第12話
❀亡人と呼ばれるもの❀
……炎估、知らんぷりしてないで、さっさと出てきてなんとかしろ。おれには、なにがなんだかさっぱりだぜ!
これまでどおり、炎估が対処するだろうと考えたが、螢介の呼びかけに無反応を示す。……おい、炎估?
クククッ、ククッ!
なにかにおびえていた少年が、急に笑いだす。着物の胸ぐらを掻きむしり、螢介に向かって、ウロコをよこせという。やはり、目的は
「おまえ、まさか
亭主いわく、タマシイのない連中をそう呼ぶらしい。十翼や
躰つきは華奢なのに、ものすごい力で圧倒される螢介は、このままでは死んでしまうと思った。少年は、螢介のタマシイの
「……や、め……ろ!」
だめだ……、力が……ちがいすぎる。……おれには、抵抗できねぇ。……くそっ。……だれかいないのか? ネコ、亭主、えん……こ……
螢介が湯殿に倒れこむと、少年は腰のタオルを
……全裸で力つきている
……炎估、なんで返事をしねぇんだ。おれは、あやうく死にかけたぞ。
風呂場で襲われるのは、さすがに勘弁してほしい。ネコにも亭主にも素っ裸を見られたが、彼らは家族だから問題ないと割り切った──。
「おい、亭主、もっとわかりやすく説明してくれ。あの
だいぶ呼吸はおちついたので、枕もとに坐る亭主にたずねた。起きあがる気力はないため、顔だけ横向けた。ネコもいる。螢介の頭上で、ニャアと鳴いた。……サンキュー、ネコ。助かったぜ。
亭主はそこにいて、螢介の質問には答えず、「きみには働いてもらうと云ったはずだよ」と念をおす。
「そのつもりだけど……」
さくや亭に住みこんで働く螢介は、仕事のたびに危険にさらされるわが身を恨めしく思った。ウロコなんて人間には必要のない
〘つづく〙
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