9 さらなる指令 裏組織を探れ

 今後、あたしらは、ドローン雀蜂のナノロボットで・・・。

 まあ、そんな事に感心してねえで、朝飯にすべさ。腹、減ったぞ・・・。


『指令達成!皆、意識を身体に戻せ!』

 大叔父さんの指示で、あたしらはドローン雀蜂のナノロボットから、意識を自分たちの身体に戻した。と言ったって、3D映像のゲームのアバターが映ってるヘッドマウントディスプレイを外す様なもんだベ・・・。


 意識を身体に戻したあたしは、時間が気になって壁の時計を見た。 

 あれ?まだ0733時前かよ!?あたしらがここに来たのは0730時過ぎだ。あたしらの意識がドローン雀蜂のナノロボットにいたのは1時間くらいと思ってたが、実際は1分くらいって事か?なんで時間経過感覚が違うんか?


『ドローン雀蜂のナノロボットに居た間、思考速度が速かったため時間経過を長く感じただけじゃよ。子供の頃、一日を長く感じ、日が経つのをとてつもなく長く感じおったのは、思考速度が速かったせいじゃよ。

 さあ、朝飯にするよってに、一階に降りようぞ』

 大叔父さんの記憶が、『朝飯はオムライスじゃ。お代りもあるぞね!』と伝えてる。


 大叔父さん自慢のフワトロのオムライスだ!お代りもあるぞ!これ、何度食っても、飽きねえなあ!ヒロシとトモキから歓喜が伝わってきた。

 こいつらの食欲は、底抜けだぞ・・・。


『さあ、早く朝ごはんを食べて、裏組織の攻撃に備えるのよ!

 裏組織は、私たちが二つの機構を壊滅したのに気づき、私たちの所在を4D探査してる』

 祖母ちゃんの一言で、和やかな雰囲気が吹っ飛んだ。


 えれえ事になったぞ!ドローン雀蜂のカリホルニウム弾で攻撃されたら、核シェルターなんかねえこの温故知新屋は、一溜りもねえぞ!!


『そうは言っても、朝飯、食う時間はあるさ さあ、一階に降りようぞ』

 大叔父さんに引き連れられ、あたしらは一階のダイニングキッチンに降りた。

 その間も、大叔父さんから、

『バリアを張れ!』

 と指示があった。


 言われなくても、あたしら世直し監察隊は承知してた。

 ドローン雀蜂を捕獲した時からバリアを張ってるあたしらは、これまで同様に電脳意識をも含めた他の意識にあたしらの自己意識領域を読まれぬよう、精神波で意志疎通できるよう、再度、あたしらの自己意識領域に強固なバリアを張っていた。



 ダイニングキッチンの、テーブルの椅子に座り、あたしは、祖母ちゃんが忠告した、

『裏組織は、あたしらが二つの機構を壊滅したのに気づき、あたしらの所在を4D探査している』の、「4D探査」が気になった。


 これまで祖母ちゃんはあたしらに次のように説明した。


『祖母ちゃんの説明をかいつまんで言うなら、裏組織が使っているドローンのナノロボットは学習作業に手間どり独自行動が出来ず、現在は前もって与えられた情報を処理するだけに留まっている。

 一方、あたしらの体内で自己増殖するナノロボットは、あたしらの遺伝情報を基に、あたしら個人に相応して増殖し、ナノロボット自体があたしらその物に進化していた。

 既にあたしらには、身体形状変化能力(シェイプシフト)と念動力(サイコキネシス)と精神感応(テレパシー)による意識記憶操作能力(マインドコントロール)が備わっており、あたしらが対外的に張ったバリア(シールド)も精神感応による意識記憶操作能力の一つだった。今後もナノロボットの進化によって新たな能力が現れる』


 あたしらの精神感応(テレパシー)は精神波だ。一般的に言われる思念波じゃねえ。精神波は心の思考、つまり、精神思考で生まれる量子レベルの素粒子による信号で、4D信号と呼ばれ、4D探査(素粒子信号時空間転移伝播探査)の信号と同じだ・・・。

 あたしらの精神波の信号と、裏組織の4D探査信号が、同種なら・・・。とんでもねえ事になるぞ!!


『そんな事は気にせんでよかね。しっかり朝飯食って考えればよかよ』

 大叔父さんは気楽に、自慢のフワトロのオムライスを温めて、テーブルに並べてる。これって冷蔵庫に保存してたんに、なんでフワトロなんだべ?

『余計な事は考えんでよかよ。お代りもあるぞ!』

 大叔父さんから『密閉加圧冷蔵しといたのさ』と伝わってきた。余計な事を考えるなと言いながら種明ししてる。

『その密閉加圧冷蔵、密閉加圧冷凍に使えそうだなあ・・・』

 トモキが鯛焼きの餡の保存を考えてる。


『さて、飯を食いながら聞いてくれ。

 祖母ちゃんが言ってた、裏組織の4D探査は・・・』

 大叔父さんが説明した。

 要するに、裏組織の4D探査信号とあたしらの精神波の信号は似て非なる物って事ださ。


 大叔父さんの説明はどこへやら、トモキとヒロシはオムライスに夢中だ。こいつら朝からこんなに食ってだいじょうぶかいな?

『だいじょうぶぞね。二人とも、説明を理解しとる。

 まあ、成長したナノロボットが、大半の体細胞と入れ代っとるから理解も早いし、今まで以上に代謝エネルギーも必要じゃ。腹も減るわさ・・・』

 大叔父さんは、夢中でオムライスを食ってるトモキとヒロシ二人を笑いながら見てる。


『それと、ここの4D座標は次元変換したわ。裏組織のAIは、分析型AIの形式を残してるわ。ここの4D座標は裏組織のAIには読み取れないわ』

 あたしらの意識に、祖母ちゃんが現れて大叔父さんの4D探査の説明につけ加えたが、何となくしか理解できねえ。だいたい、物理系の用語は苦手だべさ。

 オムライス食ってねえで、トモキ、説明しろさ!


『裏組織の4D探査は、基本的に3D映像探査だ。読み取る座標は3次元座標で、それに時間経過を加えたものだ。

 一方、ナノロボットに組み込まれた座標は4D、つまり4次元座標だ』

 トモキがオムライスを食いながらそう言った。


 3次元座標に時間経過を加えたものが4次元座標じゃねえのか?いったい違いが何処にあるんだ?説明になってねえベさ。


『ちっとばっかし、複雑だけんど、説明すんぞ・・・」

 トモキがオムライスを食いながら詳しく説明した。


 この温故知新屋を3次元座標で示す場合を考えよう。

 位置は地球の緯度と経度と標高で決まる。位置決定要素は三つ、緯度、経度、標高。3次元だ。明日になっても、温故知新屋の位置を示す三要素は、おそらく変らないだろう。

 しかし、我々のナノロボットは我々の身体を変化させたように、3次元座標の情報を変えれるし、実際に3次元の存在位置を変えれる。

 そう言うと妙に思うかも知れないが、他の者から見えなくできる。つまり、実際は存在してるが、3次元の感覚では見分けがつかなくなる。

 物理学的には、我々が存在しているこの店の4次元座標を次元変換して0次元座標に変換し、3次元座標に現れないようにすると、裏組織の4D探査紛いの3D映像探査では見つけられなくなる。



『説明が複雑よって、こう解釈すればよかよ』。

 大叔父さんは、祖母ちゃんのナノロボットについて説明した。


『裏組織の4D探査は基本的には3D映像探査じゃよ。裏組織のAIがこの時空間を3次元表示して3D映像探査しおる。

 そこで、儂らのナノロボットは儂らの位置を示す3次元座標を次元変換して0次元にして、裏組織の3D映像探査で使われとる3次元座標に現れないようにするのじゃよ。

 裏組織がAIを使って、3次元座標を3D映像探査しおるから、儂らの位置座標を裏組織の3次元座標から消すんじゃよ』


 なあんだ。0次元変換で、裏組織のAIを騙すんでねえか!トモキが言う『実際に3次元の存在位置を変えれる』は?・・・実際に有りか!?

 あたしは、あたしらとナノロボットの意志疎通信号(精神感応・テレパシー)が精神波(心の思考である精神思考によって発信する信号)で、量子レベルの素粒子による信号だったのを思い出した。

 これって、精神感応・テレパシーと同じで、あたしらは、あたしら自身を移動・テレポートできるって事だべさ?!

 あたしはとんでもねえ事に気づいた・・・。


「一つの事ばっかり考えとらんで、飯食えさ」

 大叔父さんがあたしをじろりと見た。

「あたしの考えはまちがってんか?」

 あたしはそう言って、スプーンにいっぱいオムライスを載せて口へ放り込んだ。さっきまでオムライスを食ってたが、考え事してて味の記憶が無かった。今度はしっかり味を確認した。半熟卵の味がとてつもなく美味えぞ!


「ほれ、味わえるッぺよ。多重思考できるよって、いろいろ思考してみんかい・・・」

 大叔父さんはあたしだけでなく、トモキとヒロシを見てニタニタ笑い、オムライスを食ってる。

「なあ、テレポート、できんか?」

 あたしらはオムライスを食いながら訊いた。


「さっき、したンベな!」

 大叔父さんの言葉使いがなんか変だ。思考なら訛りはあんましねえけんど、言葉になれば訛りが出る。

 大叔父さんが言い直した。

「さっきしたではなかか?儂らの意識が、ドローン雀蜂のナノロボットを通じ、物事を体験したと感じただろう。

 別の見方をすれば、儂らの意識が移動した、つまりテレポートしたっちゅう事ぞね。何ならその身体ごとテレポートしてみっか?」

 大叔父さんはスプーンでオムライスをすくいながら、あたしらの意志を確かめるように、ギロッとあたしらを見た。


「そんな事、できるんか?」

 トモキとヒロシがオムライスのスプーンを止めた。

「できんことは・・・」

 大叔父さんはスプーンのオムライスを口元に運んで止めた。

「できんことは?!」

 あたしらは飯を食うのもスプーンも止め、大叔父さんの次の言葉を待った。


「できんことはなかよ。だけんど、皆はまだ、自分たちの身体に慣れとらんから、ドローン雀蜂のナノロボットに意識を移動したんじゃよ。

 ナノロボットが皆の体細胞と完全同化して、皆の意識がナノロボットの電脳意識を制御できるようにならんと、身体を移動するのは危険じゃ・・・」

 大叔父さんは、テレポートの際の事故を説明した。


 地面と大気だけの場所へ移動するなら、今ここに居る身体が、移動先の地面の上に立っているように移動できるが、大気の他に物体があると、その物体の中や一部に身体が移動して事故を招き、身体に食い込んだ他物質の排除に時間がかかると言うのだ。そうなれば、ナノロボットが身体を麻酔し、侵入した異物を排除して身体を修復するが、それには麻酔しても相応の痛みを伴うと・・・。


 これってトンでもねえ事ださ!!

 映画でエスパーがテレポートするような訳にはゆかねえっちゅう事ださ!!

 ひょっとしたら、テレポートで大気も身体に侵入すっちゅうことだべか?


「そう言う事だ。身体に空気が溜ったようなものさ。

 まっさきにナノロボットが、血栓を作らぬように処置する。

 だから、映画のエスパーがテレポートするのは、有り得ん事なのさ」

 そう言って、トモキがスプーンを置いた。皿のオムライスを完食してる。ヒロシも同様だ。こいつらいつの間に、そこまで理解したんだ?一瞬に理解したんか?


「さあ、飯も食った。片付けして、裏組織の本部を壊滅しようぜ・・・」

 ヒロシがそう言って椅子から立った。使った食器をシンクに入れ、コーヒーカップをテーブルに並べた。勝手知ってる店だ。

「えっ?」

 大叔父さんとトモキとあたしは、一瞬、ヒロシの言う事を理解できなかった。

 ヒロシ、何を言ってんだ?


「飯を食う前に、祖母ちゃんが言ったべ。

 裏組織は、俺たちが二つの機構を壊滅したのに気づいた。

 先手必勝だ。裏組織の本部・DS(ディープステート)を叩こうぜ!裏組織は闇の政府・DSだ。DSが政府を動かしてる」

 ヒロシの言うことは尤もだ。ヒロシは落ち着いてる。今のヒロシは、今までのチャラケ気味のヒロシじゃねえぞ。この変化はナノロボットのせいだべ・・・。


「よし!裏組織の本部・DSを探そうぜ!」

 トモキは、ドローン雀蜂のナノロボットを使う4D探査を提案した。


 裏組織の本部・DSは、あたしらが発する精神波(素粒子時空間転移伝播信号)と4D探査信号(素粒子信号時空間転移伝播探査信号)を含めた4D信号を、3D映像探査(電磁波探査 電磁亜空間転移伝播探査)するパッシブ探査、つまり電波望遠鏡で宇宙の電磁波信号を受信するような事をしてる。


 一方、あたしらの4D探査(4D映像探査)は、あたしらが発した精神波(素粒子時空間転移伝播信号)と4D探査信号(素粒子信号時空間転移伝播探査信号)を含めた4D信号のエコー(反射波)で、探査対象を映像化する。

 これがDSが行ってる3D映像探査と、あたしらの精神波による4D探査の違いだ。

 本来この説明は、トモキが説明すんだぞ!トモキ、何考えてるんだベ?!


「どこから4D探査するか考えてる・・・。俺の考えが伝わってるベ!」とトモキ。


 ああ、伝わってる。あたしが探査担当だったな・・・。

 おお、『日本経済統合機構』『特殊開発機構』を攻撃したように、ドローン雀蜂のAIを使って、ドローン雀蜂の中に居るナノロボットのアバター(あたしらの意識(4D信号)をテレポートした電脳意識)を、DSが発してる3D映像探査波の搬送波にテレポートすれば・・・。

 これはヤベエぞ!この段階では4D探査できねえぞ。ナノロボットのアバターの位置を0次元変換しても、アバターが4D探査信号を発すれば、4D探査信号がDSの3D映像探査にひっかかッちまう可能性があるべ!

 アバターをいっぱい作って、DSが発してる3D映像探査波の搬送波のあらゆる電磁時空間に出現させて、DSをかく乱させ、その間にDSの位置を探るか・・・。

 待てよ・・・。

 そうか!政府の中央制御AIに侵入して、DSが何処にあるか4D探査すりゃあいいんだべさ!!DSは政府の中央制御AIを攻撃できねえ・・・。



 ヒロシが言う。

「もっと単純に説明しろや。

 ドローン雀蜂のAIから、ナノロボットを使って、俺たちの意識を大量にコピーし、あらゆる通信回線にテレポートすりゃあいい・・・。通信回線からでも、政府の中央制御AIからでも、4D探査すりゃあいいって事だべ。

 ヤッちゃん。トモキの影響を受け過ぎだぞ」

 確かにヒロシの言う通りだ。説明は簡潔にした方がいい・・・。


「では、コーヒーを飲んでから、ドローン雀蜂のナノロボットに我々の意識をテレポートしてアバターを作り、雀蜂のAI・電脳意識からあらゆる通信回線と、政府の中央制御AIに侵入しよう・・・。

 皆、心の準備をしろ!」

 大叔父さんはそう言ってDSが何処にあるか考えてる。大叔父さんか言う心の準備って、あたしらの意識を身体に残したまま、ドローン雀蜂の中のナノロボットに心を、つまり自己意識領域を拡げて、自分がナノロボットだって思えって事だ・・・。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る