第五章 ~『密室と蛇』~
医官による診察が終わり、静けさが医房を包み込んでいた。
(
医官に症状を問いかけたいが、応急処置をした後に姿を消していた。
(できることなら私が犯人を……)
捕まえたいと心の中で願っていると、控えめな足音が近づいてきた。扉を開けて入室してきたのは
「
「
「事件に巻き込まれたと聞いてね。駆けつけたんだ」
「ありがとうございます。私は大丈夫です。ただ……
意識が戻らない状態が続いており、心は晴れない。
「医官によると、症状から刺されたのは早朝とのことだ。それと針には蛇の毒が塗られていたらしい」
「蛇……ですか……」
蛇と聞いて真っ先に浮かんだのは
ただ蛇だけで
なにしろ
「私は疑われているのでしょうね……」
その呟きを聞いた
「残念ながらね。ただ今回の事件の捜査は私が引き受けることになったから。理不尽な結果にはならないと約束するよ」
静慧には無理を言ったけどね、と
「このご恩は必ず返しますね」
「私たちは友人だ。困った時はお互い様だろ」
「
「それに感謝するにはまだ早いよ。なにせ真犯人をこれから探さないといけないからね」
いくら
「
「ああ。静慧が調べたけど、密室で間違いないよ。鍵も室内で発見されているしね」
つまり侵入するためには傘立ての中に予備の鍵があると知っている必要がある。だがそれは簡単ではない。
(だからこそ私が疑われているのですね……)
もし
(だからこそ私は期待に応えなければなりませんね)
謎を解くため、
「他に手掛かりがあれば……」
真相に辿り着けるかもしれない。その心の声を聞いたかのように、
「なら現場に行ってみようか」
「私は容疑者ですよ。構わないのですか?」
「いいさ。私が許す。それに証拠を隠滅するなら、時間はたっぷりあったんだ。今更、部屋に入れたとしても何も変わらないさ」
「……ありがとうございます。それでは、行かせていただきます」
「そうと決まれば善は急げだね」
意気込みながら扉を開けると、採光用の窓から差し込んだ日差しが出迎えてくれる。
(昨日、訪れた時と大きな変化はありませんね)
改めて分析してみるが、事件のヒントに繋がりそうなものはない。強いて変化を挙げるとすれば、それは壁に飾られた一枚の水墨画だろう。そこには花を摘んだ少女が嬉しそうに笑う姿が描かれていた。
「この娘……
「私も同じ感想を抱いたよ。何でも二人は幼馴染だそうだからね」
「
「事件に関わる情報は静慧から聞いているからね……特に事件現場に金を催促するような手紙が山のように積まれていたんだ。関係性は調べるさ」
なのに
「もしかして金の無心をしている村長さんは、
「親戚どころか、両親だよ」
「なるほど……それは大きなヒントになりますね」
暗闇だった真相が、一筋の光によって照らされ始める。その光はまだぼんやりとしていたが、確実に目的地へと続いていた。
(あともう少しですべてが明らかになるはずです……)
そんな時だ。開いていた扉の隙間から子狼のシロが室内に飛び込んできた。
飼い主の
ジッと何もない空間を眺めながら、警戒するように小さく吠える。その声は
(毒の匂いでしょうか……でもそれよりはむしろ……)
真相へのヒントを得た
「この部屋に蛇がいたようですね」
「どうして、この部屋に蛇が……」
「もしかしたら針はフェイクかもしれません」
「どういうことだい?」
「
「詳しく説明してもらえるかな」
「まず、この部屋ですが厳密には密室ではありません。採光用の窓が開いていましたから」
「でも天井付近にあるから人は通れないよ……なるほど、訓練させた蛇に針を咥えさせて侵入させたんだね」
「はい。部屋に侵入した蛇は、針を落としてから
「なるほど、針を落とすことによって人の仕業だと見せかけることもできる。見事なトリックだ」
密室の謎を解く筋書きは成立した。ただそのためには重要な前提条件があった。
「これを実行するには、よほど訓練された蛇が必要だね」
「それができる人物に心当たりがあります」
「
「はい!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます