4 意識記憶操作能力で裏組織を操れ

 あたしが対外的に張ったバリアと同じに、祖母ちゃんの思念はヒロシとトモキの思念も遠ざけて排除し、侵入できねえようにした。祖母ちゃんは、

『これからいろいろ説明するわね。短時間だけど内容は大量よ・・・』

 と伝えた。


 祖母ちゃんの説明をかいつまんで言うなら、裏組織が使っているドローンのナノロボットは学習作業に手間どり独自行動が出来ず、現在は前もって与えられた情報を処理するだけに留まっている。

 一方、あたしらの体内で自己増殖するナノロボットは、あたしらの遺伝情報を基に、あたしら個人に相応して増殖し、ナノロボット自体があたしらその物に進化していた。

 既にあたしらには、身体形状変化能力(シェイプシフト)と念動力(サイコキネシス)と精神感応(テレパシー)による意識記憶操作能力(マインドコントロール)が備わっており、あたしらが対外的に張ったバリア(シールド)も精神感応による意識記憶操作能力の一つだった。今後もナノロボットの進化によって新たな能力が現れる。



『と言う事は、意識記憶操作能力を使って裏組織の連中を操ればいいんだべ。だけど、政府を操ってるんが与党じゃねえなら、あたしらは、裏で政府を動かしてる裏組織の連中の顔を知らねえぞ』

『裏組織のボスの記憶から、全員の顔がわかる。

 ボスはこの男よ。C国の組織から金をもらってる。売国奴だわ』

 祖母ちゃんはあたしにボスの容貌を伝えた。


 あたしの脳裏(意識領域)に、見覚えあるオッサンが現れた。

『コイツがボスか!?』

 あたしは驚いた。現れたのは、テレビ討論会などで発言している穏やかな経済界のオッサンだった。とても裏組織を指揮して政府を操っている様には・・・、いや、今まで、あたしがそんな事を考えなかっただけだ。あらゆる報道機関がこいつらに操られてれば、国民は政府の実態も、裏組織も知りようがねえぞ・・・・』



『そうよ。だから、ドローンのナノロボットに意識侵入(ハッキング)して、裏組織の実態を探り、奴らに正当な民主主義を実行させるのよ。

 民主主義の三原則は

「最大多数の最大幸福、社会的正義、道徳的責任」

 だよ。これを奴らに実行させ、政府に実行させるの。

 しっかりおやんなさい。三人に説明しなくて良いように、同様の内容を三人に伝えたわ』

 祖母ちゃんが言う三人はヒロシとトモキと大叔父さんの事だ。


『質問!あたしらはどこまで変身できるべか?』

『今の骨格が維持できる体型と容貌なら、皆が望む容姿に変身できるわ。

 骨格は今後も進化する。ヤッちゃんたちが望む体型に。

 でも、今は、大叔父さんが言うように、今のキャラのままでいなさい。

 夕刻、温故知新屋で新たな連絡を待ってね・・・』

 祖母ちゃんはヒロシとトモキが喜ぶ事を説明して消えた。


『ヤッちゃん!祖母ちゃんの説明、凄えぞ!』

 ヒロシが興奮してあたしに話そうとしてる。

 コイツ、あたしらが世直し監察官になったのを忘れてるんか?何のために、体内でナノロボットが増殖して新キャラを得たんだ?

 あれ、祖母ちゃんも祖父ちゃんも、あたしらの同意を得て、ジュースのナノロボットを飲ませたんだべか?同意なしなら、これって犯罪だぞ・・・。

 だけんど、ジュースのナノロボットを飲む時、正義の『世直し監察官』になるためと説明されても、どうして良いかわかんねえな・・・・。

 あたしは、今朝、大叔父さんが話した15年前の話を思い出した。



「ほれ、最初に洋が鯛焼きをせびられた時、洋が奴らを張り倒した。

 そして、ヤッちゃんと洋と友喜が奴らを見て、

『大っきくなったら、世直ししようぜ』

 って三人で誓った。

 その話を祖母ちゃんが聞いて、三人に特製ジュースを飲ませた。そして、『15年後に世直ししなさい』

 と言った。

 憶えとるか?」

 そう言って今朝の大叔父さんは、あたしら三人を見詰めてた。



 ああっ!?あん時、ジュースを飲むのを三人で同意したんだ!だから、大叔父さんがその事を憶えてて説明したんだ!

 あたしがそう思ってると、ヒロシが真顔であたしを見詰めた。

『俺も思い出した。これ、ナノロボットが、俺たちの忘れている記憶を甦らせたんだな?』


「そう言う事さ。夕飯時になって客足がなくなったから、温故知新屋に戻ろう」

 トモキはソーラー発電のバッテリー残量を確認し、あと二日は持つと伝えて、《鯛焼き大嶋屋》の電子看板を《鯛焼き売り切れです》に切り換えた。

「了解!」

 あたしは焼きそばを焼いて肉を焼き、野菜炒めを作った。

 ヒロシは鯛焼きキッチンカーの営業用の窓を戸締まりしてキッチンを片付けた。


「帰るぞ!発進する!」

 あたしは運転するトモキが言う。

「停止と発車と進路変更指示を頼むぜ。焼いてる物を鉄板から床に落したくねえからな」

「温故知新屋に着いてから焼けばいいべ」とトモキ。


「着いたら、飯食って、のんびりするんさ・・・」

 あたしはそう言いながら、トモキとヒロシに伝えた。

『大叔父さん、まだバリアは張ってる。ドローンを奪って、調べる事があるんだべさ』


『温故知新屋でのんびり焼きそばを焼いてられねえって事か・・・。

 わかった。キッチンカーの動きを伝える。ヒロシ、キッチン頼むぞ!』

「了解!しっかり洗ってるぞ!」

「焼きそば焼いてっぺ!」

 ヒロシとあたしがトモキに答えた。


「発進!」

 トモキは公園の駐車場から鯛焼きキッチンカーを発車し、

「右に曲る!」

 右折の方向指示器を点滅して公園入口で一時停止し、右折して車道へ鯛焼きキッチンカーを走らせた。

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