第10話 死を恐れないで

(奏…咲季…。

短期間で二人もエスフィリアが入った。)


先日の原子力発電所での戦闘では、優利はあまり貢献できなかった。その前のイロハとの戦いでもそうだ。


(…私では、力不足だというの?)


完璧主義な優利は、自分に苛立っていた。


---


「サキ、あんたはエスフィリアに向いてるかもしれないね。」


エスフィリアの館の一室で、おばさんは咲季に話しかける。


「え、ホントですか!?嬉しいです。

でも、なんでですか?」


「あんた、誰にでも優しいんだってね。

カナデから聞いてるよ。

そういう子は友愛がいっぱいあって、エスフィリアの力をいっぱい引き出せるんだよ。エスフィリアの力の源は友愛(フィリア)の力だからね。


それともう一つ、人間は知らず知らずのうちに限界を決めつけて、自分の実力や才能に蓋をしている。それを乗り越えられたのは、私でもすごいと思うよ。」


「えへへ。それほどでも。」


浮かれる咲季。それもそのはず、彼女はあまり褒められたことがないからである。


優利が部屋に入る。


「サキ、あんまり浮かれないでよ。

エスフィリアは甘くないのよ。」


深刻な表情だ。


「最近はたまたま勝ててきてるけど、普段は負けて撤退することも多いのよ。」


「…

勝てるように、します。」


覚悟を決めた表情で。

その想いは優利の咲季に対する考えを変えた。


「期待、しているわよ。」


正直、自分より"劣っている"奏や咲季がエスフィリアになれるとは思っていなかった。

しかし、エスフィリアになって、奏や咲季が自分の殻を破ったのがわかる。

彼女らがエスフィリアになれたのは、自分と同じくらいエスフィリアに向いているから。そう感じた。





「そうだ。連絡先、交換しておかない?今後は連絡すること、あるだろうし。」


「あ…。

はいっ!」


少し恍惚としたような表情で道礼を見上げる。

彼女の綺麗な顔が咲季の瞳に映る。


そして二人ともスマホを取り出す。

ピンク色の咲季のスマホを、黒色の道礼のスマホにかざせば。


--黒輝道礼と友達になりました。--


二人は『友達』である。


(ミレイさんと…お友達に…!)


黒輝道礼のSNSのアイコンは意外にも初期アイコンだった。そういうのには興味ない人なのかもしれない。


「浮かれてるフワ〜?」


物理的に浮いているフワリンがからかう。


「う、うかれてないフワ!」


思わず「フワ」をつけて返してしまった。


「フワフワ〜?」


ホントに〜?的なニュアンスだろうか。




「サキはまだエスフィリアになったばっかりだから、ボクがエスフィリアのルールを教えてあげるフワ!まず、ボクと話すときは語尾を自分の名前の一部にしないといけないフワ!」


「そうなんだサキ〜。」


「はあ、そんなルールはないわよ。」


道礼が突っ込む横で、優利は意地の悪い笑いを浮かべている。それを見て咲季はやや怒りに近い感情をおぼえた。


「エスフィリアのルールっていえば、恋愛禁止とか、遺書とかでしょ。」


「え、なんで恋愛できないんですか?」


「私が答えるよ。」


おばさんだ。


「結論から言おうか。

恋愛はね、フィリアを阻害するんだよ。

恋愛は、一人の愛を独占する。だから、多くの人に愛を与える博愛(フィリア)とは相容れない。

恋愛によって、憎しみや嫉妬といった負の感情が生まれることはあるだろう?そういうことさ。」


そうした負の感情も、影の勢力を勢いづかせるのだろう。


「もし今の時点で恋愛対象の人がいるなら、申し訳ないけど、諦めるんだね。」


「恋愛したい人とかはいないんで、大丈夫だと思います…。

なんで…遺書、書かないといけないんですか?」


その言葉とは薄々気づいていた。


「エスフィリアはいつ死ぬかわからないからね。

寿命や病気で死ねるほうが珍しいんだ。

先代のエスフィリアも君達と同じ年齢で亡くなってるんだよ。


そんな訳で、残された遺族たちを悲しませないために書くことを推奨しているのさ。」


それを聞いても咲季は動じなかった。むしろ、決意が固まったように見えた。

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