言霊使い-REX‐

 本日ロケットが打ち上がるようだ。しかし、『こちらのデータベース』には載っていない。言わば、『宇宙の海賊』だろう。

「お嬢、どうしますか? この海賊ロケットは」

「どうするも何もないだろう。『みかじめ料』を払っていないようじゃないか」

 私はタブレットを確認しつつ、何度もロケット打ち上げ会社の名前を確認するが、やはりない。

 『海賊ロケット』と名前は悪いが、一応ただの民間ロケットだ。だけど「こちら側への許可」を得ていないということは、成功させられないということだ。しかもロケットの名前が悪い。『ニセビーナス』だったらよかっただろうが。名付け親は誰だ。まぁ、そんなことはどうでもよい。

 とりあえず、このロケットは成功させられない。宇宙省への許可がなかったんだから。

「このロケットはこちらで処分する」

「わかりました」

 そういうと、お付きは部屋から私が引きこもっている部屋から出ていく。

 私は手を合わせて簡単に印を結び、ぼそっと一言発した。ーー『ロケット打ち上げ、失敗』。

 テレビをつけると、ちょうど発射準備をしていた。どうなるだろう? 私の『力』は本物なのだろうか。

 今日はロケット発射の試験だが、私のテストでもある。『言霊使い』としての力がどの程度あるのか。そして、一流の言霊使いとして認められるかどうか。

『3、2、1! 発射しました!』

 テレビから、中継しているアナウンサーの声が部屋に響く。これからだ。私の力が本物ならば。

『成功しました……いや、いくつか部品が落下しているようです! 火が見えます!』

 ロケットの打ち上げ失敗。これが私の言霊使いとしてのテストになるとはね。もっといいことに力を使いたいのだけども。でも、宇宙に無駄なデブリを出さないようにすることも、私たちの使命なのだからしょうがない。宇宙省の目的は、現在仕事がなくてニートになっている元陰陽師の血脈である私たちに、『科学では解決できない気の力を使った宇宙管制を手伝わせること』である。私は陰陽師としての勉強はしていないが、言霊は使えるということで、今回古い、私も知らなかった親戚からのテストを受けさせられたのだ。

 ロケット打ち上げ失敗の報を聞いてがっかりしている子どもたちの顔がテレビに映る。宇宙を守るために笑顔を犠牲にする。なんて因果な仕事だろうか。

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