雨の日に会えるあなたに恋をした。

衿乃 光希

第1話 雨の君

 しとしとと、止む気配のない雨音が聴こえる。


 絹糸のような細い雨が、さらさらと幾筋も窓を伝っていく。


 窓の向こうはぼやけた世界。


 灰色の空と、アスファルトの色が混ざり、くすんでいる。


 私ははぁ~と、ため息を零す。


 窓ガラスがぽわんと白く曇り、慌てて拭う。


 遠くに淡い青色が見えた。


 ゆっくりと近づいてくる青に、私は目を凝らす。


 それはまるで大輪の紫陽花が咲いたようで。


 近づいてくるその季節外れの紫陽花に、


 私の胸はどきどきと高鳴った。




   次回⇒第2話 6月 退職

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る