第三章 ~『事件の真相と彫師の涙』~
宿舎の中で調査を終えた
中の重苦しい空気とは対象的に外の空気は澄んでいて軽やかだった。これは先程まで集まっていた野次馬たちが消えたことが大きな要因だろう。
(中に入れないから諦めたのでしょうか?)
宿舎の外壁を眺めていても楽しいことは何もない。
回廊を通り抜ける風が少し冷たさを帯びて心地よい。おかげで頭の中の推理を整理できた。
「この人殺し!」
「だから私は殺してないわ!」
女性二人の声がぶつかり合い、怒りが建物の外まで伝わってくる。その声の主が
中に入ると、
そんな二人の間に割って入るように宥めているのが
「二人共落ち着け」
「喧嘩は止めてください!」
「私の恋人が殺されたのよ! 黙っていられるはずないでしょ!」
「だから私は犯人じゃないわ」
「嘘を吐くのもいい加減にしなさい。状況から見ても、絶対にあなたが犯人で決まりよ」
決めつけるような
「私は本当に無実よ……」
「言い訳は聞き飽きたわ。どうせすぐに判決は下される。そうなったら、あなたは檻の中。その無様な姿を見て、私は溜飲を下げさせてもらうわね」
「うぐっ……」
そんな彼女を庇うように、
「
「そんなものいるわけが……」
「
「はぁ? 私が犯人なわけないじゃない! 証拠もないのに勝手なこと言わないで!」
自分のことを棚に上げて
「まずは根拠を説明しましょう。
「それがどうしたっていうのよ!」
「その酒杯をプレゼントしたのは、
「どうしてそう思うのよ?」
「そのガラスの酒杯には梅の花の美しい彫刻が施されていました。その彫刻に見覚えがありましたから」
展示会で
「そうよ、私が酒杯を贈ったわ。でもね、それがどうしたっていうの?」
恋人なのだから贈り物をしても不自然ではない。それが犯人である証拠にならないと主張するが、
「あなたはプレゼントしたガラスの酒杯、その表面に毒を塗ったのです」
「あなたは
「だから梅酒に合うガラスの酒杯を贈ったのです。もし
その推理に耳を傾けていた
「なるほど、これで
「
「そして犯人の候補となる人物は……」
「
調べれば毒が梅酒に盛られたのか、それとも酒杯に塗られていたのかも判明するだろう。言い逃れはできないと悟ったのか、
「――っ……認めるわ。私が
愛情が殺意に、贈り物が凶器に変わり、毒をのませる決断へと至ったのだ。その事実を暴かれた今、彼女の中で押し殺していた感情が溢れ出していく。
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