第3話

登録された、山田やまだいくに小さく息を吐き出した。



とりあえず、幼馴染に連絡して次のデート日を聞き出すか。



下手に山田郁に抵抗すると、どんな反乱を食うか分からない。


山田郁は女子達のリーダー的存在で、手駒として使える仲間を持っていた。



今日、二人のことを知った山田郁率いる派手な女子達は、幼馴染を目の敵にしている。元々仲が良かったわけではなかったけど、完全にヒビを入れる出来事になった。



「……面倒なことにならないと良いけど」



俺は、幼馴染に幸せになって貰いたい。


小さい時からずっと願っていることだ。



やっと、その幸せを掴めそうなのに……。


能天気でにこにこと笑って俺の名前を呼ぶ幼馴染の顔が頭の中に思い浮かんだ。



……上手く、立ち回らないとな。




幼馴染から連絡が返ってきた。今、彼氏と一緒にいるらしい。俺の質問以上の答えにテンションの高さが窺える。



“今一緒に決めたよ!次の土曜日に動物園に行って来るね!”



次のデートの約束は、明後日らしい。


幼馴染の高音でのんびりとした声が聞こえてきそうだ。自分の周りにハートを散らばして、あの男に抱き着いているのが想像出来る。


想像が完全に形になる前に、消し去った。



二人が仲良くしている場面なんて、考えたくもない。


十年以上の付き合いがある幼馴染に、初めての彼氏。その相手は…俺以外の男。



はあ、と今度は大きく息を吐き出して、携帯を仕舞った。

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