳴の方に向かうフロックは、エリアルを置いて行った。


「ちょっと、待って——!!!」


 フロックは、移動のために——舌を伸ばし。

 その収縮により森を自由自在に飛び回る姿は……

 まるで、調査兵団のリヴ○イ兵士長の姿と重なった……。


「早い——。森を何て自由に飛ぶの……」


 そして、エリアルが追いついた時にはフロックは、リーゼントベアーと睨み合っていた。

 周りには、さっき悲鳴を上げたであろう冒険者達が血だらけで倒れていた。

 その姿を見てエリアルは……


(この冒険者達は、もう助からない……)


 瞬時に、そう悟った。


 しかし、フロックは大量の分泌液を吐き出すと——その液体で冒険者達を覆った。

 その姿は、まるで——巨大なスライムに飲み込まれた人のように、エリアルの目には、その様に映っていた。

 そして、液体の中に閉じ込められた冒険者達は呼吸が出来ないのか、液体の中でもがき苦しんでいたが……すぐに白目をむいて、ピクリとも動かなくなった。


「……えっ!? 死んだ……? これ、大丈夫なの? フロック——これ、大丈夫なのよね!?

 この液体で死んだら、あんたが殺した事になるわよ!」


「大丈夫だよ。普通に

 てか、これって——有名な治療方法じゃないの?」


「私は、知らないわよ。こんな治療方法——」


「えっ!? ドラゴンボ○ルのサイ○人が、こんな感じで——液体の中で傷を治していたじゃないか!?」


「何それ!? 私は、知らないわよ!」


「超、有名だよ!」


「私は知らないって、いってるでしょ!!!

 これ以上は、やめて! その話……私は、関係ないからね!」


「オッケー! なら、リーゼントベアーに全集中するよ」


「……勝てるの? フロック」


「やってみなきゃ……分からない」


 何せ、リーゼントベアーは——とても気性の荒い魔物で仲間同士でも目が合っただけで喧嘩になってしまうくらい、獰猛な魔物である。

 そんなリーゼントベアーに対抗するために、フロックは——初めメンチを切った。


「……何してんの? フロック……」


「今、大事ところだから話しかけないで……」


 そして、その沈黙に耐えきれなくなったリーゼントベアーがフロックに襲いかかった。

 リーゼントベアーの鋭い爪が、フロックを襲う……。

 フロックをリーゼントベアーの爪が襲うと……フロックの体は、見るも無惨な姿に変えられてしまった。


「フロック——ッ!!!」


 すると、リーゼントベアーの背後に現れたフロックが……


「それは残像だ!!!」


「凄い……フロック——あの攻撃を躱したの

!?」


 そして、エリアルの隣へと飛んで来たフロックの脇腹は、大きく裂けていて……そこからは、大量の出血が流れていた。


「えッ……くらったの?」


「少し、かすった……グハッ…………後は、頼んだ。エリアル……」


「私には、あんなモンスター無理よ」


「心配するな!

 俺の硬質化の粘液で、あいつの手足は——もう動かない……」


「それなら……。

 でも、アイツなんだか手足をぺろぺろ舐めて、普通に歩いているわよ!?」


「…………くそぉおぉー!!! 硬質化と甘い蜜の粘液を間違えた——ッ」


「何してんのよ! あんた——」


「すまーーーン!」


「もういい……。だったら、私の有りったけの魔力をぶち込んでやるわ!

 喰らえぇぇーー! サンダーボルト!!!」


バリバリバリバリバリバリバリバリバリッ……


「グガァアァァアーーーー!!!」


 リーゼントベアーは、悲鳴を上げると——煙を上げて地面に倒れた。


 すると、自分で傷を癒したフロックが拍手をしながらエリアルに近づいて来た。


パチ…パチ…パチ…パチッ……


「合格だ! エリアル」


「何……私は、何かを試されていたの?」


「いや、別に……意味深な雰囲気を醸し出してみただけだ」


「いらない。そう言うの……」


「まぁ、良かった良かった。

 と言う訳で、一旦、街に戻るか——コイツらの事も運ばないと行けないし」


「そうだけど……

 でも、この人数どうやって運ぶの?」


「フフフフフフッ……こうやって、運ぶのさ」


 すると、フロックは冒険者達を丸呑みし始めた。


「グロ……何してるの!? 人間なんて、食べちゃダメよ!!!」


「ああ……これは、いったん胃袋に……入れて……る……だけだ…………街に着いたら、ちゃんと、吐き出す……」


「本当に、大丈夫なのよね……」


 そうして、疑いの目を向けるエリアルとブクブクに太ったフロックが街に戻った。

 そして、フロックは冒険者ギルドの前で冒険者達を吐き出すと水魔法を使い綺麗に洗った。


「ねぇ……水魔法を指先から出すのは、分かるんだけど——何で、ピストルみたいにした手を股間に持っていくの?

 水をかけられてる方は、不愉快よ……」


「これは、強烈な放水にも負けない体勢で——水圧で飛ばされない様に、力を入れて構えてるだけだ。

 格好なんて、なんてどうでもいいだろ!」


 すると、綺麗に洗われた冒険者達が目を覚ました。


「うわぁ——ッ! 汚い! テメー何しやがる——ッ!!!」


「最悪……もう、お嫁に行けない……」


「何で——ッ! お前は、いつも冒険者や街の人達に嫌がらせをするんだ!!!」


 冒険者達が怒っているにも関わらずフロックは、まだ——股間からの放水を出し続ける。

 そして、怒る冒険者達をエリアルが宥める……


「あなた達も助けられたのだから。少しくらいは、感謝してもいいのよ……」


「何言ってるんだ? お前……

 俺達は、こんな奴に助けなんて頼んでない——ッ」


(まぁ、確かに——フロックに助けを求めた訳では無いけど、彼が助けなかったら。この人達は間違いなく死んでいたのに、感謝の一つもないの?)


「あなた達……」


「もういい……行こうぜ」


 そして、冒険者達は去っていった。


「ねぇ〜……あんたも、もう少し助けた事をちゃんと説明した方が良いわよ」


「何で?」


「何で? って……

 だって、せっかく助けたのに——あの態度は、ちょっと無いと思うゎ」


「何で? 別に、俺は感謝して貰う為に助けてる訳じゃないし」


「なら、感謝もされないのに何で助けるのよ」


「それは……困ってる人を助けるのに理由なんているのか?」


「……でも、そんなのって……悲しすぎるじゃない」


「俺は、勇者だ! 勇者は、皆んなを守る」


「魔物なのに、勇者……?」


「ああ、そんな事は——どうでもいいから。

 お前の初クエストの報告に行こうケロ……」


 すると、今朝助けた女の子が走って来た。


「あれ! 君は……」


「お姉ちゃん……助けてくれて、ありがとう!」


 少女は、ペコリと頭を下げるとエリアルにお礼を言った。


「元気になって良かった。でもね、あなたを助けたのは、お姉さんだけじゃないのよ。

 このカエルさんも一緒に、あなたを助けたの。あなたの傷を治したのも、カエルさんなのよ」


「そうだったんだ……

 カエルさんも、ありがとう!」


 少女に、そう言われたフロックは——とても嬉しそうに微笑んでいた。


「なんだ、興味がないとか言っても——結局、嬉しいんじゃない」


「ふんッ……俺も、勇者として——それ相応の対応をしないといけないからな……。

 どういたしまして、お嬢ちゃん」


 そう言って、フロックは少女の頭を撫でると……ベト〜〜……


「……えっ………なんか、ドロドロする……

せっかくママが結んでくれた髪が……

うわぁあぁぁーーー……」


 頭に、ベトベトの体液がついた少女は——泣き出してしまった。


「これは、まずい事した。

 待っていろ。今、洗い流してやる!」


「ちょっ……やめなさい……」


 すると、フロックは——ピストルの形にした手を股間に持っていくと……少女を洗い流した。

 すると、少女は……


「…………カエルさんが、オシッコかけて来たーーー!!! うぇぇえぇぇぇーーーん」


 少女は、もっと泣き出した。


 すると、騒ぎを聞きつけて来た大人達が——フロックをボコボコした。


「なんで……俺は、俺はーー!!!」


「あんた……余計な事しない方が良いわよ」

_________________________________________

あとがき


とりあえず、一話書き終えたので投稿します!


私は、ずっと突拍子もない主人公を考えていました。


人→スライム→蜘蛛→おじさん→剣→自動販売機、ゴブリン、その他……


そして、次はカエルです。


キモさとカッコよさを持った!

私の中では、最高の主人公を見つけたつもりです。✌︎('ω')✌︎

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