赤いサテンクロス

加賀倉 創作

第1部 不安富める乱闘~朱爺の非情な猛勢~

プロローグ『フィンランド宇宙軍─サンタ・デルタΔフォース─』

──フィンランド北部・ラップランド地方。


 中心都市ロヴァニエミ市の針葉樹モミの森には、聖夜に子供たちへ贈り物をすることで有名なサンタクロースが集まる村、"サンタクロース村"があった。このサンタクロース村についての、一般人には知られていない、隠された事実がある。それは……


「村全体が、フィンランド宇宙軍の本拠地である」

 ということである。


 その昔、フィンランド空軍は、太陽風の粒子に乗って磁気バリアの薄い北極圏へと降ってきた宇宙鹿トナカイを捕獲した。宇宙鹿トナカイには、反重力能力が備わっていたので、これを利用して、空飛ぶ雪車ソリ反重力雪車アンタイグラヴィティ・ソリが開発された。以来、サンタクロースが宇宙鹿トナカイ雪車ソリり、フィンランド領空を守るようになった。これが、フィンランド宇宙軍──空飛ぶ雪車ソリとサンタクロース──の起源である。


 フィンランド宇宙軍には、数万のサンタクロースが在籍し、数多くの飛行隊が存在するが、その中でも、抜きん出て戦闘力の高い強者つわものたちがいた。彼らの名は……


 サンタ・デルタΔフォース──通称〈三角Δロース〉──である。


 三角Δロースサンタ・デルタΔフォースは、文字通り、三角形編隊デルタヘンタイ飛行の雪車ソリに乗るサンタたちで、隊員は三人、少数精鋭である。ただでさえ少ないさんサンタなのだが……


 なんとうち一人が、去年、2023年のクリスマスに、行方不明になってしまった。


 聞くところによると、その日、夜空の漆黒しっこくよりも深い、闇の十字形の裂け目が観測されたそうだが、真相は闇に包まれている。そういうわけで、未だに三角Δロースサンタ・デルタΔフォースは二人である。



 そして2024年、冬。

 今年もフィンランドに、12月24日深夜クリスマスイブがやってきた!



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