冒険者に憧れてフラーっと町を目指したが、外は危険がイッパイだった

犬時保志

第1話 カコク村

「おう!ゴブリンごとき俺達にかかればイチコロだ!」

 村にやって来た冒険者達に、僕達は群がり話を聞いてる。


 冒険者達は、僕達に身振り手振りで大袈裟に面白可笑しく話てくれる。

「「「すげぇ!!じゃオークは?」」」


「俺達は護衛専門、街道にオークは現れん。その代わり傭兵崩れの盗賊が頻繁に出没する!盗賊や強盗を蹴散らすのが俺達護衛の仕事だ!」

「「「「「すげぇ!」」」」」


 子供らしい憧れが盲目的に商人の護衛達、中級冒険者のホラ話に聞き入っていた。


 普通なら仕事をサボるなと怒鳴られる所だが、行商人が来た時は特別で行商人が滞在する3日は休養日になり、お金が無いので購入は出来ないがお祭り気分を味わう事は出来た。


 でも僕は知ってる、よそ者に村の実情を悟られない為に、平和な村をよそおう為だって、だからなおのこと行商人を護衛して村に連れて来る自由な冒険者に僕達は憧れた。


 冒険者達の盛った話や架空のホラ話を真に受け、殆どの少年は冒険者に憧れ7歳になれば町に行き冒険者登録すると、密かに決意するのだった。




 僕もその内の一人、10人程の子供仲間で一番背が高く体格が良いので皆の親分になってる。


 実は僕には前世日本の記憶がある、記憶と言っても11歳小学5年で事故死するまでの僅な記憶だ。

 その記憶では、冒険者と言えば剣で魔物を薙ぎ倒し依頼をこなす者だ。


「剣術訓練始め!!」


 遊べる3日を有意義に使い、将来の為に各自棒切れを振り回し剣術の真似事を始めた。




「アラン君、私も仲間に入れて!」


 僕ん家ちのお隣、同い年なのに姉さんぶる口喧くちやかましいレイラちゃんが来た。

 仲間外れにすると、有ること無いこと僕の母ちゃんに告げ口する、ウザイけど作り笑顔で。


「良いよ木剣木切れ持って、僕と剣術訓練しよう!」

 何が嬉しいのかレイラちゃん、花が咲いた様な満面の笑顔してた。




 厳しい(笑)訓練の3日、初め木剣木切れを受けそこなって頭にタンコブこしらえたり、木剣握った手を打たれ悶絶したり大変だった。


 痛いのが嫌になったのか、僕にレイラそれにデイダの三人だけになった。


 木剣で殴られると非常に痛い!充分思い知ったこと、僕達三人は受けたりたいわすのが凄く上手になった。




 畑の草むしり、野菜の収穫など5歳の子供が満足に出来るはずの無い作業の毎日が繰り返され、6歳になり秋には7歳になる年に水不足の日照りが続いた。


 夕食後、レイラとデイダに僕の三人は家を脱け出し集まった。

「アラン不味い事に成りそうだ!僕は口減らしで奴隷商に売られる!」

 デイダの親なら遣りそうだ。

「日照りで農作物が枯れてる、私も売られると思う」

 レイラの親と言うより、日本の記憶がある僕からすれば、カコク村の住民は異常だ!

 総領息子そうりょうむすこの跡取り長男のみ大切に育て、次男以下や女の子は、不作の時口減らしと収入の為に平気で奴隷商に売る村だ。


 兄貴も僕を農奴扱いする。

「・・・カコク村を脱出して町で冒険者になるか?」

「うん!!」

「アラン君が着いて来てくれたら、上手く行く気がするわ!」


 水筒を腰に、大切な木剣こん棒を持ち、7歳前の僕達の無謀な冒険の始まりだった。

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