第3話 吾子

 ふっくらとした両腕をこれでもかと伸ばし、むっちりした両足をぐっと折り曲げる我が子の寝姿を見ているだけで、私の眼尻がすとんと垂れ下がる。

 時折その動きと付随して、ぷっと屁がこかれた際の愛くるしさたるや。


 すやすやと聴こえる寝息も、小さくて細い指も、寝ている筈なのに薄すらと微笑む顔、其処に居るだけで無条件に愛しい。

 長い期間を私の胎内で過ごして産まれ出たれば、肉付きの良くなった其の身体を一生懸命に動かして、生きている。

 美味しく育て、栄養を蓄えて、周囲の愛情を一身に受け止めて、清らかに健やかに育てよ。

 私が愛情を持って君を食べるその日まで。



お仕舞い。

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