第3章 第6話 カルVSスイレン
カルとスイレンはじっと睨み合い、静かな緊張感が二人の間に広がる。
スイレンの美少女っぽい顔立ちが、普通ならば優しい印象を与えるはずなのに、まるで無機質な彫刻のように凛とした印象を与える。
カルはその視線を外さずに構えを取った。
スイレンがにやりと笑うと、その目には確かな挑戦の光が宿っていた。
「カル。あれからも成長し続けてたんだね。だけどそれはキミだけじゃないよ」と、スイレンはゆっくりと語りかける。
「スイレンさん、あなたは一体何者なんですか?僕の知り合いかなんかですか?」カルは問いかけ、冷静を装う。しかし、その心は警戒でいっぱいだ。
「いずれわかるかもね」と、スイレンは不敵に笑った。
その瞬間、カルは動き出した。
両手を天に掲げると、炎と風の魔力が一気に込められた拳を放つ。
火と風が交錯するその技は、まさに新たに習得した必殺の一撃だ。
「Blaze Gale Fist(ブレ゜エーイズ ゲーイウ フィースト)!」
技名を叫びながら、炎と風が渦巻く拳がスイレンに迫る。
しかし、スイレンは一歩も動かず、冷徹な表情でその攻撃を待ち構えていた。
そして、スイレンの口元が再び動く。その動きは、まるで呪文を紡ぐようだった。
「Vento da Tempestade(ヴィェーントゥ ダ テンピェシュタードェ)!」
つまり訳すると「嵐の風!」
なんともテキトーな技名すぎるが、それでもスイレンの言葉が空気を切り裂き、風の魔力が彼の周囲を覆う。
瞬間的に風が巻き起こり、カルの「Blaze Gale Fist」はその勢いに飲まれて、空中で消えていった。
スイレンは軽く身をかわし、反撃の準備を整えた。
カルは驚きながらも素早く次の手を考えたが、スイレンの動きはそれを先読みするかのように速い。
スイレンは再びポルトガル語で詠唱を始め、その声は確かな力を帯びていた。今度は長めの詠唱だ。
詠唱は長ければ長いほど魔力の出力が上がる。ただしスイレンの様にポルトガル語の発音が上手く出来れば、だが。
まるで呪いのような響きを持つ言葉が、カルの身体を締め付けていく。
「Água Sombria, Destruição das Águas(アーグワ ソオンブリヤ、ドゥシュトゥルーイサオーン ダザーグワシュ)!」
(暗黒の水、破滅の波!)
スイレンの声が響くと、カルの足元から突如として黒い水流が湧き上がり、周囲を囲んだ。
その水流はただの水ではなく、暗黒の力を宿した魔力そのもので、カルの動きを封じ込めようとしていた。
カルはその圧力に耐え、足を踏みしめて反撃しようとするが、スイレンはそれを許さない。
彼の目はカルの動きにピタリと合わせ、どんな動きも見逃すことなく観察していた。
「君は本当に強くなった。でも、まだまだだね、カル。大丈夫。今回の水魔法はトリチウムは抜きにしてるから死にはしないよ。」
スイレンは冷ややかな目でカルを見つめ、悠然と攻撃の準備を整えていった。
「えっ?トリチウム??三重水素だよね??それを水魔法に組み込んでんの??危なすぎるやろ」とカルはとまどった。
おそらく普段のスイレンは「相手を殺す」事を前提に戦っているのであろう事がその発言から察せられた。
だがカルは深く息を吸い込み、再び火と風を込めた技を放とうとする。
しかし、スイレンの計算された戦術に翻弄され続け、カルはその先に見えない恐ろしさを感じ取っていた。
「くっ…!」
カルは心の中で呟き、スイレンの魔法の隙間を突くべく動き出す。しかしスイレンの次なる一撃が、再び空間を揺るがす勢いで迫ってくる――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます