第9話

〜〜 数分後 〜〜


『〜!…』


「勝った、第3部完!」


「かなりギリギリのセリフを口にするなよ…てか、後もう一回戦があるからまだ気を抜くな」


「あ、はい。すみません」


俺達はなんとか5匹のモンスターを倒し、光の粒子に変える。

その時に何かフラグ的な物を口にする彼女に一言注意しつつ、俺は自分の鞄の所まで歩き拾うと、中からポーションを2本取り出して彼女に1本を渡すべく近づく。


「ほい、ポーション…てか、武器はまだ使えるか?ボーパルラビットの落とした物だから余りいい物じゃないから耐久性に問題しかないからな」


「ポーションありがとうございます。はい、大丈夫です、鞄の中にあったナタは三本全部装備してますから!…でも、私はジョブが『フェンサー』だから刃物は使えますが最大限の力を出せるのはレイピアなんですよね…すみません、火力不足で」


「問題ない。俺のジョブは『格闘家』、拳や蹴りがモンスターに効くようになるジョブだから最悪素手でも戦える。

だが、アンタは違う。武器が壊されたら戦えない、最悪は戦う事を放棄して守りに徹してくれ。火力は手数で補う、その為の体術だしな」


俺のジョブは簡単に言えば素手でもモンスターと戦える様になるジョブだ。火力は手数で補える。だが、どうやら彼女のジョブは『フェンサー』。『フェンサー』は軽い刃物、特にレイピアを扱い戦うジョブであり、レイピアさえ持てばほぼ即戦力になるジョブだ。だが、『フェンサー』…というか一部を除いた刃物を扱うジョブの泣き所として刃物以外はモンスターに対してほぼダメージを与えられなくなる弱点があり、刃物を失った時点で戦闘能力を失うといっても過言じゃないくらいに弱体化する。

だから今だけは俺が前に出て戦うしかない。

そんな事を考えていると目の前から今まで感じた事のない殺気を感じ、急いで前を向くとそこには…


『シャー!!』


「え、『銀ピカの鱗を持つトカゲ』だ…いや、でもトカゲにしてはかなり大きいですね」


「…」


そこにいたのはライオンくらいの大きさがある銀色で光沢のある鱗を全身に身に纏ったトカゲが1匹、そこにいた。

女性の方は出てきたモンスターに興味津々な様子だが、俺はあのモンスターを知っている。だからこの場で最優先にするべき行動はただ一つ。


「納刀して、武器を守りながら後ろに下がれ!」


「え!?」


俺は急いでそう叫ぶとモンスターに突撃する。

するとモンスターは少し息を吸い、灰色の煙を吐き始めるが間一髪俺が間に合い、顎を蹴り上げて口を塞ぐ…が、最悪な事に俺の上半身が煙に包まれてしまう。


「ちぃ!?」


その後、未だ煙に隠れていない下半身を攻撃しようとモンスターが突撃してくるが俺は何とかモンスターが動くより先に両足が地面に付いたのでそのまま後方に下がる。


「だ、大丈…うぶ…でっ!?///」


彼女はどうやら俺の忠告を聞いて後方に下がったのか後ろから心配そうな声が聞こえるが今はそれどころではない。何故なら今の俺は…


「ちぃ!やっぱり『腐食の煙』をモロにくらったせいでナックルダスターごと上半身の装備が腐り落ちて丸裸にされちまった!」


右手のナックルダスターこど上半身の装備が腐り落ち、鍛えて筋肉質かつシックスパックに割れている上半身があらわになっている状態だからだ。


「な、何で上半身が裸なんで…


「気を抜くな!あれは本来このダンジョンの『2層』で出てくるモンスター。生き物の肉体以外の武器や防具を腐らせて使用不能にする腐食の煙を吐き、全身は鉄の鱗で覆われているモンスター、『メタルリザード』だ!腐食の煙を食い、武器を腐らせられた時点で確実に詰むぞ!!」


…うそ、2層のモンスター!?」


俺は振り向かずにそう叫びながらモンスターから目を離さない。メタルリザード、全身が鉄の鱗で覆われていて防御力が装甲車並みに硬い。それを武器に突撃してくるもんだから普通に当たっただけで死ねるし何なら噛みつき攻撃も鉱石を主食にしているから噛まれた時点で食いちぎられる。そして、もっとも厄介なのが腐食の煙。体内で生成するこの煙を浴びると着ている装備と武器が腐って溶ける、一応身体には何も影響は無いし一部腐らない物もあるがくらえばほぼ確実に無力化されてしまう。攻撃力、防御力、特殊能力全てが1層のモンスターとは格が違う。幸い『格闘家』のジョブを持つ俺なら煙を食らっても素手でも戦えるが、後ろの女性は武器が無くなった時点でアウトだ…腹を括るしか無い。


「…取り敢えず服は着るか。丁度今朝完成した衣服があるし」


だが、着ていたライダースーツはナックルダスターと一緒に上半身が煙により腐り落ちた。このまま戦っても鉄の鱗が上半身にかすっただけで大怪我なのは間違いない。ならば気休め程度だが今朝スキルで作った服を着るべきだとすぐに思いつく。すると脳内にある声が響いた。


《衣服を着用する場合は『衣服変換コスチュームチェンジ』と叫んでください。そうすれば思い浮かべた衣服を自動で着用します》


「…いや、普通に恥ずかしいな」


俺は頭にまるで定型分を読み上げる男性の声が響いたのを感じて第一声に出た言葉がそれだったが、背に腹は変えられないと感じ覚悟を決めて叫ぶ。


「『衣服変換コスチュームチェンジ』!!」


俺がそう叫ぶ、すると俺の背後に両開きの洋服タンスが出現。俺が何かを反応する隙を与えずに俺はいきなりタンスの扉が開いたと同時にタンスの中に吸い込まれ、そしてタンスは扉を閉めた。

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