何故か好きな幼馴染の母親とデートすることになった件
せかけ
第1話 幼馴染
「俺と付き合ってくれ!!」
「ごめんなさい。今は誰とも付き合うつもりないから」
愛らしいルックスに加え、どこか気高ささえ感じる気品がある。
その彼女の一挙手一投足に男子は釘付けになり、
告白するのだが──。
「そんなこと言わずに!俺、めちゃくちゃ真剣だからさー!!」
「…‥しつこい男は嫌い」
「そ、そんなぁぁぁぁー!!」
(またバッサリと振ったなぁ……)
ガクッと肩を落とす同級生を見て、
俺は苦笑いを浮かべる。でもこれは今日に限った話ではなく、日常茶飯事だ。
そして、彼女は面倒くさそうに、
こちらへ向かってきた。
「はぁ、疲れた。朝から最悪だった」
「おいおい、そんなこと言うなよ」
「だって、今の人、私の顔しか見てない」
「そんなのわかるもんなのか?」
「私のそばに居たらわかるはず。幼馴染なんだから」
……そう、実は俺と甘奈は幼馴染なのだ。
腐れ縁ってやつ。まぁだからなんだ
って話なんだが。
というか、女子って、鋭いのな。よく男が胸を見てる視線とか、女性は気付いてるとか聞いたことあるけど、実際どうなんだろうか。
ちょっと気になってきたな。
今度から気をつけよう。
「でもさ、甘奈って付き合ってる奴、いないんだよな?」
「だから何」
「いや、さっきの奴って確かバスケ部のエースだろ?この前もサッカー部のエースにも告白されてたし。全部振るの勿体なくないか?」
「む……それ本気で言ってる?」
彼女の頬が少し膨らむ。
「本気も本気。女子に恨まれても知らんぞ」
「あきれた……翔太って本当に女心がわかってない」
「あのなぁ、俺ほど女心に詳しい
紳士はそういないぞ? これまで何人のヒロインを攻略してきたと」
「ギャルゲーは理想。リアルじゃない」
「おい、ギャルゲーを馬鹿にすんなよ!女の子との接し方はギャルゲーから学べるって信じてんだぞ!」
「繰り返す。ギャルゲーは理想」
「2度も言うな!」
「翔太が言えって言った。それに──
翔太は何も分かってない」
「はぁ?なんか言ったか?」
「何も言ってない。翔太が童貞って放送部にリークしようかなって」
「大問題じゃねぇか!絶対やめろ!!」
何故か、不機嫌そうな彼女をなだめながら
俺のゴシップを必死に止めていると、
授業が始まるチャイムが鳴り、彼女は
ようやく席に戻って行った。
ほんと甘奈って何考えてるのか、未だにわかんないわ。わかってるのは──。
(俺は甘奈のことが好きだってことだ)
あーー。辛。昔から抱いていた恋心。
別の世界の人間だということは百も承知だ。
恐らく、幼馴染じゃなければ、
相手にもされてないだろう。
不釣り合いだとはわかっていながらも
消えない恋心は悪戯に
俺の心を刺激する。チラッと横目で、見ると
先ほどの男子は、落ち込みすぎて、
床と同化していた。
(はは……かわいそうに)
笑えねぇ。まるで、自分の未来を見ているみたいだ。俺も、こんな感じで、
こっぴどく振られるんだろうな。
「女心……ねぇ」
なんか言ってたな。さっき。
そういうのがわかれば、
俺も自信つくようになるのだろうか。
でも、どうやって学ぶんだ?
誰かに聞けば良いのか? でも、俺が気軽に話せる女子なんて
甘奈くらいだしな。
「はぁ……」
深いため息をつく。
それと同時になんとなく、甘奈が視界に入る。
甘奈はこちらに気付くと、ぷぃっと
無視した。
あいつ、めちゃくちゃ怒ってるじゃん。
ん……。というか、待てよ。
(相談できる人、いたなぁ……)
ちょっと心配だが、俺が相談できる女の人って言ったらあの人くらいだし……。
♢♢♢
「……という訳なんですけど。なんか甘奈怒っちゃってて、俺なんか悪いことしました?」
「こらこら、私はなんでも聞いてくれるバーのママじゃないのよー。
翔太くんはお家へ帰りなさーい」
「そんなこと言わずに、いつもみたいに俺の話聞いてくださいよ!」
「まったく翔太くんはー」
──俺が相談した相手は、
甘奈の母親だった。名前は、
おっとよそう。この前、怒られたばっかりだった。真由さんは、シングルマザーとしてバリバリ働いているらしく、それが若さの秘訣なのかもしれない。
「……とはいえ、あの子が不憫なのは間違いないわ。どうしたものかしら」
いつの間にか見惚れていたら、
何やらぶつぶつ言っている。
「なんか言いました?」
「いいえ、こっちの話よ」
「?」
「よしこうしましょう、翔太くーーーん!!」
子供みたいにグッと身を乗り出してきた真由さんに、思わずドキッとしてしまう。
「っっっな、なんすか急に!?」
「私とデートしてみない?」
「は?」
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