#2「雑用クエスト」

 まず、冒険者ギルドに顔を出す。

「あら、リンダさん。今日もEランククエストですか?」

「はい。今日もコツコツ働きます」

 冒険者ギルドにはSランクを最高として、Aランク、Bランク……と続き、最下位のランクがEランク。

 そして、Eランククエストとは、冒険者ギルドで誰でも……つまり子供でも受注できる雑用クエストのこと。ゴミ拾いや、家事手伝い、探し物など、危険度は低い分、薄給でもある。そしてDランク以上は成人して、かつ武術、剣術、魔術の心得がある、という制約がある。


「リンダちゃんいつもありがとうね。はいこれ、スタンプ」

「ありがとうございます。猫ちゃん、見つかってよかったです」

 クエストをやる中で、こういう感謝の言葉もやりがいに繋がっている。そして、冒険者証にスタンプを押してもらって、報告したらクエスト達成だ。


「はい、スタンプです」

「確かに! では換金しますねー」

 報酬は100G。まぁ、魔術の勉強をしつつ、軍資金として細々と貯めるには悪くない報酬だ。


 お金があれば、専門の教育機関で手解きを受けるところだろうけど、生憎と母一人子一人。その日暮らしで、独学で学び取るしかなかった。

「すみません、これください」

「はい。貸し出しですね。少々お待ちを」

 ポワン、ポワン、と本が光る。これも魔術の一種だ。


「ただいまー」

「おかえりリンダ! 晩御飯、もうすぐできるから」

「はーい」

 自分の部屋で本を開く。独学となれば魔術の習得が一番手っ取り早い。図書館で本を借り、魔法の詠唱を覚える。白黒の絵を描くより百倍つまらないけど、正直――属性はなんでもいいけど――初級魔法の一つでも打てればということになる。

「美術史の本も……やっぱり全部白黒だよねー」

 青だ黄色だと言われても、その全てが未知の領域だ。そこに思いを馳せるのが一番楽しい瞬間だ。

 だからこそ、お金をコツコツと貯めている。軍資金として、成人する三年後に備えて。

 

 

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