男女比1:10の世界で幼馴染と結ばれるには、恋人適正試験で一番興奮するしかない!!

米太郎

前編

「初対面ですけれども……。私のこと、どう思いますか……?」


 目の前の美少女が僕のことを見つめてくる。少しタレ目な瞳からは、可愛らしい愛玩動物のような雰囲気を感じる。場合によっては抱きついて撫でまわしたいくらい可愛い。けど、我慢せねば……。


 ルールに則り、僕も彼女のことを見つめ返す。彼女から次の言葉が発せられる。



「身体の相性は合うと思うんです。どうですか……?」


 そう言われると、自然と目が身体の方を向いてしまう。ふわふわとした印象の女子。豊満な胸が目に入る。過度な露出は禁止されているのだが、着衣でも興奮させてくるのは卑怯だ……。


 興奮しないでいようと、慌てて視線を顔へと戻す。

 目の前のふわふわ女子は緊張しているのだろう。少し唇が震えているのが目に入る。彼女の方から迫ってきているのだが、その態度とは裏腹に恥ずかしそうにも見える。正直なところ、僕はこういうのに弱い……。



 既定の時間が経過したため、アナウンスが流れる。



 ――瞳孔の開き、5.6mm。『反応有り』と認めます。次のフェーズへと移行してください。




 アナウンスが聞こえると、ふわふわ美少女は嬉しそうに笑い、目をパチパチと瞬く。次の瞬間には、スっと妖艶な表情に変わったかと思うと、僕に向かって顔を近づけてくる。


「私、初めてなの……。キスするのって……」


 ゆっくり目を瞑ると、顔を傾けて僕の唇への距離を詰めてくる。初めてと言う割には、躊躇わずにすぐにゼロ距離になる。



 ――ちゅぱ。



 柔らかい感触と共に、雷に打たれたような衝撃が脳内を駆け巡る。

 ゼロ距離状態で、はむはむと僕の唇を味わうように上下の唇で僕の唇を挟んでくる。柔らかい唇が動く度に、電撃が僕の中を駆け巡る。潤った唇から、少しずつ唾液が流れ込んでくるのを感じる。


 ……ダメだ。どうにか自制心を保たないと。

 ……何か別の物を想像しないと。これは、腐りかけのヨーグルトの液とか。なんか分離してちゃうやつとか。なんで分離するのだろうとか。難しいことを考えないと。あれってなんで分離しちゃうんだろうな?



 ――心拍数70。通常時と比べた時の上昇値は誤差レベルと判断致します。残念ながら『適正無し』と判定します。試験を中止します。



 アナウンスが流れると、美少女はあからさまに不服そうな顔をした。


「チッ……。クソ童貞かよ! 私に興奮しないなんて、どっかおかしいんじゃない? 頭どうなってるんだよ。お前なんて誰にも適正無いんだよ! 一生童貞でいろよ! クソがっっっ!!!」



 先ほどまでの大人しそうな雰囲気が一変して、怒声を浴びせられた。これが『適正試験』の常だ。



 男女比1:10の世界。

 人類衰退を防ぐため、『恋人適性試験』を行っているのだ。聞こえはいいが、実際にやっているのは大賞女子に対して興奮することができるかという試験が行われている。


 女子たちから裏で呼ばれている試験名は『童貞試験』。

 試験を通過できないのは、男子側が悪いとして蔑まれる。僕は、どんな女子から蔑まれたとしても、どうしても結ばれたい相手がいるんだ。その子と結ばれるためには、他の女子には一切興奮しないようにする。



 ――次の試験を始めます。




 ◇



「ほ、保健室の先生……?」


「どうも、こんにちは。私もまだ適齢期だから、試験を受ける権利はあるんです。恥ずかしながら、ラストイヤーです」


 恋人適正試験が行われるのは、16歳から29歳までの

 女性が溢れる世界では、若い女子のみを対象として子作りをすることが推奨されている。そうしなければ、人類の繁栄は無いという考え方のようだ。


 ラストイヤー、つまり先生は29歳と言うことだ。


 僕も何回かお世話になったことがある先生……。

 過度な露出は禁止されているのだけれども、制服姿は特段規制が無い。

 緩めのニットに白衣を羽織る。試験に備えてということだろう、いつもよりも胸が強調されるように、小さめサイズを着ているように感じられる。そして、タイトなスカートがいつもよりも短い気がする……。


 目線を向けてしまうと『数値』に反応が出てしまいそうだが、気を抜くと視線がそちらへと向いてしまう。タイトなスカートから出てくる太ももは、生足だ。ストッキングの類を履いていないらしい。それであれば、スカートの中身が見えてしまった時には……。



「ふふ、見過ぎじゃないかな? そんなに興味あるのかな、大人の女性に……?」


「……い、いえ。そんなことはありません」


 正直、僕は年上に弱い……。どうにか、興奮を抑えなければ……。

 僕には、幼馴染の紗奈と結ばれたいんだ……。



 ――それでは、『恋愛試験』を始めます。見つめ合ってください。



 アナウンスが入ると、先生は色っぽい表情で僕のことを見つめてくる。大人の女性が、弱い部分をさらけ出すような。普段では見せない女の表情を見せてくる。



「佑介くんって、まだ経験無いでしょ? 先生が教えてあげるから安心してね……?」


「先生……。卑怯ですよ……。性的発言は禁止されてるんですよ……?」



 先生は小首をかしげる。


「保健室の先生としての発言をしたまでですよ? ラストイヤーなので、ダメだったら失格と同じこと。やらない後悔よりも、やる後悔だよ!」


 先生は少し姿勢を変えると、スカートを少し上へとあげる。柔らかい抱き枕を布団の中から取り出しているようなしぐさ。


「結ばれることになったら、いつでも使っていいんですよ……?」



 グラマラスな体系からは想像しづらい、ムチムチ感。年相応の程よく柔らかそうなフォルムが僕を誘惑してくる。慌てて視線を戻して、先生を注意する。


「反則は良く無いです。ルール通りに見つめ合ってください」


「ふふ。まだまだ子供なんだから……」



 ――瞳孔の開き、5.8mm。『反応有り』。次のフェーズへと移行してください。



「佑介くん身体は正直だね。ふふ、可愛い」

「……くっ!」



 先生は身体ごと僕に近づいてくる。

 次の試験は、キスによる判定。身体の相性を測るにはキスからということらしいのだ。この世界で、男である僕は拒否することは許されない。口を閉じて、先生を待ち構える。


「……まだまだ少年だね、緊張しすぎだぞ?」


 全てを見透かしてくるように、先生は僕に唇をつける。

 身体を駆け巡る衝撃からは逃げようもなく、僕は受け入れるしかない。


 どうにか心拍数は上げないようにしなければ、『反応有り』と判定されてしまう。僕は、紗奈とだけ結ばれたいんだ。絶対に反応しちゃダメだ……。


 反応の薄い僕に見かねたのか、先生は手を出してくる。僕の背中へと伸ばされる手。背筋を下から上へスーッとなぞる。そして僕を抱き寄せると、柔らかな胸をつけてくる。下半身も絡ませてこようとして、僕の股の間へ太ももを滑り込ませて……。



 ――ブー、ブー!!



 ブザー音が部屋に響いた。。


「ふぇっ? 何の音かな? けど、そんな音なんて気にせずん、続きしようよ……、佑介君……?」

「ん、んっ……! 先生!! ルール違反ですよ。警告音が鳴っているでしょ!」



 ――池田沙織さん。失格です。過度な接触は禁止されています。離れてください。


「ん……? けど、佑介君が反応しているじゃない? もう少しだけ……。これが私の最後なの……。男子と絡める最後の機会……」


 そう言いながら、僕の唇を貪るように求める先生。身体も絡ませて、僕の下半身を必要に求めてくる。世界が違かったら、先生と一夜を過ごしても良いと思うくらいには反応しているのだけれども。僕には心に決めた人がいるのだ。


「先生、可哀想ですけれども、適正判定はNGです。先生に合うのは僕じゃなかったということです……」

「佑介君……」


 扉の外からやってきた女性警備員に先生は羽交い絞めにされ連れて行かれてしまった。それが、この世界ということだ……。

 それでも、僕は紗奈と結ばれるんだ。



 扉が締められると、アナウンスが流れた。



 ――次は、佐山さん。

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男女比1:10の世界で幼馴染と結ばれるには、恋人適正試験で一番興奮するしかない!! 米太郎 @tahoshi

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