激重生徒会!〜生徒会長になったのはいいが、副会長(サイコパス)、書記(ヤンデレ)、会計(メンヘラ)の激ヤバ危険三銃士から迫られてヤバすぎる〜

カイマントカゲ

第1話 女神

「はぁ〜〜」


 俺、藤川晋ふじかわシンは悩んでいた。

 有名進学校として名を馳せる範進はんしん学園。

 有名企業の上役の子供や、政治家の子供等、所謂いいとこの金持ちみたいな奴らが集まるのがこの学園だ。


 しかしこの学園には難関なテストに合格したものだけが入れる一般枠が存在する。俺はそのテストを合格し、一般人代表としてこの学園に入学したのだった。


「どうした? 朝からため息なんかついてよ」

「ん? なんだ久保田か……」


 朝から机に伏せてため息をつく俺の前に現れたのはクラスメイトであり、この学園で1番の友人である久保田翔くぼたショウ

 有名な会社の偉い人の息子みたいなんだが、初めのうちから俺に親しく声をかけてくれたいい男だ。


「せっかく新生徒会長になれたってのに元気ねぇじゃねーか」

「うーん、それが悩みの原因なんだよな」


 そう、俺はこの学園の新生徒会長になったのだ。

 成績優秀かつ模範的な生活態度、他の生徒や教職員からの信頼や人望など、全てを認められた者しかなれない生徒会長に。


 この学園で生徒会長を務めたというのは今後の進学、そして就職においてもかなり有利になる。なんのコネも無い一般家庭出身の俺としてはなんとしても生徒会長になりたかった。

 そこで俺は勉強はもちろん、クラスメイトや先輩方との交流も深め、行事や委員会にも積極的に参加し、いよいよ生徒会長へとなる事ができたのだ。


 しかし生徒会長になったのはいいものの、俺を悩ませる問題がいくつもあった。


「藤川君、久保田君。二人共おはよう」


 凛とした声で挨拶をしてきたのは生徒会副会長の藪真琴だった。

 長い黒髪に切長の美しい目。まさに美人というのはこういう人のことをいうといった容姿を持ち、さらに成績は常に上位、なのにどんな人にも優しく丁寧に対応する学園の人気者……というのが表の顔だ。


「あ、藪さん、おはよ! 藪さんからも何かいってやってくれよー、このしょぼくれた顔した生徒会長様に」


 久保田に言われ、藪真琴やぶマコトは眉をひそめて少し困った表情をしながらもこう言った。


「あはは、藤川君も疲れてるんだよね。でも悩んでる事や困ってる事があったらなんでも言ってね。私にできる事ならなんでも協力するから」


 さっきまでの表情とは打って変わり、まるで女神のような優しげな笑顔を見せる。

 この姿を見て多くの人は彼女の事を優秀で綺麗で人当たりもいい完璧な人だと思うだろう。俺も初めはそう思っていた……。


 だが、実際は違う。


「……よく言うよ、昨日お前の愚痴が長いせいで……ぐぬ!?」

「あら? どうしたのかしら藤川君?」


 俺がそう言いかけた途端、足に激痛が走る。

 よく見ると優しい言葉とは裏腹に、藪真琴が周りには見えないように俺の足を踏みつけていた。


「どうした晋?」

「い、いや、な、なんでもない……です……」

「あ、そうだ。ちょっと藤川君に話があったんだ。ちょっと連れてくね」


 そう言うと藪真琴は俺の腕を掴み、教室から連れ出す。そして誰もいない階段の踊り場で立ち止まると同時に俺の顔の横に手を突き出す。

 ドンッと壁に手をついた音がし、彼女は俺を睨みつける。


「藤川君? 私ずっと言ってるわよね? みんながいるところで余計なこと言うなって」

「……ご、ごめん、つい」


 みんなの人気者、藪真琴の秘密。

 それは裏表が激しい事だ。そりゃ人間誰しも裏表はある。嘘をつくのなんて仕方なのないことだ。

 だがしかし、彼女の場合はそれがあまりにも激しいのだ。

 昨日も彼女からの愚痴電話が長すぎて、気がつくと深夜二時になっていた……。

 内容はクラスメイトの事、先生の事、親の事など、とにかく彼女の不満を聞かされた。その結果俺は寝不足だ。


「はぁ……、ホントなんで貴方に知られてしまったのかしら」

「ははは……」

(別に俺も知りたかった訳じゃないだけどな)




 キッカケは俺が彼女にテスト対決で勝った事だ。

 生徒会長を目指す者として一番のライバルだったのが学園の人気者で女神とも呼ばれる存在、藪真琴だった。

 選挙対決だとおそらく負ける……。なんとか弱点がないか探したのだが、結局見つからなかったので俺はテストの勝負で勝った方が生徒会長に立候補し、負けた方は立候補しないという勝負を挑んだ。


 それまでテストの順位で藪真琴に勝ったことはなかったので賭けだったが、奇跡が起き、見事勝つ事が出来たのだった。

 そしてその日の放課後、教室に忘れ物して取りに戻ると、誰もいない教室で一人怒りを露わにする人物がいた。


「はぁーなんなのよ! この私が負けるなんて……! ……くっそぉぉ!」


 彼女は怒りに任せ自分の机を蹴り飛ばした。その結果、机の上にあった黒いペンケースも水色の可愛らしい水筒も吹き飛ぶ。


「……はぁっ、はぁっ……」


 いつも綺麗に整えられている黒髪を振り乱し、机を蹴り飛ばし、肩で息をする姿は誰にでも優しく礼儀正しい、いつもの女神と呼ばれる姿とは正反対だった。


(……とりあえず見なかったことにして今日は帰るか)


 そう思い静かにその場を立ち去ろうとした時だった。


「こんな所で何をしているんですか、藤川君?」

「え、岡田先生!? あ……」


 背後から担任である岡田先生が俺に声をかけてきたのだった。反射的に俺は教室の扉を閉める。藪真琴に俺がのぞいていたことはバレるが、先生に見せるのはヤバいと思い気がついたら閉めていた。


「ん? 中に誰かいるのか? さっき大きな音がしたが」

「え、あ、いやその……ちょっと忘れ物取りにいったら椅子に足引っ掛けちゃって、ははは……」


 俺は咄嗟に適当な嘘をつく。

 だが、ここは俺の常日頃の行いの賜物。先生は何も怪しむことなく、そうか、気をつけて帰れよとだけいってその場を去っていった。


「ふぅーなんとかなったか……」


 俺は額の汗を軽く拭う。その瞬間、勢いよく扉が開かれる。


「何がなんとかなったのかな? 藤川くん??」


 そこには顔こそいつもの女神の笑顔だが、声がもう完全に違うトーンであり、怒っているは間違いなさそうだった。

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