第7話 ウインナーを食らう。
二本目のウインナーを食べ終え、バターロールに手を伸ばしました。
側面からナイフを入れて横にパカッと開き、間にスクランブルエッグとクタクタベーコンを挟んで、ガブリ!
「んっ、ベーコンもとても良い塩梅です」
その場で作るバターロールサンドは、自分で色々と調節出来るのでとても好きです。
「あ、パンもあと二個くださいな」
「か……かしこまり、ました……」
もう一つのバターロールには、ウインナーとスクランブルエッグとリーフサラダ少し。
パリッとしたウインナーの食感と、ふわふわの玉子、シャキシャキの葉野菜。なんとも言えない食感のマリアージュです。
目を瞑りゆっくりと咀嚼して堪能していましたら、どこからかゴクリと生唾を飲み込むような音が聞こえました。
パチリと目蓋を押し上げて辺りを見回しましたが、聞こえそうなほど近くにいるのは、目の前に座っているレオン様のみ。
まさかね? と思いつつ二口目を食べていると、レオン様の視線が手に持っているバターロールサンドに固定されていることに気付きました。
「レオン様も挟んで食べてみます――――?」
ウインナーとベーコンが乗ったお皿をそっと差し出してみると、レオン様がビクッと肩を震わせました。
あ、お皿を共有したり、人のお皿からつまみ食いするのは、貴族の中ではタブーでしたね。日常的に狩り場で食事をしていたので、ちょっとそこらへんがゆるゆるになっていました。
「――――申し訳ございません」
「え?」
「ついいつもの癖で」
「いつも? 癖、だと?」
あぁっ、レオン様の眉間に皺がガッツリ寄っています。はしたない女を妻にしてしまったとか後悔しているのかもしれません。
辺境伯領とても気に入りましたのに、離縁とか嫌です。
「野営飯でお肉を分け合ったり、お父様のお皿からお肉を奪ったり、お父様に無理矢理食べさせたりしていた弊害と言いますか……その……ごめんなさい」
言い訳が全く言い訳にならずにシュンとしつつ、ウインナーをフォークでブスリと差して、もぐもぐ。
「っ! くはっ! あはははは!」
何故か、レオン様が目元を押さえながら大笑いし始めてしまいました。周囲にいた使用人たちがオロオロとしています。
「クラウディア、ウインナーをひとつくれるかな?」
「え? はい! もちろんですわ! 少し冷めてしまいましたが、美味しいですわよ!」
「ん」
慌ててお皿を差し出すと、レオン様が柔らかに微笑みながらフォークでウインナーをブスリと刺しました。
「このまま噛りついたほうが、美味そうだな」
「はい! ぜひ――――」
張り切って答えた瞬間に、そもそもブッ刺してもぐもぐもマナー違反だと思い出しました。が、時すでに遅し。
レオン様がガブリとウインナーに噛りついていました。なかなかワイルドです。
「ふむ。なるほど。野営地で食べる粗雑な飯の方が妙に美味く感じていたが、食感も大きな要因なのだな」
「そうです! 食感、大切ですよね! ささっ、もう一本どうぞ!」
「クラウディア、君の分が減ってしまうぞ?」
「ハッ!」
「っくはははははは!」
レオン様にお腹を抱えて大笑いされてしまいました。
でも、なんだか打ち解けましたし、レオン様もお肉大好きメイツになってくれそうで、少しワクワクしています。
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