第11話 耕造が務める建築会社。
耕造が務める建築会社は、「要コーポレーション株式会社」と言った。
社長、笹川要一。要一の要を取ってこの社名にしたのだ。
この建築会社は、G県の北部に位置するS市にあった。
笹川社長が、30歳の時、建築会社を起業したのだ。
西暦2000年で創業10年目になる。
この建築会社の強みは、「エアムーブパネル」と言うものだ。
このパネルが、新築の家の外壁になる。
まずは、耕造と仲間が工場でやる作業。
設計図道理に、適当に、合板をカットする。
この合板を5㎝あけて、2枚重ね合わせ、ビスで止め、外壁パネルを、組み立てる。
大きいパネルからかなり難しいパネルまであった。
だいたい、2日間で、耕造たちは、工場内作業として、新築一軒当たり、40枚~60枚の全パネルを仕上げる。
完成した外壁パネルを梱包して、トラックで現地に運搬する。
現場では、大工さんたちが、あらかじめ家の骨組みを作っている。
そこに注文道理に、パネルを打ち付けていくのだ。
パネルが張られ、家の外壁ができる。
外壁パネルのその隙間の中に、夏は涼しい空気を機械で送り、冬は、暖かい空気を送る。このようなシステム建設の家が強みで、家を建設する。
室内保温度はいつも快適で心地よく保たれる。
それが売りの「要コーポレーション株式会社」だった。
完成した新築の家に、初めて足を踏み入れたお客さんは、
新築に木の香りと家の中の雰囲気の心地よさに、皆、驚く。
社長が、この家に住むことになる「家族」に、
「さぁ、こちらへ、どうぞ。ご覧ください。」
一部屋ずつ紹介をして、ひとつひとつ、どんなつくりで、どんな素材化を、説明をする。
再び家族と社長で、庭に出て、こんな完成した「エアムーブ住宅」を眺めた時、
全員が、一致で、満足するのであった。
夏の日差しが眩しい。
太陽の日差しに照り付けられると工場内の気温が一気に上昇し、社員は、ヘルメットをかぶり、汗だくになって、木材を加工して、機械と道具を使い、パネルを作る。
耕造も工場のその一人だ。
入社5年目となると、耕造の仕事も、上司や周りの人たちから認められる。
耕造は、下っ端の輩の面倒もよく見た。
またこの工場に出入りする大工さんたちとの信頼関係も厚くなってくる。
それにしても、最近、この工場は忙しい。ずっと残場が続いている。
平均帰宅時間は、夜の11時だ。昨日は、日付が変わった。
この不況の時代、この会社の営業社員が、かなり頑張って注文を取ってきているなと、耕造は、肌で感じていた。
小さな会社であるため休日は、日曜日と祝日だけだった。
そんな会社でも、
今週末の土曜日、仕事を定時で切り上げ、新入社員の由香の歓迎パーティーを催すこととなった。そんなアットホームなこの会社にはあった。
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