ミッショション3 裏組織の実体を暴け

1 ヤッちゃんの引越し 温故知新屋の隠された設備

「皆の意識と精神が消滅することはなかよ。儂らはアバターをテレポートさせとるのを忘れんようにな・・・。

 さて、昼飯を作ろうぞ。今日は「鯛焼き大嶋屋」は休みじゃろうて?」


「ああ、休みだ。いろいろ有り過ぎだ。ゆっくり休む・・・」

 トモキは、温故知新屋に横付けした鯛焼きキッチンカーを見た。昼飯を食ったら、鯛焼きキッチンカーに戻って寝よう。疲れが酷えぞ・・・。


「その前に腹拵はらごしらえだ。昼飯にしようぜ。エネルギー不足だ!」

 ヒロシはデブ男に戻ったように空腹を訴えたが、以前のデブ男じゃない。引き締まった身体のヒロシのままだ。


「ああ、それと、ヤッちゃんは今日からここに住むようにな。

 母親と兄には話を付けてある。

 ヤッちゃんに無断で決めたが、許してくれ。家族と反りが合わんヤッちゃんを見てて、生まれた家で暮らすんが良かろうと思ったんじゃ。

 この通りじゃ・・・」

 大叔父さんはあたしに頭を下げた。


 あたしが産まれた時、大叔父さんは南米に居た。そして帰国した時、あたしは実の姉の母の元に居た。大叔父さんは自分の生家のここに住んで、その後、実の親の祖父ちゃんと祖母ちゃんが他界した。

 あたしは世間から、実の親の孫と思われた。実の叔父を大叔父さんと呼ぶようになった。

 育ての親も兄も現実的な人で、いつも現実離れしたアホを言ってるあたしとは反りが合わなかったのは事実だ。いずれ、育ての親や兄とは離れた方が良いと思ってあたしにとって、大叔父さんの話は願っても無い話だった。



「じゃあ、大叔父おじさんを叔父さんと呼ぶぞ。

 皆、大叔父さんが、叔父さんになったぞ。ああ、字を書かなけりゃ、オジサンだったな・・・」

 あたしの意識と心は、なんか動揺してた。意識と心の使い方が違うってか?


 自己意識領域は、意識、思考、心、霊、魂の順に無意識領域へ移行する。

 意識とは、自分の状況がはっきりわかる心の状態。思念がこれだ。 

 精神は、思考や感情の働きを司る人の心だ。精神空間思考、つまり精神波は、時空間転移伝播する。


『精神空間思考、つまり精神波は、時空間転移伝播する』

 これって祖母ちゃんの、つまり母さんがあたしに残した教えだ・・・。

 あたしはとんでもない事に気づいた。

 この言葉には、物質を消滅させるって、とんでもねえ意味があったんだ・・・。



「ヤッちゃんの荷物は兄が届ける事になっとる。

 いつでも家出できるように荷物をまとめておった、と聞いたが、本当か?」

 大叔父さんは冷蔵庫を開けて昼飯の仕度を始めた。ここはリビングと一続きの広いダイニングキッチンだ。リビングだのダイニングだの区切りは無い。


「ああ、そうだよ」 

 あたしらは座っていたテーブルの椅子から立った。叔父さんが冷蔵庫から出す食材をキッチンテーブルに並べた。

「ヤッちゃんが『いつでも家を出られるようにしとく』と言ったんは本当だったんか?」

 大叔父さんから野菜を受け取りながら、ヒロシが納得したような驚いたような顔になってる。まあ、叔父さんだけでなく、ヒロシとトモキにも家族の実態を話してあったから、トモキは納得してる。


 あたしは家で自由気ままに暮らしてきた。家業のスーパーを手伝えば、兄より遥かに多くの仕事をこなし、兄に妬まれた。あたしのような者がスーパーで働けば重宝すると思いきや、あたしより仕事ができない兄は、あたしの能力を妬んだ。何かに付けていちゃもんを付け、あたしがスーパーに寄り付かないようにした。

 おまけに、スーパーにゃ兄の女も居る。

「アケミ~、ケンジ~、ニャンニャン~!」

 朝からじゃれてる奴らを見てられねえ!こんなだから、仕事が疎かになるんは当然なのが、当人たちはわかっちゃいない。

 まあ、育ての家族から離れる潮時ってもんだな・・・。

「それにしても、大叔父さん、どうやって、みんなに話を付けたんだ?」


「なあに、儂ではなかよ。祖母ちゃんが、あの家族と家族紛いの女の意識領域に、直接語りかけて、納得させたんじゃよ。

 本人たちは祖母ちゃんに説得されたのも知らずに、ヤッちゃんを思って最善の策を考えたと思っとるがな」


「それって洗脳だぞ!?」

 自己意識領域は、意識、思考、心、霊、魂の順に無意識領域へ移行する。意識は自分の状況がはっきりわかる心の状態、思念だ。精神は思考や感情の働きを司る人間の心。精神空間思考つまり精神波は時空間転移伝播する。


「祖母ちゃんは、祖母ちゃんと祖父ちゃんの自己意識を、あらゆる通信回線や情報機器内にアップロードした。二人は電脳意識となってあらゆる通信回線や情報機器内に居る。

 そして、俺たちも意識と精神をテレポートすれば同じ存在になるんだ。まあ、実際にそうなってたんだなあ・・・」

 トモキから、『ナッチャンが考えたように、俺たち自身が他の者を自由に操り、物質を消滅させる兵器だ』と思考が伝わってきた。

「ただし、まだ、他の物質を移動できねえけどな・・・」



『物質移動は物質の素粒子化と再構成よ。再構成しなければ消滅するわ・・・。移動と出現は、皆は気づいてないけど、皆の精神が《テレポート》として指示してるの。

 だから《消滅》を指示した場合、テレポートの半分の現象の《物質の素粒子化》で留まるのよ』

 祖母ちゃんが気楽にそう囁いた。祖母ちゃんじゃなくて母さんだな・・・。

 と言う事は、あたしらはとんでもない能力を得たって事だぞ!!


「祖母ちゃんの説明は理解した。俺たちは慣れてるから祖母ちゃん祖父ちゃんと呼ぶぞ。

 さあ、大叔父さん。何作るか?」

 そう言いながら、トモキが、キッチンテーブルの食材から惣菜を考えた。


 同時に、シンクの蛇口からボウルに水が溜まり、キッチンテーブルの野菜が使う分だけ分離してボウルに瞬間移動して人が野菜を洗うように洗い、水切りしてキッチンテーブルで刻んだ。

 クッキングヒーターにフライパンが載ってスイッチが入り、サラダオイルのボトルが宙に浮いて、フライパンに油を注いだ。

 そしてキッチンテーブルの肉がフライパンに入り、肉に焦げ目が付き始めると、刻んだ野菜がフライイパンに移動した。


「アアア、ここまでだ!手でやった方が早えぞ!腹減った!

 念動力(テレキネシス)も楽じゃねえ!凄え、腹減る!」

 ヒロシがボヤきながら、フライパンの柄を握り、菜箸で野菜と肉を炒め始めた。またまた、ヒロシ好みのブタ肉入り野菜炒めだ。

 ヒロシの隣でトモキが味噌汁を作り、オーブンで鮭を焼いてる。


 この二人、調理は一通り何でもする。主夫だなあ・・・。

 あたしがそう思ってるとトモキが言った。

「鯛焼屋やってると、いろいろな事を憶えるんだ・・・」

 トモキから妙な思考が伝わってきた。これって何だ?あたしはそう思って大叔父さんを見た。

 あれ、なぜ大叔父さんは何も言わずにコーヒーを淹れてるだ?



 あたしがそう思ってると大叔父さんが言った。

「皆の思いを感じとるんじゃよ。実にいろいろな事を考えて、実現したいと思っとったんじゃなあ。

 それにしても一番したかった事が、ヒーロー戦隊とは・・・。

 まあ、『世直し監察隊』に成り居ったから、思いは遂げられたけんど、これからが大変ぞね」

 大変ぞねの、大叔父さんの考えが伝わってきた。


 国内の裏組織と闇の政府DSは壊滅したが、それらに指示してた組織は国外に存在してる。いずれ、それらが国内に『裏組織と闇の政府が一体化した』DSを再組織するだろう。

 現に今も、ステルス偵察衛星が、上空から神谷市を3D映像探査(電磁波探査 電磁亜空間転移伝播探査)してるが、この温故知新屋は、4D座標を0次元に変換したままだから、3D座標を使ったステルス偵察衛星の3D映像探査では探査はできん。

 しかし、何も存在しないはずの4次元座標から人が現れたり消えたりしたら疑われるが、ここの入口や裏口、トモキが鯛焼きキッチンカーを横付けした出入り口の4D座標は、隣の民家の玄関や裏口の4D座標に連結してあるから、人が出入りしても、3D映像探査で温故知新屋の存在は気づかれぬ。

 過去のステルス偵察衛星データと比較されたらどうなるかって?

 そこは抜かりなく、偵察衛星の過去の3D映像探査データを改ざんしておったが、完璧なはずなのに何か物足りない。なんか見落しがあるか?



「見落しがあるとすれば、祖母ちゃんと祖父ちゃんの研究だろうな。

 祖母ちゃんは、ナノロボットの研究は裏組織に知られてねえし、奴らのナノロボットの性能がその証しの様に説明してたけど、国外裏組織がナノロボットのAI性能をアップさせてる可能性があるぞ」

 ヒロシが調理しながら、あたしらのナノロボットを気にしてる。


 あたしらのナノロボットは自己意識を持ってる。ナノロボットのAIは祖母ちゃんと祖父ちゃんだ。そして、日々、性能を向上させ、かつ、あたしらの個性に同化して、あたしらであると同時に、祖母ちゃんと祖父ちゃんだ。

 つまり、あたしらの細胞が、あたしらと同化した意識を持つナノロボットだ。あたしらは自分の意識と祖母ちゃんと祖父ちゃんの意識を持つナノロボットによるサイボーグになったのだ!!ナノロボットのAIの自己意識が祖母ちゃんと祖父ちゃんって事は、奴らには不可能な技術だ!!


「俺もそう思うぞ。俺たちの通信手段は精神波だ。精神波は素粒子による時空間転移伝播信号だ。ナノロボットのAIのお陰で、俺たちは物質移動や物質消滅、4D探査が可能だ。

 国外の裏組織はそんな事をできねえし、今後もできねえ。

 ヤッちゃん、4D探査(素粒子信号時空間転移伝播探査)してみろ。

 ほれ、味噌汁ができた。鮭が焼けたぞ。

 あれ、飯を炊いたんか?」

 トモキが飯を気にした。


 ヒロシが喚いた。

「アッ、いっけねえ!忘れてたぞ!!」

「いやいや、気にせんでよかよ・・・」

 なぜか、大叔父さんは冷蔵庫のドアを開けた。何をする気だ?


 大叔父さんは冷蔵庫の中にある取っ手を引いた。天井まである棚がドアのように開き、天井まである扉が現れた。金庫室の扉の様だ。


「何だこれ・・・」

 大叔父さんは扉のダイヤルを回して扉を開けた。内部の棚に様々な食材が保管されてる。

「どこでも、パントリー!!」

 大叔父さんは妙な声を立ててふざけて見せた。

 あたしらは思わず大笑いした。アニメの見過ぎかよ!


「実はな、最近、妙なエアーダクトを見付けてな。ここを見付けたんじゃよ。 

 冷凍から暖房までの空調が利いて、いろいろ便利だよって、食糧庫にしたんじゃ」


「以前は何?」

「防空シェルターらしいぞ・・・」

「あたしが核シェルターの事を考えた時、何でこの事を話さなかったん?」

「こんな事より、バリア張る能力を使うのが先じゃよ。

 おまけに、これでは、核シェルターには不足じゃよ。もっと広い方が良かよ。ここで暮らせる広さが必要じゃよ」

 大叔父さんは、核攻撃に耐える防御壁と設備を備えた、居住空間を考えてる。


「急場凌ぎの防空シェルターなんだな。

 それで、飯はどうなったん?」

 ヒロシが飯を気にしてる。


「これじゃよ」

 大叔父さんは棚からパック飯を取り出した。冷蔵保存しなくても保存できる代物だ。ダイヤルロックの付いた扉の部屋に仕舞い込んで、何か考えがあるのかな?

 待てよ?そもそも、防空シェルターに、ダイヤルロックの付いた扉が必要か?


「不審者に侵入されんように、必要じゃよ。

 それより、はよ飯を食って、シェルターの中を調べんぞね。

 まだ、奥まで調べとらんのじゃ。もうここはヤッちゃんの家だよって。家の中を知っとく必要があるじゃろて」


 大叔父さんはそう言うが、自分で調べるのが面倒くせえだけだろ?まあいい、調べてるよ。トモキもヒロシも興味あるだろうし・・・。


「皆、興味持っとんよ。

 この家、儂が住んで二十年以上になりおるが、儂の知らん事が多々あるんじゃ。皆も調べとくれ」


「大叔父さんがそう言うなら、パック飯温めて早く飯食って、探検しようぜ」

 ヒロシがそう言うと、トモキが大叔父さんの手からパック飯を取ってシェルターを出て、電子レンジにパック飯を入れた。


 五分後、ダイニングテーブルに昼飯が整った。手っ取り早く昼飯を済ませ、と言っても、ヒロシの特性野菜炒めと、トモキの凝った味噌汁を味わって、後片づけし、シェルターに戻った。

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