第7話 響きあう心、友愛の調べ
「♫〜。」
「♫♩〜。」
エスフィリアの館に心地よい音色が響き渡る。
その音色の元を辿れば、黄金のハープ。
「♩〜。」
演奏が終われば、静かな余韻を残す。
「綺麗な演奏だったね。」
館の持ち主であるおばさんが話しかける。
「そのハートテラーは澄んだ心を持ってる人にしか使えないと言われているんだ。」
「そうなんですか。
わたしってそんなすごいんですか!?」
奏は穏やかに興奮したような声をあげる。
「そうだね。エスフィリアになれるだけですごいんだよ。
ようやく三人目が見つかって、わたしゃひと安心だよ。」
「えへへ、これから世界の平和を守っちゃうぞ!!
えいえい!」
明るい様子で、シャドーボクシングのポーズを取った。
「ふふ、期待しちゃおうかしら。
それじゃあ、"心を一つに"がんばってね。」
おばさんは手を振って外に出る。これから昼ご飯の買い出しだ。
さて、一人残った奏は勉強でも始める。
中学三年生、受験期。決してライバルたちには負けられない。
彼女が目指すのは県立希望ヶ原高校。
特になんの変哲もない、普通の郊外の高校である。偏差値54程度で、奏の偏差値とほぼ同等。
模試ではB判定。不安が残る。しかし、それに負けないように今、勉強をしている。
一時間経過。
「ふあぁ。」
それでも眠くなる。勉強、趣味のヴァイオリン、エスフィリア…彼女たちは(奏に限ったことではないが)忙しい。
「そろそろ休憩しよっか。」
そう言って出した、ヴァイオリン。
一時間越しの音楽、飽きないのか。
「♫ ♫ ♫ ♩。」
それは天使のような優しさを持った音色。聞くものを魅力するに足る美しさを持っている。洗練された腕の動きは素人目に見てもかなり練習したことが窺える。
今日も彼女の音色に惹かれた者が、一人。
「音楽、好きなの?」
美しい黒髪を靡かせた少女。黒輝道礼だ。
「はい!とっても大好きです!
夢はプロのヴァイオリニストなんです!」
「そう…。
あなたならきっとなれる、そう感じる。
今までもずっと努力してきたんでしょう?」
道礼は涼しげな笑顔で話す。
「結果的に努力しちゃってますね。」
奏は照れるように笑う。
「楽しいから続けてこれたんです。
じゃなきゃこんなに打ち込めないですよ。」
この子には自分とは違った強さがある。そう感じとった。
「私とは違うのね。」
「え?」
「私は練習は辛いものだと思っていた。
でも、あなたは違うのね。
とっても素敵。」
「それほどでも〜!」
口ではそう言っているが明らかに喜んでいる。
(そういうところが彼女の魅力なのね。)
「…ところで、どういう音楽が好きなの?
やっぱりクラシック?」
「よくぞ聞いてくれました!
奏ちゃんはヴァイオリンで弾くのはクラシックが好きだけど、普段はロックとかポップも聴きますよ。ただ一つに決めるとなると…難しいですね。
レイさんはどんな音楽がお好きなんですか?」
「…あなたに聞いておいてしまってアレだけど、
…私…音楽のこと…あまり知らないから…。」
…
「じゃあ布教しちゃおうかな!
こんな曲はどうですか?」
と言って片耳だけイヤホンを差し出す。
つけろ、ということらしい。
「?」
不思議そうにイヤホンをつけると、奏はもう片方のイヤホンを耳につけてスマホを操作し始めた。
イヤホンから流れてきた曲は中堅のロックバンドの曲。ほどほどの知名度ながら実力は確かであり、この曲は王道派のアニメの主題歌として提供されたものでもある。使われたシーンが感動的だったことも相まって「隠れた名曲」と名高い。
情熱的なメロディに鳥肌が立つ。
「力強い曲…
強い意志が伝わって、私も引き込まれそうになる。」
「わかりますよ!
…これが音楽の力ってやつです。」
「素敵ね。」
もっと聴きたい気持ちもあったが、奏が勉強中だったので切り上げることにした。
「また今度聞かせて。」
「もちろん!」
道礼と奏を繋いでいるイヤホンのように強い絆はまだない。だが、それ以上の絆を彼女となら作れる、そう二人とも感じていた。
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