史上最悪の魔王の転生先は自分を倒した勇者でした。

傘ヲ

第1章 魔王の転生編

第1話 魔王と勇者


―魔王城―

「ついに追い詰めたぞ!魔王ベルゼブブ!」

(もうこれで終わりなのか?…配下も全員殺され、国は荒地になり、勇者と名乗る一行が俺の目の前まで迫って来ている。)

「俺がお前らに何をした?…」

「魔王め…自分の罪すら認識していないか!お前は我が国の王女、フィール様を誘拐し、陵辱し、無理矢理婚約させ、さらには洗脳して心まで打ち砕いた…こんな事が許されるか!」

「何を言っている…俺とフィールは愛し合っている!それに洗脳?何を言っている!」

「愛し合っているだと?…姫様がお前のようなやつを愛す訳がないだろう!さらに洗脳の事までしらを切るつもりか…姫様をお前の城から救出した時からずっと姫様はお前に会いたいとしか言わなくなった…それもお前の魔術の仕業だろう!」

「話し合っても無駄か…どうやら洗脳されているのはお前の方らしいがな」


俺の名前はベルゼブブ、史上初の10星級の大魔導士だ。俺は元々冒険者であり、困っている人は放っては置けない性格だった。だから様々な人を種族関係なく助けてきた。フィールもその1人だ。王族らしき者に無理矢理婚約を迫られている所を俺が助けた。そこで俺らは愛し合い結婚までした。


(その結果がこれか…)

「お前らは誰に頼まれてここに来た?」

「お前が奪ったフィール様の本当の夫になる予定の男だった、バーム王国第三王子、リクルム様だ…」

(やはりそいつか…)


それはフィールに無理矢理婚約を迫っていた男だった。どうやらどうしてもフィールが欲しかったのか俺を魔王に仕立て上げ勇者を向かわせた。


(まったく貴族という物は嘘のストーリーを作ることだけは上手い…)

「ここまで来たという事は俺の側近達は殺したのか?…」


勇者の仲間らしきやつらが誇らしげに話し出す。


「あぁ俺たちが全員殺した。」

(やはりそうか…)


戦士らしきやつが話す。


「あのミノタウロスはかなり強かったが、俺の前では手も足も出なかったぞ!」

「ゼクロスは死んだか…」


ゼクロスは人間に森を伐採され無理矢理縄張りを追い出されたミノタウロスの集落の1人だった。そこを俺が助け、あいつは俺を兄貴と呼んでとても慕ってくれていた。あのガタイでたまにお茶目なドジを踏むところが可愛らしかった。


次に杖を持った魔法使いの女が話す


「あのメドゥーサも中々の腕前だけど、私の魔法にかかれば余裕の相手だったわ!」

「ライムまで…」


ライムは目を見たら石化するなどと嘘の情報を人間に流され、迫害されて来たメドゥーサの女性だった。彼女は俺とフィールが少し喧嘩した時も優しく相談に乗ってくれ、女目線のいいアドバイスを教えてくれる心優しき俺の血のつながっていない姉のような存在だった。


最後に剣士の若い男が話す。


「あの細身のゴブリンもかなり苦戦したが俺の剣で一撃よ!」

「エレファまでもが…」


エレファは容姿が醜いという理由だけで鉱山を掘る仕事をかなり安い賃金で働かされる奴隷と化したゴブリンの青年だった。彼は俺と年も近くまさに親友と言える仲だった。彼が俺に誕生日に買ってくれた魔石のペンダントを俺は今も大切にしている。


その時、俺の頬に涙が流れた。


「魔王これが、お前が姫様にして来た事だ!自業自得だろうが!」


ドドドドドドドド…


「くっ何てオーラだ…これが魔王…」

(みんな、お前ら無念は必ず晴らす!)

「お前らの望み通り、俺は今から魔王になってやろう…さぁこい勇者共…」

「行くぞ!みんな!姫様の無念を晴らすぞ!」

「おぅ!!」


(俺の今まで極限に極めて来た魔術で殺してやる…)


「闇の炎ダーク・フレア…」

「ぎゃぁあああああああああ!!」


勇者は間一髪避けたようだが後ろの戦士と魔法使いには直撃し無様に焼き焦げた

「な…ルーシー…アンナ…嘘だろ…」


勇者の目に涙が浮かぶ。


「おいリーダー!しっかりしろ!まだ俺がいる!2人で魔王を倒すぞ!」

(この剣士は勇者に比べて落ち着きがあるな…一方勇者は力を手に入れた子供のようだ。)

「あぁ…必ず魔王を倒すぞ。」

(なら…まずは勇者の精神的支柱から壊していこう…)

「暗黒の槍デス・スピア…」


空から無数の黒き槍が降ってくる。


「リーダー!食い止めるぞ!」

「おぅ!…」


ドババババババッ


カキンッカキッカキンッ


「くそ!キリがねえ!リーダー!これは俺が食い止める!その隙に魔王を!」

(捨て身の攻撃か…)

「俺の攻撃がそんな簡単に食い止めれる訳が無いだろう…」

「リーダー!早く!、あっ…」


グチャッ!!


剣士は俺の攻撃を食い止めきれず、槍が直撃し、上半身が吹き飛んだ。


「あ、あぁ…」


ガシャン…


勇者は膝から崩れ落ちた。かなり仲間とは深い仲だったのだろう…だけどそれは俺も同じだ。お前らは俺の大切な仲間を楽しそうに殺したのだから。


「勇者…これが俺の気持ちだ。お前は俺の仲間を奪った。だから俺はその復讐をする。」


ドドドドドドドドッッッッ…


その時勇者の雰囲気が変わった。


「お前殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す。」

(さすが勇者と言われるだけある。凄まじいオーラだ。)

「あぁ、俺もお前を殺したい。」


それを聞いた瞬間、勇者は俺に飛びかかる。


「うあぁああああああ!!」

(早い!…)


ズサッッ!!!


「うぐぅ…」


勇者の一撃が俺の腹を切り裂く。


「は、はは、ははははは!ざまーみろ!」

(こいつ、完全に精神がイカれてやがるな…)


「ぶふぉ!」


吐血が止まらない。勇者の一撃のダメージが中々でかいようだ。


「なら…この1発で終わらせる…」

「あぁあぁ!早く殺してやるからな!待っとけよ!」


俺は最大火力の魔術をチャージする。勇者もトドメを刺すために渾身の一撃を放つ気だ。


(これで決まる…)

「勇者行くぞ…死の凶弾デス・ボンバー!」

「死に晒せッ!!!光の一閃ライトスラッシュ」


俺らの攻撃がぶつかる時、辺は光に包まれた。何か不思議な感覚だった。


光が晴れると俺は知らない場所にいた。


「何だ、ここ…天国か…?」

(あの世ならみんなに会いたいな…)


そう思い外に出た。辺は大きな湖と森に囲まれていた場所だった。


(いかにも天国って感じだな…)


俺は喉が渇き、湖の水を飲もうとした。


「は?何だこれ…」


水に反射した顔が俺とは別人だったのだ。それにその顔はよく知っている顔であった、


「これって俺を殺した勇者ザイロスの顔?…」

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