英雄へ至る道~目指すは最強の冒険者~

冬冬フユ@Septem Felis

プロローグ

 世界の大穴ダンジョンに求めるものは人それぞれ。


 富を求めて冒険者になる者。

 名声を求めて冒険者になる者。

 出会いを求めて冒険者になる者。

 成り行きで冒険者になる者。


 千差万別。

 冒険者の数だけ、その望みは異なる。


 少年が望むのは最強の冒険者。

 世界に名を残す平和の象徴。

 英雄亡き時代の新たな象徴。


 ありふれた望みではある。

 英雄に憧れて冒険者を目指す者も大勢いる。


 しかし、冒険者として大成する者はその中の一握りだけで、多くは有象無象に成り果てる。


 冒険者として大成する者にはそれだけの素質があり、英雄となれば尚更だ。


 努力でどうにか出来る範疇を大きく逸脱し、数多くの冒険者はその壁に阻まれ、望みを捨てる。


 冒険者の世界は厳しい。

 実力至上主義だ。


 己の実力に見合わない大望を抱き、抱いた手を離すことが出来ずに命を落とす。


 そんな冒険者は枚挙に暇がない。


 しかし、少年の望みもその一つ。

 ダンジョンに潜り、日銭を稼いでは、またダンジョンに潜る。


 ラビリスの街に来て五日目。

 英雄を目指すことの困難さが身に染みて分かった今日この頃。


「一匹ずつにっっ…………!!!」


 何十匹もの小鬼ゴブリンに少年は追いかけられていた。一対一、一対二くらいなら相手に出来るものの、何十匹となれば逃げるしかない。


 走って、走って、走って————


 逃げる少年をゴブリンは執拗なまでに追いかけ続ける。逃げ切れないのは少年の走る速度とゴブリンの走る速度が五分五分だからだ。


 走って、走って、走って、走って————


 少年は今日もまた、ダンジョンを逃げ回るのだった。

 

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