第24話 サムライ、不浄の賢者と相対する

「……この距離では間に合わん!」


 宗介は亜空間インベントリで重藤弓へと切り替え、矢を番えた。


 手の中に再び蘇る武士の幻影。

 風の音とともに扇の的を射る姿が重なり、宗介の目が鋭く光る。


 指先に全神経を込め、矢尻が輝く骸骨の手を捉えた。


《判断力すげえ!》

《弓なら間に合うか!?》

《詠唱妨害の一手……期待!》


 賢者の詠唱が佳境に差し掛かり、バルドが前線を持ちこたえていたが、全身から発せられる黒紫色の魔力に弾き飛ばされる。


「くそぉーーっ!」


 壁に打ち付けられたバルドを横目に宗介が弓を引き絞り、鋭い一閃を放つ。

 矢は賢者の手元を精確に射抜いた。


 魔法の光が揺らぎ、詠唱が乱れる。

 賢者が咆哮を上げながら宗介を睨みつけた。


《弓の威力、エグいなww》

《きたー! 詠唱妨害成功!!》


{素晴らしい一撃です!}

「ソースケよくやった! 前線を押し上げるぞ! レオナ!」

「わかっています!」

「よし……今度こそ決める!」


 宗介は弓を亜空間インベントリに戻し、恒次つねつぐを握り直した。


 ライラが妨害アイテムを使用し、賢者の動きが僅かに鈍くなる。


「皆さん! いまのうちに!」

{賢者の魔力はまだ衰えていません。ライラさんの支援を最大限に活用してください}


 その隙を突き、バルドが大斧を振りかざして猛然と突進する。


「俺の一撃を食らえ――ッ!」


 大斧が賢者の結界を砕くように叩きつけられ、紫の光が激しく揺らぐ。

 しかし賢者は両手を掲げ、再び魔法陣を展開しながら反撃の呪文を放つ。


「ぐぅっ……!」


 バルドが魔力の衝撃波をまともに受け、後方へ吹き飛ばされた。

 だが、その瞬間を狙い、レオナが鋭い剣技で間合いを詰める。


「バルド、無理はしないで! 次は私が!」


 レオナの鋭い声が響き渡り、彼女は迷いなく前線に踊り出た。

 手にした剣が力強く光を反射し、彼女の意志の強さを映し出しているようだった。


「この怪物を相手にしても、怯むつもりはありません!」


 剣聖ソードマスターの名に恥じない剣技が、賢者の結界を次々と切り裂いていく。

 彼女の足捌きは軽やかで、的確な間合いで賢者に接近していく様子に視聴者のコメントが沸き立つ。


《レオナさん、強すぎる!》

《剣技が華麗すぎて見惚れる……》

《やっぱり剣聖ソードマスターは格が違うな!》


 賢者が紫色の魔力を放ちながら腕を振るうと、数本の魔力の槍が現れてレオナに向かって飛んできた。

 彼女はそれを難なくいなし、一瞬の隙を突いて賢者の側面に回り込む。


「これで……どうですか!」


 彼女の剣が鋭く閃き、賢者の外殻を大きく抉る。

 紫黒の煙が漏れ出し、賢者の動きが一瞬だけ鈍った。


 だが、その一撃では倒しきれない。

 賢者は異様な呻き声を上げながら、巨大な魔法陣を展開し始めた。


「そんなものはっ……!」


 レオナは再び間合いを詰め、渾身の連撃を叩き込む。

 剣の一撃一撃が的確に賢者の結界を削り取り、あと一歩で身体に届きそうだった。

 しかし――賢者の紫黒い体が不気味に輝き、鋭い魔力の衝撃波が発生した。


「ぐっ……!」


 レオナは反応が遅れたわけではなかったが、賢者の防御魔法の激しさに押し返され、足元をすくわれるように後退を余儀なくされた。

 その隙をついた賢者の猛反撃が彼女を襲う。


「きゃっ……!」


 魔力の波が彼女を包み込み、弾き飛ばす。


「二人とも!」


 ウィチカがカバーに入る。

 その時、宗介の中で何かが目を覚ましたような感覚が広がる。


「……なんだ?」


 恒次つねつぐが手の中でわずかに振動し、かすかな黄金の輝きが刃から漏れ出した。


{宗介様、刀が……光っています……! 一体、何が起きているのでしょう?}


 グリモアが驚きの声を上げる中、宗介の意識は刀と一体となっていく。

 

 彼の目の前に広がるのは、これまで渡り歩いてきた戦場の記憶――。

 血の匂い、苦しむ声、倒れる仲間……そして、光を求める人々の姿。


「……この光は、剣を持つ者の覚悟の証か」


 宗介の心の中で、剣士としての使命がはっきりとした形を成す。


「その陰鬱な妖気を、この場から消し去る!」


 宗介は恒次つねつぐを掲げ、賢者から発せられる妖気に向かって踏み込んだ。

 仲間たちがその動きを追う。


「ソースケ、無茶するな!」


 バルドが叫ぶが、宗介は一瞥もせず前進を続けた。

 彼の背中から漏れ出す気迫が、バルドやレオナの戦意をさらに高めていく。


「この技は、妖気を断つための刃だ……!」


 不浄の賢者が最終呪文を放つべく、手を掲げる。

 そのとき、宗介の上段に構えた恒次が閃き、黄色い光が暗闇を切り裂いた。


 「光輝こうき――!」


 賢者の放つ闇の魔法が光に飲み込まれ、消滅する。

 刃が賢者の胸部を穿ち、紫黒い体が崩壊していった。


光輝こうきだと!? これ新技じゃん!》

《妖気を断つってセリフ、鳥肌立った!》

《ソースケ、剣技の進化止まらねえw》


 静寂が訪れる中、賢者の残骸が床に崩れ落ちる。

 その場で疲れ切った宗介を、バルドが豪快な声で迎えた。


「ソースケ! お前、あんな技いつの間に会得したんだよ!」


《ソースケの覚醒シーン最高!!》

《バルド兄貴もいいアシストしてたぞ!》


 宗介は恒次つねつぐを鞘に収め、息を整える。


「……戦場いくさばの中で得た。ただ、それだけだ……」


 レオナが歩み寄り、その目に興味と敬意が宿る。


「ソースケ……さん。すごかった」


 視聴者のコメントもレオナの発言に共感が広がる。


《レオナもナイス削りだった!》

《この2人の絡み、もっと見たい!》


「うんうん、すごい一撃だったねぇ」


 ウィチカが微笑みながら軽く拍手を送る。


剣聖ソードマスターレオナよ、そなたの働きも見事であったな」


 仲間たちが静かに頷く中、ライラが小さく手を挙げた。


「私の罠の支援も役立ちましたか!?」


《ライラちゃんの罠、実は影のMVP説ある!?》

《罠で賢者の動き鈍らせたおかげ! 間違いない!》


 その問いに、宗介は一瞬言葉に詰まったが、すぐに口角を上げた。


「……ああ、すべてが合わさった結果だ。治療してくれたウィチカにも感謝せねばならん」


《ソースケ、感謝の言葉渋すぎwww》

《こういうところがサムライの器よな……》

《マジでこのパーティ最高!》

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