5 監察官 ヤッちゃん
デブ男の背後に、トモキが居る。こいつもデブだ。
「ヤッちゃん。いよいよ世直し、始めたんか?」
トモキは、デブ男が差しだした紙袋を取って大叔父さんに渡した。
「おお、トモキか?デブになって、わからんかったぞ!
これで、三バカが揃ったか・・・」
大叔父さんは妙な事を言いながら、紙袋の鯛焼きを掴んで、鯛焼きの頭を口に入れた。
「鯛焼き、ありがとな!三バカって何だ?」
あたしは二人に礼を言って、大叔父さんが持っている紙袋から鯛焼きを取って尻尾を口に入れた。デブ男とトモキも紙袋から鯛焼きを取って食ってる。
「ほれ、最初にヒロシが鯛焼きをせびられた時、ヒロシが奴らを張り倒した。
そして、ヤッちゃんとヒロシとトモキが奴らを見て、
『大っきくなったら、世直ししようぜ』
って三人で誓った。
その話を祖母ちゃんが聞いて、三人に特製ジュースを飲ませた。そして、
『15年後に世直ししなさい』
と言った。
憶えとるか?」
大叔父さんはあたしら三人を見詰めてる。
「いや、なんも、憶えとらん・・・」
デブ男とトモキは首を横に振った。
「何で15年後なんだ?」
あたしはその年月が気になった。
「皆が大きくなるのを、祖母ちゃんは期待したんじゃろう・・・。
今年で15年経った・・・」
大叔父さんはそう言うが、何か隠してる・・・。
アッ、思い出した!あん時、大叔父さんも一緒に特製ジュースを飲んでた・・・。何か、塩っ辛いような、血の味がするような、ブドウジュースだった。あれはいったい何だったんか?
あたしは鯛焼きを一口かじって訊いた。
「なあ、大叔父さん。あのジュース、変な味したよな?憶えてっか?
なんで、あん時、いつものオレンジジュースじゃなくて、あんなジュースが出たんだ?祖母ちゃん、ジュースなんか作れねえぞ!」
「祖母ちゃん、スーパーになるジュースと言ったぞ。
トモキも訊いたよな?」
そう言ってデブ男は鯛焼きを食いながらトモキを見た。
トモキも鯛焼きを食いながら言う。
「ああ、世直しするんで、スーパーになるんだって言ってた。
ジュース、酸っぱかったから、ふざけて『スッパマンになるんだ』って話したら、『15年したら、世直し監察官だよ』って祖母ちゃんが笑ってた。
大叔父さんが言ったように15年後だから、今頃だぞ・・・」
「大叔父さん。『世直し監察官』って何だ?」
あたしは鯛焼きを食いながら、鯛焼きを食ってる大叔父さんの手を掴んだ。
大叔父さんの目つきが鋭くなった。南米で猛者を相手してきた大叔父さんの危険な兆候だ・・・。
「『世直し監察官』てのは、世の中の不正不当を暴いて根絶する者の事だ・・・。
祖母ちゃんは、お前たち三人のそうした能力が育ちつつあるのを気づいたんじゃ。
三人は、いつも祖母ちゃんの、この家に来ておった。あん時、儂も家におったでな・・・。
まっじいジュースじゃったな、アッハハハッ!」
大叔父さんは、何か吹っ飛ばすように高笑いしてる。
大叔父さんは隠し事してる。大叔父さんの思いを読めない・・・。
あたしは話を変えた。
「よっしゃ。世直しするベ。まずは、奴らの仲間を壊滅しよう。
デブ男が言うように、奴らと顔を合わせずに、念力でマスカット潰しだな・・・」
「うん。念力、鍛えるぞ!トモキ!この四人で秘密特訓だぞ!」
デブ男は温故知新屋にいる大叔父さんとあたしとトモキを目で示した。
「ああ、他言無用。親にも誰にも喋らない。奴ら、捻り潰してやる!
俺、デブ男の仲間と言うだけで、過去の仕返しの標的にされて、商売を妨害されてる」
トモキも奴らに怨みがある。デブ男が小学校ん時におやつを買ってた店が、トモキの家が経営するお菓子屋、兼、鯛焼き屋だったのだ。
「そんなら、あたしをキッチンカーに乗せろ。奴らが来たら、潰してやっからな!」
「それなら、俺も、キッチンカーに乗るぞ!」
「デブ男が乗ったら、キッチンカーが・・・、動くか・・・」
トモキの鯛焼きキッチンカーは4トントラックを改造した代物だ。デブ男が数人乗っても、どうって事はない。
急遽話がまとまった。あたしとデブ男は、トモキの鯛焼きキッチンカーで、鯛焼き販売を手伝うことになった。鯛焼きキッチンカーでは、鯛焼きの他に焼きそばも売ってる。
「そしたら、大叔父さん。市内を巡回してくる。夕方、ここに戻るね」
あたしは腹ごしらえに、紙袋から2匹目の鯛焼きを取って口に入れた。尻尾まで餡子が入っててうまい鯛焼きだ。
「ああ、行ってこい!
トモキ!ヤッちゃんのバイト代の代りに、今度は焼きそばを頼むぞ!」
大叔父さんも2匹目の鯛焼きを食ってる。
「ああ、わかってるぞ、大叔父さん」
なんてこった。あたし抜きで、大叔父さんとトモキが話をつけちまった。
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