第13話

たどり着いた公園は金曜の夜のせいなのか人影はない。


「座って」


航平に言われるがままにスチールベンチに座った私の膝の上には、すぐにオムライス弁当がそっと置かれる。


「繭香の好きなオムライス」


お弁当はまだほんのり温かい。隣の航平は焼肉弁当だ。


「なんで知ってるの?」


「繭香が言ったんじゃん、コンビニ弁当はオムライス一択だって。俺には全然理解できなくてさー、なんか記憶に残ってた」


そう私に返事をしながら航平は割り箸を割ると、大きな口で焼き肉弁当を食べ始める。


「冷めるよ。食べたら?」

「うん……」


正直、結婚報告だけでもお腹一杯なのにさっきのツーショットを見れば食欲なんて皆無だ。でも私の好きなものを覚えてくれていて、こうして一緒に居てくれる航平の優しさに気の置けない同期がいて良かったと心から思う。


「あ……おいしい」

「良かった。まぁ、いつもの本のお礼だな」


見れば航平はすでに食べ終わってゴミ箱に空のお弁当箱をポンと放りこんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る