第16話 焼き払う

 新発田五郎が大学爆破を遂行した後、彼の復讐心はさらに深まった。社会の不公平、腐敗、そして彼自身が受けた数々の理不尽な仕打ちが、彼を次なる極端な行動へと導いていった。大学爆破が一つの成功を収めたことで、彼は次なるターゲットを定める。今度は、病院だった。


 病院は、五郎がかつて父親を失った場所でもあった。父親は、ある病院の医師によって誤診され、その結果命を落としたのだ。五郎は、長い間この不正を許せずにいた。医師たちの無関心と、病院内での権力争いにより、多くの命が無駄にされている現実に、彼の怒りは募っていった。


 そして五郎は、病院内の腐敗に関する情報を収集し始めた。病院の管理体制、スタッフの不正行為、そして患者たちがその影響を受けている状況を知るにつれ、彼の決意は固まった。彼は病院を標的にし、過去の事件の「仕返し」として、次の爆破計画を練り上げることになる。


 五郎は、病院内に潜入し、爆破装置を仕掛ける計画を着々と進めた。彼は再び、精密に計算された手順で爆破を決行する準備を整えた。病院は昼間のピーク時間に患者で溢れており、五郎はその混乱を最大限に利用するつもりだった。患者やスタッフが最も多く集まる時間帯に、爆弾を仕掛けることで、最大の破壊を狙った。


 計画実行の日、五郎は再び冷静に行動した。病院内に設置した爆薬は、複数の場所に仕掛けられ、全てが同時に爆発するように設定されていた。彼はすべての準備を終えると、まるで何事もなかったかのように病院を後にした。


 数時間後、爆発が発生した。病院は一瞬で崩壊し、無数の人々が巻き込まれた。爆破の影響で建物の一部が完全に倒壊し、内部は火の海となった。患者、医師、看護師など多くの命が失われ、病院内での避難が間に合わなかった人々は命を落とした。この爆破は、まるで五郎自身の復讐劇のように、社会に深い衝撃を与えた。


 爆破事件はすぐにメディアで報じられ、社会全体がその背後に潜む理由を知ろうと試みた。五郎の名前は次第に注目を集め、彼が背負ってきた過去や動機が浮かび上がることとなった。しかし、五郎は事件後、またも姿をくらます。逃亡生活が始まる中で、彼は直江の組織との繋がりを強めていくことになる。


 五郎はその後も、直江の冷徹な戦略の一部として活躍し、組織内での地位を固めていく。しかし、彼の中には依然として自らの過去に対する憎悪と復讐心が燃え続け、次なるターゲットに対する計画を密かに温めていた。病院爆破が彼にとっての大きな「一歩」となり、直江の力を借りながら、さらに危険な領域へと足を踏み入れていくことになる。


 新発田五郎は、社会の無理解と不正に対する怒りと復讐心を募らせる中で、次なるターゲットを定めることになる。彼が選んだのは、直江の組織が拠点としている「卍村」だった。


 卍村は、直江の秘密基地とも言える場所であり、彼の組織が人々を支配し、様々な犯罪行為を実行している拠点であった。五郎は、直江の冷徹な戦略と組織の強大さをよく知っていたが、彼にとってはその全てが過去の復讐の一環に過ぎなかった。


 五郎の怒りは、単なる組織への反発ではなかった。卍村は、彼にとって「抑圧」と「腐敗」の象徴でもあった。直江が組織を強化し、周囲の人々を冷徹に支配していく中で、五郎は自らの力を試す時が来たと感じた。卍村の破壊こそが、彼にとっての最終的な答えであり、過去の全ての傷を癒す唯一の方法だった。


 計画を練った五郎は、精密な爆破計画を立て、卍村に潜入した。五郎は組織の中での位置をしっかりと把握しており、村内の隅々まで把握していた。彼は一度も外部と接触せず、慎重に爆薬を仕掛ける準備を進めた。卍村には、直江を含む組織の幹部たちが集まっており、その全員を標的にするために、爆発は全体を巻き込む形で仕掛けられた。


 爆発当日、五郎は計画通りに爆破を開始した。卍村内の建物が一瞬にして炎に包まれ、逃げ場を失った幹部たちは次々と崩壊する建物の中に取り残された。村内にいた者たちは全員が命を落とし、直江の組織の拠点は壊滅的なダメージを受けることとなった。


 爆破後、五郎は再び姿を消し、その後の行方は分からなかった。卍村の焼け跡は、社会に大きな衝撃を与え、その背後にある理由を解き明かそうとする者たちが続々と現れた。五郎の行動は、彼自身の過去に対する究極的な復讐とともに、直江の組織を大きく揺さぶることとなった。


 この事件によって、直江の組織はその基盤を失い、再建には膨大な時間と資源を要することとなった。五郎の行動が引き起こした混乱は、直江にとっても予想外の打撃となり、彼は次第にその影響を感じ始めることとなる。卍村焼き払いの後、五郎は新たな目的に向かって動き出すが、その道の先に何が待ち受けているのかは、誰にも分からなかった。


 新発田五郎の復讐の道は止まることなく続いた。卍村の焼き払いに続き、次に彼が選んだターゲットは、街にある大きなゲームセンターだった。外見はただの娯楽施設に過ぎないように見えるその場所だが、五郎には別の意味があった。


 ゲームセンターは、直江の組織が裏で人々をコントロールするために利用していた拠点の一つだった。そこでは、賭博や違法な取引が行われ、無関係な若者たちが意図せずに組織に引き込まれていた。五郎はその事実を知り、また、自分が過去に受けた理不尽な仕打ちを思い出し、再び怒りを燃やした。


 ゲームセンターはただの表向きの顔に過ぎなかった。その中で行われる賭博や薬物の取引、そして若者たちをターゲットにした犯罪行為。五郎は、そうした悪行を一掃するため、ゲームセンターを燃やすことを決意する。


 準備は念入りに行われ、五郎は再び計画的に爆薬を仕掛けていった。ゲームセンター内の隅々に火薬を配置し、周囲を避けるために最小限の被害で済むように工夫を凝らした。爆発は一瞬のうちにゲームセンターを焼き尽くし、内部で行われていた違法活動も全て無に帰した。


 爆発の瞬間、周囲にいた人々はその衝撃で驚き、慌てて逃げ出したが、五郎はその後、素早くその場を去った。爆破後、ゲームセンターは炎に包まれ、警察や消防が駆けつける頃には、すでに五郎の姿は見えなくなっていた。


 この行動は、またしても社会に衝撃を与え、直江の組織への警戒を強めることになった。五郎の名は裏社会や犯罪組織の中で知られることとなり、彼の目的はますます明確になっていった。それは単なる復讐だけでなく、彼自身の信じる正義を取り戻すための行動でもあった。


 だが、五郎の行動は決して無傷で済むわけではなかった。直江をはじめとする組織のメンバーは、この新たな脅威に対し反応を示し始める。そして、五郎の復讐は、次第に更なる戦いへと引き寄せられていくのであった。




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