第14話 サムライ、日常を配信する―前編

 宗介は恒次つねつぐの修繕が終わるまで、グリモアの提案で日常を配信することになった。


{宗介様、視聴者リスナーから『食事風景を見たい』というリクエストが多く寄せられています}

「……飯を食うところを、配信だと? 何が面白いのだ?」

{食事は視聴者が共感しやすい日常の一部です。それに、あなたがどういう食生活を送っているかを知りたがる人も一定数います。あなたが食べる量を考えると大食い配信もウケると思いまして}


《ソースケの飯配信www》

《大w食wいw配w信w》

《グリモアの理解深くて草》


 仕方なく食堂へ向かった宗介は、次々と料理を注文する。

 大皿に盛られた肉の塊や光るスープなど異世界の品々が並び、テーブルは瞬く間に埋まった。


「この飯にもだいぶ慣れてきたところだ」


 視聴者はその豪快な食事風景に沸き立つ。


《めっちゃ頼んでるw》

《爆食いサムライww》

《戦士の食事はこうあるべきだ》

《ソースケは前の世界では何食べてたんだ?》

《サムライの胃袋が底なしw》


 宗介は手際よく料理を平らげながら、視聴者リスナーの問いに対して戦国時代の保存食について語り始める。


「当時は味噌玉や干し魚が主だった。これだけの贅沢を一度に味わえることはなかったな」


 彼の素朴な解説に、視聴者リスナーからは感動の声が寄せられる。


《味噌玉って何w気になるw》

《保存食の話、渋くて好き!》

《これがサムライのリアルw》


 宗介が完食するとスパチャが流れ始めた。


《完食おめでとう!》

《これで次の飯代にどうぞw》

《胃袋に乾杯!》


 食事の後、宗介は修練場へと向かった。


 修練場の一角で、宗介は静かに腰を下ろし、剣を膝に置いた。

 目を閉じ、深い呼吸とともに意識を内側へ向けていく。


「……己を知ることなくして、何を鍛えるのか……」


 宗介は心の中で過去の戦いを反芻する。

 剣を交えた敵、掴み損ねた間合い、そして勝利への道筋――すべてを頭の中で再現し、改めて分析する。


《これも鍛錬なのか?》

《サムライの黙想、渋いけど絵面地味w》

《瞑想ってやっぱり強者の習慣なんだな……》


 黙想を終え、宗介はゆっくりと目を開けた。

 その瞳には、研ぎ澄まされた集中力が宿っている。


「……よし、行くぞ」


 彼は立ち上がると、近くに置かれていた鉄製の重りを手に取った。

 まずは腕力を鍛えるために持ち上げる動作を繰り返す。


「この異世界の器具は重いが、これがなかなか……」


 宗介が重りを持ち上げるたびに、筋肉が盛り上がり、視聴者が歓声を上げる。


《サムライの筋トレ始まったwww》

《これが現代技術で鍛えられる筋肉か》

《腕立てだけじゃない! 進化するソースケ!》


 続けて宗介は腹筋運動に移り、規則的に体を起こしていく。

 額に汗がにじみ、呼吸が荒くなりながらも、その動きは乱れない。


《なんだこれ……無駄に美しいw》

《やっぱ鍛えてる人の動きは違うな》

《これ見てると俺も筋トレしたくなるw》


{宗介様、基礎トレーニングは身体の土台を作るために重要です。筋力をバランスよく鍛えることで、実戦での持久力や瞬発力が向上します}


《グリモア、解説助かる!》

《これ見ながら俺も腕立てするわw》

《鍛えた筋肉はをどう活かされるのか気になる》


「なるほどな。だが、ただの筋肉の塊では戦えん。実戦で鍛えた動きこそ肝要だ」


 宗介が汗を拭きながら言うと、グリモアがすかさず答える。


{そうですね。では次に、動的トレーニングを取り入れましょう。筋肉の使い方を覚えつつ、実践的な動きを習得します}


 宗介が長剣を手に取り、広場の一角で静かに構えを取る。


「型を繰り返すことで、剣の動きを身体に覚え込ませる……。戦国の世ではこれが鍛錬の基本だった」


 宗介は真剣な表情で言葉を呟きながら、剣を振るう。

 縦横無尽に切り払う鋭い一閃、華麗に流れるような踏み込みと回転。

 見る者を圧倒する気迫が漂う。


《動きが美しい……!》

《やっぱソースケはサムライだよなぁ》

《これ見てるだけで鍛錬の意味がわかる気がする》


「ふむ、長剣も馴染みつつある。この武器の癖を理解すれば、俺の剣術もさらに進化するだろう」


 素振りを終えた宗介が剣を収めると、グリモアがタイミングよく声をかける。


{宗介様、素振りや型の練習は重要ですが、基礎をさらに活かすためには実戦を意識した動きも必要です}

「つまり……?」

{次はホログラム訓練を導入しましょう}


「……なに?」

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