第3話
ネイトが図書館を出て向った先は、学校の裏庭だった。
日が落ちてきて、屋外はかなり寒い。
魔法用の杖は持って来たのに、コートを忘れたことを後悔する。
暖かい部屋の中で、温かいお茶でも飲みながら、レポート書いているはずだったんだ、今頃は。
アシュリーのせいだ。
「雪を降らせる魔法」だなんて言うから、つい興味がわいてしまったじゃないか…
これでレポートが書けなけりゃ、どうするんだよ……
「まぁ、嫌いじゃないんだけどね、こういうこと」
結局、魔法が好きなんだと、ネイトは思う。
魔法だけじゃないけど……とも。
裏庭には、小さい噴水があった。
水の勢いはあまり無く、噴き上がる高さもさほどでは無い。
それが下に落ちる時には、ポタポタと水滴のようになる。
そこに風が吹きつけると、さらに小さな粒となって、辺りに散った。
「このくらいの粒なら、行けるかもしれない」
ネイトは、手に持った杖を、噴水の水に向けて構える。
そして、魔力を集中させた。
「冬の冷気よ、我が手に集いて氷の華を結べ。
呪文を唱える。
杖の先から青白い冷気が放たれ、噴水の水が凍り付く。
粒状に落ちていた水も、そのままの形で氷になっている。
「……あれ? ちょっと大きい?」
ネイトがよく見ようと、眼鏡を持ち上げた時……
強い北風がビュワッと、ネイトに向けて吹付けた。
その風に乗って、今、凍らせたばかりの氷の粒が、ネイトに襲いかかる。
「わっ! 痛たたたっ!」
氷の粒は、固く凍りついていて、身体に当たるとかなり痛い。
「こんなものが空から降ってきたら、ケガしちゃうよなぁ……」
制服に付いた氷の残骸を払いながら、ネイトがつぶやく。
ケガ……。
自分で言った言葉に、目を見開く。
そして、杖を握った手を見つめた。
「……だよね。だって『氷結魔法』は攻撃魔法だ」
攻撃魔法。
当たった相手に
授業で、そう教わった。
どうすれば大きい効果、つまり大きい
ケガを直す
「当然だよね、魔法騎士養成学校だもの」
魔法と武力を兼ね備えた騎士を養成する学校なのだから、全ては戦うための勉強なのだ。
皆、それを目指して入学する。
ネイトだって、その一人だ。
「ああ、そうか……」
ネイトは目を閉じる。
今、分かった。
なぜ、「雪を降らせる魔法」に、興味を持ったのか……
なぜ、こんなに雪を降らせたいのか……
アシュリーのためだとばかり、思っていた。
「……よし」
ネイトは目を開いて、払い落とした氷の粒を見る。
寒くなってきたせいか、まだ粒の形を残しているものも多い。
手に取ってみると、雪の感触とはほど遠いのが分かる。
「もっと小さい粒を作らないと……」
手のひらの氷は、すでに溶けていた。
続く
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