第12話 真田秀則の訪問
薄暗い地下室。生命維持装置につながれた山県は、生気の無い瞳で真田秀則を見つめていた。かつての冷酷な支配者の面影は影を潜め、今はただ、虚ろな存在と化していた。
「山県…、お前をこんな姿にするとは、烏丸め」
真田は、かつての盟友であり、今は敵となった烏丸を恨みながら、山県に語りかけた。
「秀則か…懐かしいな」
山県の声はかすれ、まるで機械から発せられる音のようだった。彼は、ゆっくりと目を閉じ、そして再び開いた。
「お前も、随分と変わったな。あの頃の輝きはどこへ行ったんだ?」
山県の言葉に、真田は顔をしかめる。
「そんなことより、お前をこんな状態にしたのは誰だ!」
真田は、拳を握りしめ、山県に詰め寄る。
「烏丸だ。彼は、私の力を利用して、世界を支配しようとしている」
山県は、力なく答えた。
「烏丸か…やはりそうか」
真田は、烏丸の野望を確信した。彼は、山県をこの状態から解放し、共に烏丸を倒すことを決意する。
「安心しろ、山県。必ずお前をここから連れ出す。そして、一緒に烏丸を倒す」
真田は、そう誓い、山県の手を握りしめた。
一方、瑠衣たちは基地の奥深くで、山県と烏丸の最終兵器を発見する。それは、人間の意識を操り、大規模な混乱を引き起こすことができる装置だった。
「これは…!」
瑠衣は、装置の恐ろしさを悟る。もし、この装置が起動すれば、世界は再び混沌に陥ってしまうだろう。
瑠衣たちは、装置の起動を阻止するため、必死に戦う。激しい銃撃戦の末、彼らは装置を破壊することに成功するが、その直後、山県と烏丸が現れる。
山県と烏丸は、完全な状態で復活し、瑠衣たちを圧倒する。しかし、直江と山県は、かつての友情を思い出し、一瞬の隙を見つける。
直江は、山県に語りかける。
「山県、我々はかつて、共に夢を追い求めた仲間だったはずだ。なぜ、こんな道を歩むんだ?」
直江の言葉に、山県の心が揺れる。彼は、一瞬、過去の自分を取り戻したかのように見えた。
しかし、烏丸は、そんな山県を許さない。彼は、山県を操り、瑠衣たちを攻撃する。
直江は、かつて自分が信じてきたものを裏切られたと感じていた。かつて関わっていた食品工場や自動車工場は、彼の力をもって成り立っていたような場所だった。しかし、時が経つにつれ、彼らは彼の力を利用し、そして最終的には彼を切り捨てた。直江は、どれほどその事実を受け入れようとしても、心の中でその裏切りが深く刺さっていた。
彼が関わっていた工場は、かつての彼にとっては家のような存在だった。工場のオーナーたちと築いた関係は、長い年月をかけて信頼と利益を積み重ねてきた。しかし、時が流れ、彼の影響力が徐々に弱まり、工場側は新たな経営戦略を採ることになった。その過程で、直江は切り捨てられ、次第に疎遠になっていった。
裏切りの痛みを抱えた直江は、やがてその怒りを暴力で表現しようと決意した。彼が持っている力、そしてその冷徹さは、もはや商談や取引では収まらないところまで来ていた。彼の怒りは理性を超えており、もはや一切の妥協は考えられなかった。
直江は、工場に対して反撃を計画し始めた。彼の計画は単純だったが、その影響力は計り知れないものだった。彼は食品工場と自動車工場に空襲を仕掛けることを決めた。それも、徹底的に破壊し尽くすために、何の遠慮もなく。
計画は着々と進んでいき、直江は自らの手で精密に仕掛けた爆薬と火薬を工場内に忍ばせていった。彼の冷徹さは、誰の感情も考慮しない。その手には、かつて支配してきた工場を破壊するための目的があった。彼が仕掛けた爆発は、工場内部で瞬時に大きな破壊を引き起こし、あっという間に火の海となった。
空襲は、夜の闇の中で行われた。爆発音とともに工場は次々に炎を上げ、恐ろしい勢いで崩れ落ちていった。直江はその光景を遠くから眺め、何も感じないように無表情で立ち尽くしていた。彼の心の中で、ただ一つの目的が果たされたことに満足していたが、その後の空虚さもまた感じ取っていた。彼は破壊の中に何かを得たような気がしたが、その実、すべてを失っていた。
工場側の関係者たちは、直江の仕掛けた爆破により、命を落とし、多くの人々がその影響を受けた。工場が復旧するまでには膨大な時間がかかるだろう。しかし、直江にとってそれはもうどうでもよかった。彼はその破壊をもって、かつての裏切りへの復讐を果たしたつもりだった。
だが、直江はその先に何が待っているのか、まだ理解していなかった。破壊された工場や、その裏で動いていた人物たちが彼に仕返しを試みることは間違いなかった。直江の復讐は、ただの始まりに過ぎなかった。
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